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転生貴族の三男だけど、前世の知識で帝国を買い取ります  作者: ニートは34歳まで
第二章 辺境開拓編

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第六十話 帝国を買い取る日


 皇帝からの召喚を受けた翌日。


 アルノルトは帝城の謁見の間に立っていた。


 赤い絨毯。


 並ぶ近衛兵。


 そして。


 左右には帝国の重臣たち。


 宰相。


 将軍。


 大貴族。


 帝国を動かしてきた人間たちが、全員こちらを見ていた。


「アルノルト・ヴァルツェン。」


 皇帝が口を開く。


「よく来てくれた。」


「お招きいただき光栄です。」


 アルノルトは頭を下げる。


 すると。


 一人の貴族が鼻を鳴らした。


「商人風情が。」


「まったくだ。」


「国家財政の話だぞ。」


 予想通りだった。


 むしろ静かな方だ。


「静まれ。」


 皇帝の一言で、謁見の間が静かになる。


「帝国は危機にある。」


 重い声だった。


「戦争。」


「飢饉。」


「物流の停滞。」


「そして財政赤字。」


 誰も否定しない。


 否定できない。


 事実だからだ。


「アルノルト。」


「はい。」


「お前なら、この国を救えるか?」


 全員の視線が集まる。


 アルノルトは少しだけ考えた。


 そして。


「救えます。」


 ざわめきが広がる。


「馬鹿な!」


「何を根拠に!」


「商会一つで国家を支える気か!」


 貴族たちが騒ぎ始める。


 だが。


 アルノルトは続けた。


「北部も同じでした。」


 静かになる。


「物流が止まっていた。」


「人がいなかった。」


「金もなかった。」


「でも仕組みを作った。」


「信用を作った。」


「契約を作った。」


 北部街道。


 共同輸送。


 保存食。


 織物。


 全部そこから始まった。


「国家も同じです。」


「国だから特別なわけじゃない。」


「収入以上に使えば潰れる。」


「流通が止まれば貧しくなる。」


「信用がなくなれば誰も投資しない。」


 前世で嫌というほど見た。


 会社も。


 組織も。


 国家も。


 本質は変わらない。


「なら条件があります。」


 皇帝が頷く。


「言ってみろ。」


「帝国債務はアルノルト商会が引き受けます。」


 再びざわめきが広がる。


「条件は四つ。」


「貴族特権の縮小。」


「徴税制度の改革。」


「契約の法制化。」


「商人と平民の身分制限の撤廃。」


「なっ――!」


 貴族たちが立ち上がる。


「認められるわけがない!」


「商人に政治を任せる気か!」


「黙れ。」


 皇帝の声だった。


 再び静寂が訪れる。


「理由を聞こう。」


 アルノルトは答えた。


「価値を作る者が報われる国にしたいからです。」


「身分ではなく。」


「家柄でもなく。」


「価値を生み出した人間が報われる国に。」


 長い沈黙。


 やがて。


 皇帝が笑った。


「商人らしい答えだ。」


「ありがとうございます。」


「褒めてはおらん。」


 だが。


 その顔は少しだけ楽しそうだった。


「よかろう。」


 皇帝が立ち上がる。


「アルノルト・ヴァルツェン。」


「帝国再建計画の全権を委ねる。」


 謁見の間が騒然となる。


「陛下!」


「お待ちください!」


「国が商会のものになりますぞ!」


 その時だった。


 皇帝が笑った。


「違う。」


 そして。


 ゆっくりとアルノルトを見る。


「もう買われておる。」


 静まり返る。


「北部を救い。」


「物流を作り。」


「商人を育て。」


「税を支えている。」


「お前はもう、帝国を支えているのだ。」


 誰も反論できなかった。


 そしてその日。


 帝国最大の改革が始まった。


 後に歴史書は記す。


 ――帝国を買い取った日、と。


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