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辺境伯家の最強令息、王都の学院で王女殿下に全力で懐かれる  作者: あるふぁ
第3章:お忍びで街中散策で拾い物をする

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15話 堅牢なる城塞都市とお忍びの散策の決意

♢堅牢なる城塞都市とお忍びの散策の決意


 王都での学院生活の合間、ユウキは王都の防壁を視察する名目で、屋敷を抜け出す計画を立てていた。


 この王都は、魔物の襲撃や近隣の王国からの侵略を完全に防ぐため、見上げるほどの巨大な三重の城壁に覆われている。強固な石積みの防壁が幾重にも連なるその威容は、まさに鉄壁の要塞そのものだった。日の光を浴びて鈍く鈍色に輝く巨大な壁。前世の現代日本ではお目にかかれないその雄大な建築構造に、ユウキは純粋な興味を抱いていた。


 自分の目で、この世界の街中と防衛機構を見ておきたい。

 そんな前向きな理由の裏には、もうひとつ、彼にとって極めて切実な事情が存在していた。


「お兄様、お着替えの準備が整いましたわ」


「お兄様? どちらですの? お兄様ぁ!」


「お兄様、お茶の準備が整いましたわ。ご一緒に……」


 ここ最近のミオルの猛烈な世話焼きぶりは、留まるところを知らなかった。一時も離れたくないと言わんばかりの勢いで、日に日に屋敷での距離を詰めてくる義妹。その健気で、しかしあまりにも熱烈なお節介から、ぶっきらぼうなユウキとしてはほんの少しだけ逃げ出したいというのが本音だった。


 このままではのんびり過ごすどころか、屋敷の中でも息が詰まってしまう。

 ユウキは固有のスキルである気配遮断を軽く発動させると、自身の存在感を周囲の空気へと完全に同化させた。屋敷に配備された辺境伯家の精鋭たる、並の者では決して巻けないはずの最小限の護衛すら、一歩も動かさぬまま完全に撒いてみせる。


 あらかじめ用意していた一般の冒険者風の地味な衣服に身を包み、ユウキは一人、活気に満ちた賑やかな街へと足を踏み出すのだった。石畳を踏み締める足取りは、どこか軽やかだった。



♢色あせた魔石と、路地裏の掘り出し物


 屋敷の喧騒を離れた広場の先には、中世ヨーロッパを思わせる石畳と木組みの街並みがどこまでも広がっていた。行き交う人々で満ちた通りには溢れんばかりの活気があり、立ち並ぶ様々な屋台から香ばしく美味そうな匂いが漂ってくる。


 こんがりと焼けた肉串、黄金色の揚げ物、素朴な甘いデザート。

 ユウキは鼻腔をくすぐる匂いに誘われるまま、前世でも見慣れていた焼き鳥感覚の肉串を数本買い求め、そのまま食べ歩きをすることにした。炭火特有のスモークの風味に、絶妙な塩加減。噛み締めるたびに溢れ出すジューシーな肉汁の旨味に、ユウキは我を忘れて夢中で頬張った。ジュウ、と音を立てる肉を口に運ぶたび、お忍びの気楽さが全身に染み渡っていく。


 腹を満たして再び歩き出すと、ふと重厚な鋼の匂いが漂う武器の看板が目に留まり、引き寄せられるように店内に立ち寄った。


 ずらりと陳列された見事な新品の武具の数々。だが、ユウキの視線が向かったのはそれらではない。店内の片隅に置かれた古びた樽の中に、中古の剣が無造作に突っ込まれ、格安の値段で投げ売りされている一角だった。


 おそらく、駆け出しの冒険者や金のない新米兵士たちが買い求める代物なのだろう。

 命を預ける武器に中古を選ぶなど本来はあり得ないと思いながらも、ユウキはその中の一振りに、何故だか強く目を奪われた。全体に錆が浮き、ひどく古びた剣。だが、その柄には完全に輝きを失って白く色あせた、一粒の魔石が埋め込まれている。


 ちょうど今は丸腰だったこともあり、懐を痛めない程度の安価でその剣を購入することにした。ジャラリと数枚の硬貨を支払い、店主に引き渡してもらう。


 店を出て、薄暗い路地裏に入ってからその剣を改めて握り締めてみる。不思議なほどにぴたりと掌に馴染み、驚くほど軽い。

 何気なく、己の内に眠る膨大な魔力をほんのわずかに流し込んでみる。その刹那、どんよりと濁っていた魔石が目の眩むような眩い蒼光を放ち、失われていた魔力を瞬時に宿して、錆を削ぎ落とした新品同様の鋭い刀身へと生まれ変わった。キィンと張り詰めた澄んだ駆動音が、静かな路地に響き渡る。


(あぁ……なんだか、アニメやゲームでお決まりの展開だな……伝説の剣ってところか?)


 苦笑まじりに呟きながら、ユウキは入れ替わる前の元のユウキが、辺境の地で泥に塗れながら厳しく剣術を叩き込まれていた記憶を思い出す。

 ここまでのチート武器と化せば、男として試し切りをしたくなってくるのは当然の心理だった。肌を刺すような刀身の冷気が、その衝動を心地よく煽ってくる。だが、ここは王都の城壁の中、大勢の人間が行き交う街のど真ん中だ。こんな場所で抜剣などできるわけがない。


 ユウキははやる気持ちをどうにか抑え込み、新調した相棒を腰に下げて、再び静かに散策を続けるのだった。

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