第5話 夜、学びって素晴らしい
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カニをたらふく食って胃袋を満たした俺は、満天の星空の下でゴロリと横になっていた。
「ふぅ……。それにしても、夜の魔境は静かだな。星がめちゃくちゃ綺麗だ」
遮るもののない異世界の夜空には、見たこともない星座や、ぼんやりと輝く天の川が広がっている。
お城をぶち壊して、光の速さ(並み)で走って、カニをインフェルノ(摩擦熱)で焼いた激動の数日間だったが、こうして静かに星を眺めていると、不思議と心が落ち着いてくる。
と同時に、俺の頭は今日1日の出来事を冷静に振り返り始めていた。
「待てよ。俺、魔力ゼロのはずだよな? なのに、空間を握り潰したり、マッハのダッシュで大峡谷を作ったり、手を擦り合わせて大火力を出したりしたぞ……」
いくらなんでも、ただの「ノリと気合い」だけで説明がつく現象じゃない。
そこで俺は、前世で貪るように読んでいたライトノベルの知識を総動員して、ひとつの仮説を立ててみた。
「ラノベでよくある設定だと……魔法ってのは、世界のシステムに『こうなってくれ!』って命令を届ける行為だ。つまり、古代の呪文とか緻密な魔力操作ってのは、バカ正直にマニュアル通りに命令を打ち込んでるだけに過ぎないんじゃないか?」
対して、俺のやり方はどうだ。
『空気をギュッとする』『光の速さで走る』『摩擦で火を起こす』。
すべて、頭の中でこれ以上ないほど鮮明に、かつ超強力に現象の結末をイメージしている。
「なるほど。この世界の魔法って、実は『創造力』が命なんだ。マニュアル(呪文)を知らない俺だからこそ、イメージの力だけで世界のシステムに直接アクセスして、バグみたいな出力で新しい魔法を勝手に編み出しちゃってるんだな」
そう考えると、すべてが腑に落ちた。
学ぶって素晴らしい。前世のラノベ知識が、まさかこんな危険地帯での生存戦略に役立つなんて。
「つまり、俺の創造力(妄想力)次第で、この先どんな魔法でも作れちゃうわけだ。……よし、明日からはいろんな便利魔法を開発してみよう。とりあえず、ふかふかのベッドとか作りたいな」
無限の可能性にワクワクしてくる。
だが、今日はさすがに動きすぎて、心地よい疲労感がまぶたにドッシリと乗っかってきていた。
「……あー、ダメだ。急に猛烈に眠くなってきた。筋肉の超回復のためにも、夜更かしは厳禁だな」
俺は近くの地面に、なんとなく『ふかふかで柔らかいクッションになるイメージ』を植え付けてみた。すると、ゴツゴツしていた土の地面が、なぜか高級羽毛布団並みの弾力を持つ最高級の寝床へと変貌した(世界の常識で言えば、物質の分子構造を書き換える『神級の錬金術』である)。
「お、大成功。それじゃ、今日は寝よう」
包み込まれるような暖かさの中で、俺はゆっくりと目を閉じる。
満天の星空に見守られながら、全世界指名手配犯の脳筋魔法使いは、スースーと幸せそうな寝息を立てて爆睡し始めるのだった。
一方その頃――。
深夜2時のお城の作戦室では、「未確認の破壊者が引き起こした、地殻変動レベルの大峡谷」の調査データを見ながら、寝不足で目が血走ったイケメン勇者と国王が、「これ、どうやって勝つんだよ……」と頭を抱えて絶望していた。
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