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辺境伯家の最強令息、王都の学院で王女殿下に全力で懐かれる  作者: あるふぁ
第5章:近隣の領地問題と、若獅子の初統治

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30話 若き領主の容赦なき監査

♢若き領主の容赦なき監査


 ユウキは、まるでゴミを見るかのような冷めた目で、脂汗を浮かべるバルトロを見つめた。

 彼がその薄い双眸をわずかに細めて視線を集中させた瞬間、脳内にチートスキル『ステータス鑑定』の冷徹なシステムログが静かに走り抜ける。


『対象:バルトロ(汚職文官)』

『固有状態:【嘘:100%】【横領金額:金貨5,000枚】【裏帳簿の隠し場所:自宅地下室の樽の裏】』


(一瞬で答え合わせが終わっちまったよ……)


 前世は現代日本の高校生だったユウキにとって、この世界のあまりにも非効率的な帳簿管理や流通システムは、突っ込みどころの塊でしかなかった。その上、すべての隠し事を暴く鑑定スキルまで持っているのだ。不正を見抜くなど、赤子の手をひねるよりも遥かに容易い。


「バルトロ。この第三採掘区の搬出量、昨年の同時期に比べて『八割減』になっている。だが、お前たちが提出した炭鉱夫の労働時間と賃金の支払い記録は、なぜか『一割増』だ。……おかしいと思わないか? 人が増えて、働く時間も増えて、掘り出された鉱石が八分の一になる。この領地の鉱山には、掘った先から鉱石を食い荒らす、目に見えない大食いの魔物でも住み着いているのか?」


「なっ……!? そ、それは、その、地層が急に硬くなり、作業が難航したためで……!」


 バルトロの肥満体がビクリと跳ね、言い訳を紡ぐ声が小さく震える。


「嘘つくな。昨日、俺が直接鉱山に行って地質を見てきた。むしろ掘りやすくなってるぞ。あと、お前の胸ポケットに入っているその『金の懐中時計』。この領地でしか採掘されない、特上の純度を持つ魔鉱石が埋め込まれてるな。……お前ら文官の給料で買える代物じゃないだろ」


「ひっ、な、なぜそれを……!?」


 血の気が引き、顔面を土気色に変えていくバルトロを視線だけで完全に無視し、ユウキは手元の羊皮紙をサッと裏返し、手慣れた動作で羽ペンを走らせた。


 前世の知識である『サプライチェーン・マネジメント(効率的な管理・流通システム)』と『複式簿記』を組み合わせた、超合理的な新体制のインフラ計画図。それをわずか数分という驚異的な速度で書き上げて、パチリとインクを乾かし、机に叩きつける。


「明日からこの方式で鉱山を完全管理する。作業員のシフトは二交代制、流通ルートは不透明な中間業者を全て排除して、我がヴァルテンブルク辺境伯領の直営にする。これで無駄なコストは九割削減、採掘効率は三倍だ。……あ、それから」


 ユウキは、底冷えするような笑みを静かに浮かべた。


「お前たちがこれまで私腹を肥やすために横領した金貨五千枚、および中央の大物公爵に横流しした全ルートの確たる証拠は、今から我が辺境伯軍の私兵を使って、お前たちの自宅地下室の樽の裏から強引に差し押さえさせてもらう。……異論はないな?」


「ぎゃ、あああああ……っ!!」


 バルトロたちは完全に腰を抜かし、ガタガタと震えながら、容赦なく執務室へ入ってきた屈強な衛兵たちによって引きずられていった。

 利権を貪るどころか、隠していた不正の全容を瞬時に暴かれ、背後にいる中央の汚職派閥が被る経済的ダメージは計り知れない。何もかもが完璧すぎる、理詰めの経済的な制裁の成立だった。


「はぁ……。これでやっと静かにサボれるな。寝よう」


 厄介払いを終えたユウキが、革張りの椅子の背もたれに深く体重を預け、眠るために目を閉じようとした、その時だった。


 バンッ!!!


 静寂の戻ったはずの執務室の重厚な扉が、凄まじい勢いで乱暴に跳ね開けられた。


「――お見事ですわ、ユウキ様!!!」


「うおっ!?」


 まばゆいばかりの美しい淡い金髪を華やかになびかせ、サファイアの瞳をこれ以上ないほど興奮に輝かせて飛び込んできたのは、第一王女セルシア・バルハイトだった。

 呆気にとられるユウキの視線の先、開け放たれた扉の後ろには、彼女が王宮から直々に引き連れてきたと思われる、高級な法衣を纏った真面目そうな文官たちの姿が、廊下の奥まで百人近くずらりと控えていた。

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