第7話 朝のランニングの目的地がバグっている件について
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「――ふぅ、いい汗かいた。やっぱり朝の運動は最高だな!」
光の速さ(並み)で爆走すること、およそ十分。
心地よい風を浴びながら俺が足を止めると、そこはなぜか、紫色の禍々しい雲が渦巻く不気味な荒野だった。
目の前には、ファンタジー映画の悪役が100人にアンケートをとったらそのうちの100人が住んでいそうな、トゲトゲしくて黒光りする巨大なお城がそびえ立っている。
「あれ? 確かちょっと地球の裏側のコンビニに行くノリで走ってたはずなんだけど……ここ、どこだ? 看板とかないのかな」
俺が首を傾げていると、お城の巨大な正門から、異様な殺気を放つ武装集団がワラワラと這い出てきた。
全身から黒いオーラを放つ魔族の騎士たち、そして背中にコウモリの羽を生やした怪物の大軍だ。
その中心にいる、ひときわ豪華な鎧を着たゴツい魔王軍の幹部らしき男が、俺を睨みつけて叫ぶ。
「何奴だァアア大罪人! 我らが魔王城の真っ正面に、ソニックブームで大穴を開けながら突っ込んでくるとは……! 人類側め、ついに最終兵器を投入してきたか!」
「え? 魔王城? ここ、魔王軍の本拠地なの? コンビニじゃないんだ」
どうやら朝のランニングの距離設定を少し間違えて、敵の本陣のド真ん中にゴールインしてしまったらしい。
というか、俺は国家の指名手配犯であって、人類の味方ではないのだが、魔王軍は完全に戦闘モードだ。
「全軍突撃ィイイ! そのゴリラ面をした破壊神を八つ裂きにせよ!」
「ウオオオオオ!」
何万という魔王軍の軍勢が、地響きを立てて俺に襲いかかってくる。
空からは無数の闇の魔法や呪いの矢が、雨あられと降り注いできた。
「うわ、危なっ! ってか、人の顔を見てゴリラ面って言うなよ! あれは手配書の作画が崩壊してるだけだっつの!」
理不尽な悪口にムシャクシャした俺は、とりあえず降り注ぐ魔法の雨をどうにかすることにした。
イメージするのは、『目の前でめちゃくちゃでかい団扇を仰いで、邪魔なゴミを全部向こうに吹き飛ばすノリ』だ。
俺は両手を大きく広げると、目の前の空間を掴むようにして、前方に向けて思いっきり「ブンッ!!」と横振りに一閃した。
――ゴォバァァァァァァァァアアアアアン!!!!
「ぎゃあああああああ!?」
「ぬおおおおおおお!?」
ただの手振りの風圧である。
しかし、俺の超絶脳筋パワーと「全部吹き飛べ」という創造力が合わさった結果、発生したのは超巨大な竜巻(※世界の常識で言えば地形を変える禁忌の嵐魔法)。
降り注ぐ闇魔法どころか、押し寄せていた魔王軍の数万の兵士たちが、まるで秋の落ち葉のようにまとめて遥か彼方の空へと巻き上げられ、星になって消えていった。
「あ、また加減間違えた」
一瞬で静まり返る荒野。
魔王城の正面玄関は、俺の起こした風圧で綺麗に更地になっていた。
幹部らしきゴツい魔王軍の男だけが、腰を抜かしてガタガタ震えながら俺を見上げている。
「ば、化け物め……! 聖剣も使わずに、我が軍勢をワンパンで……! 覚えていろよォオオ!」と、テンプレ通りのセリフを残してお城の中に逃げ帰っていった。
「さぁ…ここからがショータイムだ。とその前に、空を自由に飛びたいな~」
「飛行魔法…二段跳躍…よいっしょっと!!」
「なんか空飛べたー ぼくって案外天才?」
着地とともにゴロゴロゴロゴロと地鳴りが鳴った。
一方その頃――。
魔王軍の別働隊と命がけの泥沼試合を繰り広げていたイケメン勇者は、突然、敵の通信兵が「ま、魔王城の本陣が、例の手配犯の朝のランニングに巻き込まれて壊滅しただと!?」と大パニックで撤退していくのを目撃していた。
「……は? あいつ、今度は魔王城に何しにきたの? 嫌がらせ? 僕の存在意義、どこ……?」
戦わずして勝利してしまったイケメン勇者は、ボロボロの聖剣を握りしめたまま、いよいよ精神が崩壊しかけて白目を剥き始めるのであった。
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