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転生貴族の三男だけど、前世の知識で帝国を買い取ります  作者: ニートは34歳まで
第一章 帝都物流革命編

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第八話 対策は“見える化”で


「……赤蛇商会か」


 ガルドが低く呟いた。

 倉庫の空気が一気に張り詰める。

 周囲の商人たちも露骨に顔色を変えていた。


「有名なの?」


 アルノルトが小声で聞くと、リリアが頷く。


「灰狼商会と南区を争ってる大商会です……」


「なるほど」


 つまり競合。

 しかも、共同輸送を潰したい側。

 アルノルトはすぐ理解した。


(成功されると困るんだな)


 物流効率が改善されれば、小規模商人でも利益を出せる。

 そうなれば、大商会だけが儲かる今の構造が崩れる。

 既得権益としては当然邪魔したい。


「坊ちゃん」


 ガルドが腕を組む。


「どうする?」


「どうするって?」


「妨害されるぞ」


「だろうね」


 アルノルトは即答した。

 むしろ想定内だった。

 前世でもそうだ。

 新しい仕組みを作る時、既得権益は必ず抵抗する。


「襲撃?」


「あり得る」


「荷の盗難?」


「普通にある」


「護衛買収?」


「そっちもあるな」


 リリアの顔がどんどん青くなる。


「だ、大丈夫なんですかこれ……?」


 だがアルノルトは逆に落ち着いていた。


(問題は“人”なんだよな)


 物流そのものは難しくない。

 難しいのは、


•誰が何を持っているか

•途中で抜かれていないか

•誰が責任を持つか

を管理すること。


 つまり。


(見えないから揉める)


 その時だった。

 アルノルトの脳内に、前世の記憶が浮かぶ。

 物流センター。

 在庫管理。

 チェックリスト。

 配送番号。

 そして――伝票。


(あ)


 アルノルトは思わず声を漏らした。


「どうした坊ちゃん」


「“見える化”すればいいんだ」


「……は?」


「積荷を全部記録する」


 ガルドが眉をひそめる。

 アルノルトは近くの木箱を指差した。


「誰の荷か」


「どれだけ積んだか」


「どこへ運ぶか」


「全部、一覧で管理する」


「そんな面倒なことする意味がどこにある」


「意味しかないよ」


 アルノルトは笑った。


「盗まれた時、すぐ分かる」


 空気が止まる。


「積荷を数字で管理すれば、途中で減った時点で異常が分かる」


「護衛の責任範囲も明確になる」


「荷主も誤魔化せない」


 つまり。


「“誰が悪いか分からない”をなくせる」


 ガルドが黙り込んだ。

 周囲の商人たちもざわついている。


「そりゃ……確かに」


「今までは勘だったからな……」


「荷が減っても揉めるだけだった」


 この世界は管理が雑すぎる。

 だから損失が多い。

 そして損失が多いから、皆が互いを信用しない。


(なら、数字で縛ればいい)


 前世では当然だった。

 だが、この世界では革命だ。


【ユニークスキル《企業経営》が発動】

【新技術:《物流管理》を認識】

【成功率:58% → 67%】


(戻った)


 アルノルトは少し安心する。

 どうやら方向性は正しいらしい。


「紙とインクを用意して」


「今からか?」


「今から」


「……本当に十三歳かお前」


「それ昨日も聞かれた」


 ガルドは呆れたように笑った。

 だが、その目は明らかに変わり始めていた。

 もう“変な貴族の坊ちゃん”を見る目ではない。

 利益を生み出す人間を見る目だ。


「よし」


 ガルドが振り返る。


「全積荷を確認しろ!」


 倉庫が一気に動き出した。


「荷主ごとに記録だ!」


「木箱の数も全部書け!」


「勝手に積むな!」


 怒号が飛び交う。

 だが、混乱の中にも変化があった。

 皆、自分の荷が記録されることに安心し始めている。

 アルノルトはその様子を見ながら、小さく笑った。


(やっぱりそうだ)


 人は“信用”ではなく、

“安心できる仕組み”

に金を払う。

 そして――。


(その仕組みを作る側が、一番儲かる)


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!


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