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辺境伯家の最強令息、王都の学院で王女殿下に全力で懐かれる  作者: あるふぁ
第7章:激動の婚約と、辺境伯家の「ざまぁ」大反撃

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39話 運命のスピード婚約と、絡み合う二つの光

♢運命のスピード婚約と、絡み合う二つの光


 第一王女セルシア・バルハイトの暗殺未遂事件の解決、そして隣接する鉱山領地における驚異的な内政無双。

 ヴァルテンブルク辺境伯家の長男ユウキ・フォン・ヴァルテンブルクが成し遂げた立て続けの偉業は、王宮のみならず、バルハイト王国全土の勢力図を根底から揺るがしていた。


「――これ以上の適任は、我が王国には存在せぬ」


 白亜の王宮、その厳粛なる謁見の間にて、国王は重々しく告げた。

 かつて「無能の出がらし」と囁かれていた少年は、いまや王国を救った救世主であり、比類なき知勇を兼ね備えた大英雄。何より、当の第一王女セルシアが「ユウキ様以外との婚姻など、万死に値しますわ」と、国を揺るがすほどの猛アタックを王宮内で展開していたのだ。


 国王より発表された、ユウキとセルシア王女の正式な婚約。

 それは瞬く間に王都の貴族学院へと伝わり、凄まじい嵐を巻き起こした。


「おい、マジかよ……! あの辺境伯家のユウキが、本当に王女殿下のフィアンセになったって……!」


「う、嘘だろ……!? 高嶺の花だったセルシア殿下が、あんな田舎の野蛮人に……っ!」


 学院の廊下では、中央貴族の男子生徒たちが嫉妬と絶望のあまり頭を抱えて狂いかけていた。しかし、かつてのように面と向かってユウキを嘲笑する者は誰一人としていない。王女襲撃での暗殺者瞬殺、そして演習場での「手加減デコピンによるライネルの公式処刑」を目の当たりにした彼らにとって、ユウキはすでに「絶対に逆らってはならない規格外のバケモノ」だった。

 ユウキが廊下を歩けば、中央の生ぬるい騎士ごっこに浸っていた貴族たちが、蜘蛛の子を散らすように「モーセの海割り」のごとく道を空け、直立不動で震え上がる。


「はぁ……。だから目立ちたくなかったんだよ。視線が痛すぎる……」


 当のユウキは、いつもと変わらぬ気怠げな様子でため息をついていた。

 前世は普通の高校生だ。国中から注目されるなど拷問以外の何物でもない。のんびり隠居生活を送るという計画が、音を立てて崩れ去っていくのを感じていた。


「ユウキ様――っ!」


 その時、廊下の向こうから、サラサラの艶やかな金髪をなびかせ、サファイアの瞳を爛々と輝かせた美少女が可憐に駆け寄ってきた。第一王女セルシアその人である。

 婚約が公式化してからの彼女の「正妻ムーブ」は、もはや周囲の目を一切気にしない暴走状態にあった。


「ユウキ様、本日の講義もお疲れ様です! ああ、お顔の色が少し優れないようですが……まさか、私に会えなくて寂しかったのですか? よろしければ、この放課後は私の特製お茶会で、私の手から直接クッキーを召し上がってくださいな♪」


「いや、セルシア、ここ学院の廊下だから。周囲の男子たちの目が血走ってるから……」


 蕩けるような笑顔でユウキの腕にしがみつき、公認のフィアンセとして全力で尽くしまくる王女。かつての凛とした気高さはどこへやら、独占欲を隠そうともしない彼女の甘やかしぶりに、ユウキは嬉しい反面、顔を引きつらせるしかない。


 ふと、遠巻きにユウキを熱っぽく見つめていた他の中央貴族の令嬢たちが一歩前に出ようとした瞬間、セルシアのサファイアの瞳から、王族としての圧倒的な威厳――いや、絶対零度のオーラが笑顔のまま放たれた。令嬢たちは悲鳴を上げるようにして一瞬で退散していく。


「あ、あはは……」


 苦笑いするユウキだったが、この公式婚約の裏には、もう一つの重要な「着地点」が存在していた。


 王宮からの発表があったその夜、王都の別邸の自室で大ショックを受け、「本当にお兄様が遠くへ行ってしまう……」と絶望の淵で涙を流していた義妹、ミオル。

 しかし、不器用ながらも筋の通ったユウキは、これまでの彼女の健気な想いを決して切り捨てなかった。


『ミオル。お前を置いていくわけないだろ。……俺の側から離れるな』


 ヴァルテンブルク家と王家との度重なる政治的調整、そして何よりユウキ自身の強い意思により、セルシアとの正室婚約と同時に、「ミオルを第二夫人(側室)として迎える」という婚約も内定していたのだ。


『ユウキ様を公私ともに支える戦友として、ミオル、貴方を認めますわ』


『……セルシア様。お兄様を一番近くでお世話するのは、昔からの私の役目です。負けませんわ』


 最初はバチバチだった二人のユウキを巡る女の子の戦い。しかし今では、ユウキという最愛の存在を共有する者同士、奇妙な連帯感と絆が芽生え、別邸の空気はどこか甘く落ち着いたものへと変わっていた。

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