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薄暗く、薄汚れた壁。天井から滴る水を追いかけて、ネズミたちが走り回っている――踏まないよう、足元に気を配らねばならなかった。我の手首は、未だ手錠に囚われたままだった。我はそこに座り、身動きひとつせず、目の前には鉄格子があった。


我が……保安官の助手に、いささか正直すぎる質問を投げかけた後、他の見張りたちがやってきて、我を黒い袋の中に押し込んだ。袋が外された時には、既に牢獄の中にいた。奴らが告げたのは、我の処刑が近いということだけだった。あの二人がどうなったのかは、我には分からない。あまりにも急なことだった。


何たる屈辱か!我は牢の中で朽ち果てて死ぬために、世界を渡ってきたわけではない!何かが間違っているに違いない!


ああ、いや、実に筋が通っているではないか……少し考えてみろ、森丈二郎よ。神が貴様に、何もかもを無償で与えるはずがなかろう?それでは何の面白みもないではないか。


もしハーレムと空の玉座が最初から我を待っていたら、すべてがあまりに退屈だ!それでは我すら楽しめまい。神とは、実力主義者なのだ。


「我はハーレムを与えられるのではない。我がハーレムを築き上げるのだ!」


そうだ、これが我のモットーとなろう。我が墓石に刻まれる言葉になるはずだ……いや、待て、我は不老不死になる予定なのだから――


「ハーレムだと?お前、貴族か何かか?」


しゃがれた低い声が、我の言葉を遮った。恐ろしいほど近くから。


「だ、誰だ!?」


我は辺りを見回し、その未知なる声の正体を探した。


そして、それは来た。天井から。


天井には、濃い紫色のスライムが張り付いていた――二つの目、ゼラチン状の体、そして床にぽたぽたと自らの雫を垂らしている。


待て!ということは、ネズミどもが飲んでいた水はこいつだったのか。ああ、なんとも興味深い――


今はそんな場合ではない!


「一体貴様は何者だ!?」


我は叫んだ。恐れることなく、一歩も引くことなく。


スライムは二度、瞬きをした。


「あなたが新しい同房の方ですか?たしか73番でしたね。はじめまして、私はジェームズと申します」


その声は、驚くほど上品だった。だが、どこか諦めたような響きも感じられた。


「お前は……魔物か?」


「いいえ!私はリッチランドのジェームズ氏です!我が主の背を魔物からお守りすることに、人生の半分を捧げてまいりました!私は決して、彼らの仲間などではございません!」


「だが……お前はどろどろの塊ではないか。スライムだろう」


その生き物の目が、悲しげに歪んだ。


「存じております……裏切りとは、最も恐ろしい罪です」


こ、こいつは友好的なのか?そもそも、裏切られたと主張するスライムが、なぜ牢屋になどいるのだ?一体なぜ――


おお、待て、このお約束の展開なら、我は見たことがあるぞ。


「お前は元々人間で、スライムに変えられたのではないか?」


「な、なぜそれを知っているのですか!?」


本人がかなり分かりやすく匂わせていただけなのだが……まあいい、あまり頭が良くないのかもしれん。


これは好機だ!


「我はただの人間などではない、我が友よ。それを遥かに超えた存在なのだ」


興味と期待に満ちた様子で、スライムは壁を素早く滑り降り、我の足元まで辿り着いた。通った跡には、ねばついた粘液の筋が残された。


彼は我の左側でぴたりと止まり、目を見つめてきた。


「では改まって。どうか、自己紹介をお願いいたします」


「無論だ」


我は胸に手を当て、声を整えた。


「我は森丈二郎。人間と天使、その双方の遥か上に君臨する超越的存在――生まれながらにして――」


「では、大魔王というわけですか!?」


「違う!最後まで言わせろ!」


くっ、またか……


「違う。我は――」


「潔白の証拠はおありですか?」


「ある。我が悪魔であるならば、これほど簡単に捕らえられるはずがなかろう?」


「下級の悪魔かもしれません。魔物に許しなどありません!」


スライムのジェームズが我の顔目掛けて飛びかかり、そのぬめる体で窒息させようとしてきた。


だが我は彼を掴み、投げ飛ばした。


「では、貴様が悪魔ではないという証拠はあるのか!?」


彼は壁に激突し、跳ね返って床に落ちた。


「ああ、本当にこの体は嫌になります……」


一体どうすれば、この男に我の真の偉大さを納得させられるのだ……何か手を考えねば。


「いいか、我らのうちどちらかが悪魔だと言うなら、それはお前の方だ」


「なぜそう仰るのですか!?」


「お前はスライムだからだ。それも黒ずんだな」


おそらく、呪われているとかそういうことなのだろう。


「ああ……」


彼の目に、涙が浮かんでいるのが見えた気がした。


「だが、我はお前を疑わん。ジェームズ・リックランド氏が悪魔だなどと、我は信じないぞ!」


リックランドだったか?それともリッチランドか?くそ、まあどうでもいい。


だが、スライムの姓を思い出そうとするのをやめ、彼へと目を向けた時――我は恐ろしいものを目にした。泣いているスライムだ。


い、いや「恐ろしい」というのは、あくまでその見た目の話だ。スライムというのは、実物だとかなり気持ち悪いものなのだ。泣いているところを見ると、ぞっとする。


「あ、あなたは……私を、本当に信じてくださるのですか?」


「ああ。たとえ世界中が、お前の知る誰もが敵に回ったとしても、我はお前を信じる、ジェームズよ。お前はただの人間なのだから!」


我は99パーセント確信していた。スライムになって以来、ジェームズはずっと孤独に苦しんできたのだろう――誰もが彼を悪魔だと思い込み、元は人間だったなど、誰一人信じてくれなかったのだ。


実にありふれたお約束の展開だ。だが、我はライトノベルを読みすぎているがゆえに、これを知らぬはずがない!神は、乗り越えられぬ試練など与えぬのだから!


「ありがとうございます!!!」


ジェームズは身をかがめ、そのスライムの頭を地面に叩きつけた。


「私を信じてくださる、唯一の方でいてくださって……」


うむ、我の読み通りだ。


我は立ち上がった。我の大きな影が、彼の小さな体をすっぽりと覆う。


「立て……いや、スライムにとっての『立つ』とは何なのか知らんが」


「わ、私に何をしろと仰るのですか、ご主人様?」


「我をこの牢獄から脱獄させろ!」

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