第6話 朝、火を起こす男と、爆走のルーティーン
最後まで読んでくださると嬉しいです!
ちゅんちゅん、と原始的な鳥の鳴き声が響く。
「……ん、ふわぁあ。よく寝た」
東の空から太陽が昇ると共に、俺はパチッと目を覚ました。
筋肉の成長には、早寝早起きと質の良い睡眠が不可欠。異世界に来てからというもの、前世の学生時代からは考えられないほど規則正しい生活を送っている。
「さて、朝飯の前にまずは『火起こし』だな」
昨日燃え残った薪の燃えカスを見つめながら、俺はふんふんと鼻歌交じりに両手を構えた。
イメージするのは、『お天道様の熱をほんのちょっとだけ、この薪に分けてもらうノリ』だ。天文学的な距離にある太陽の熱エネルギーを、そのまま地上の一点に引っ張ってくるイメージである。
パチパチパチ……ボッ!!!
「よし、着火完了」
本人はただの「ちょっと小粋なマッチ代わり」のつもりだが、世界の常識で言えば、宇宙の天体(恒星)のエネルギーを直接呼び寄せる、世界の崩壊を招きかねない『宇宙属性魔法』である。もちろん無詠唱だ。
「よし、次はアサメシの調達だな。朝はやっぱり焼き魚に限る」
俺は昨日大峡谷を作った拍子にできた、新設のキレイな川へと向かった。
水面を覗き込むと、のんきに泳ぐ魚影を発見。それは体長2メートルほどあり、頭部が鉄兜のように硬い『アイアン・サーモン』だった。並の漁師なら網を破られて絶望する凶暴な川の主だ。
「そこだっ、と。おらぁ!」
バシャァン! と川に飛び込み、俺はなんか頑張って魚と格闘した。
アイアン・サーモンも必死に抵抗し、鉄兜のような頭突きをかましてきたが、俺が「暴れるな、美味しく食うから」と優しく(※握力5トンで)抱きしめると、魚は一瞬で観念してピクピクと白目を剥いた。
「いい脂が乗ってそうだ」
拠点に戻り、太陽の熱でパチパチと燃える特製グリル(焚き火)で、頑張って獲った魚をじっくりと丸焼きにする。
皮目がパリッと焼け、ジュワジュワと上質な脂が滴るサーモンを、豪快にガブリと一口。
「うっま……! 身が引き締まってて最高だ。朝から極上のタンパク質だな!」
大自然の恵みに感謝しながら、あっという間に2メートルの魚を完食。
胃袋が満たされ、エネルギーが全身の細胞に行き渡るのを感じる。
「よし、飯の後は朝のランニング (超長距離走)だ!」
今日も元気に現実逃避、もとい、体力作りの時間である。
昨日でなんとなくコツは掴んだ。イメージは、『ちょっと地球の裏側までコンビニに行ってくるノリ』だ。
「ウオオオオーッ! 朝の空気は気持ちいいなぁあ!!」
ドォォォォォォォン!!!!
俺が最初の一歩を踏み出した瞬間、再び音速の壁がブチ破られ、魔境の木々が衝撃波でドミノ倒しのように激しくなびいた。
プラズマの光を纏った俺は、日の出の光を追い抜くような超スピードで、大陸を横断する超長距離走へと繰り出すのだった。
一方その頃――。
お城の防衛線では、早朝の魔王軍の奇襲に叩き起こされたイケメン勇者が、ボロボロの防具を身につけながら絶叫していた。
「寝てない! 僕はまだ1時間しか寝てないんだよぉおお! なんであの手配書のゴリラを捕まえないんだよ、アイツを前線に出せよぉおおお!!」
世界のバランスが、俺の気まぐれなランニングと、勇者の血の滲むような残業によって激しく揺れ動いているとは、朝の爽快な風を浴びている俺には、やっぱり知る由もなかった。
最後まで読んでくださりありがとうございました!
別の作品や次の話も是非見てみてください!
面白かったらブックマーク・評価で応援いただけると嬉しいです!




