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辺境伯家の最強令息、王都の学院で王女殿下に全力で懐かれる  作者: あるふぁ
第一章:転生、二つの人生の融合

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7話 基準値の把握と、不器用な兄妹の距離感

♢基準値の把握と、不器用な兄妹の距離感


 案内された魔法の訓練場は、上級貴族の誇る圧倒的なスケールを見せつけていた。


 視界の先まで続く広大な土地には、実戦を想定した人型の的だけでなく、獰猛な魔物や魔獣を模した巨大な石造りの的がいくつも整然と並べられている。さらに、周囲を取り囲む外壁からは、強力な魔法の衝撃を完全に吸収するための魔法障壁の結界が張られているのが、ユウキの鋭敏な魔力感知にビリビリと伝わってきた。


 訓練場では、すでに何人かの抱えの魔術師や若手兵士たちが、熱心に呪文を唱えていた。

 ドゴッ、バチチッ、と重苦しい音が響く中、土魔法の弾丸や、奔る紫の雷、激しく燃える炎、そして鋭い水槍など、基本属性の魔法が次々と的に叩き込まれていく。飛び散る火花と土煙が、訓練場特有の焦げ臭い匂いを漂わせていた。


(……なるほど。あれがこの世界の一線級、つまり『強者の基準』の威力なんだな)


 彼らのステータスを鑑定しながらその威力を観察したユウキは、改めて己の異常性を思い知らされていた。

 彼らが全力で放った炎の塊が微弱な結界を張られた的に小さな傷を作る程度なのに対し、自分が先ほど森で放ったのは、地形そのものを消し飛ばして完全な焦土に変える熱線の濁流。文字通り、異次元の破壊力だった。


(危ねぇ……。もしあの感覚のまま学院の授業で魔法をぶっ放してたら、学校どころか王都の一角が消し飛んでたぞ……)


 想像するだけで背筋が凍りつき、ユウキは思わずその場に立ち尽くして顔色を悪くした。額に滲む冷や汗が、夕暮れの風に冷やされていく。


 そんなユウキの異変に、すぐ隣にいたミオルがいち早く気づいた。

 彼女は心配そうな表情を浮かべると、ユウキの服の袖を小さな手でぎゅっと掴み、潤んだ瞳で下から覗き込んできた。


「……お兄様? 大丈夫ですの? 顔色が悪いですわ」


 急に声をかけられ、ユウキは現実に引き戻される。妹の小さな手のぬくもりが、袖を通して伝わってきた。


「ん? なんだよ? 心配してくれてたりするのか?」


「は? そ、そんなこと……あるわけ……」


 ミオルは一瞬、いつものように声を荒らげて反論しようとした。だが、すぐに視線を泳がせると、みるみるうちに頬を赤く染め、消え入りそうな声で言葉を紡いだ。


「……んぅ……と、当然じゃありませんか。わたくしの……お兄様ですのよ」


 俯きながら、恥ずかしそうに、だけど真っ直ぐに自分を身内として気遣ってくれる言葉。いつもなら冷たく突き放されていたはずのその響きが、今はどこまでも優しく、暖かく訓練場の片隅に溶けていった。


 前世では味わったことのない家族の温かさに、ユウキの胸の奥がじんわりと満たされていく。少し嬉しくなった彼は、からかうような照れ隠しも込めて、ミオルの頭を大きな手でガシガシと大雑把に撫で回した。


「わっ、ちょっと、お兄様!?」


「いや、ミオルの髪の毛は、めちゃくちゃ柔らかくて良い匂いがするんだなと思ってさ」


 実際に触れた淡い金髪は、シルクのようになめらかで柔らかく、動くたびに果実のような甘く気品のある香りがふわりと鼻腔をくすぐる。

 あまりにもストレートな感想を不意打ちで叩き込まれた美少女は、一瞬で顔を耳の裏まで真っ赤に染め上げた。


「……ひゃっ、お兄様のばか! 変態ですわっ! 心配して損しましたわっ!!」


 ミオルは怒ったように声を上げ、ぷいっとそっぽを向いてしまう。


 しかし、その頑なな態度とは裏腹に、彼女の小さな手はユウキの服の裾をぎゅっと握りしめたままで、どうしても離そうとはしなかった。指先にぐっと力が込められ、衣服に細かな皺が寄る。


 ツンツンしながらも、絶対に離れようとしない不器用な妹。


 そんなミオルの愛らしい様子に、ユウキはさっきまでの冷や汗もすっかり吹き飛び、今度こそ心からの穏やかな笑みを浮かべるのだった。夕暮れの心地よい風が、二人の頭上を優しく吹き抜けていった。



♢望むところな妹の頬と、予想外のぷにぷにタイム


 ぷいっとそっぽを向くミオルの横顔は、完全に桃色に染まっていた。おまけに、拗ねたようにぷっくりと膨らんだその頬は、マシュマロのようになんとも柔らかそうな弾力を醸し出している。夕暮れの淡い光に照らされた肌は、まるで上質な白磁に紅を薄く掃いたかのようだ。


 ──映画や雑誌の向こう側でしか拝めないような規格外の美少女。


 ついさっき目覚めたばかりの時は、あまりの口の悪さに近寄りたくもないなんて思っていた。しかし、そんな彼女が今は自分のすぐ隣に並び、本気で体調を心配してくれ、不器用に服の裾を握りしめている。大雑把に頭を撫で回されても、文句を言うだけで本気で嫌がる様子はまるでない。


 あまりの愛らしさに、ユウキの悪戯心がつい頭をもたげた。

 人差し指を伸ばし、その膨らんだ白い頬を不意打ちでツン、と突っつく。指先から伝わる吸い付くような肌の柔らかさと、予想以上のぷにぷにとした弾力。


「はわわわぁ……っ。ひゃっ、お兄様!? な、なんですのぉ……もぉ!」


 突飛な刺激に弾かれたように声を上げ、ミオルは驚いた様子でタタッと後ずさりした。だが、すぐに思い直したようにトコトコと足早に近づいてくると、今度は服の裾ではなく、ユウキの逞しい腕を両手でぎゅっと掴み込んできた。小動物が必死に木にしがみつくかのような必死さで、その細い腕に思いきり力を込めている。

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