第四十七話 村の商品
翌日。
アルノルトはフェルン村へ来ていた。
同行者はリリアとベルマン。
ダンは護衛の手配で残っている。
「また、いらっしゃったんですね」
オルド村長が苦笑する。
「契約したばかりなのに」
「契約したから来させてもらったんだよ」
アルノルトは笑った。
契約は終わりじゃない。
始まりだ。
前世でもそうだった。
契約を取るより、契約後の方が重要だった。
「今日は何を?」
「村の商品を探しに来た」
オルド村長が首を傾げる。
「商品?」
「うん」
アルノルトは周囲を見る。
畑。
森。
川。
作業場。
村には必ず強みがある。
問題は。
(本人たちが気付いてないことが多い)
という点だった。
「フェルン村で一番多い仕事は?」
「畑ですな」
「次は?」
「狩り」
「なるほど」
北部らしい。
寒冷地。
森が多い。
狩猟文化も強い。
「何が獲れる?」
「鹿」
「兎」
「あと山鳥ですな」
アルノルトは少し考える。
そして。
(燻製だな)
かなり相性が良い。
保存も利く。
輸送も可能。
北部向きの商品だ。
「侯爵様」
オルドが少し困った顔をする。
「ですが、それでは儲かりません」
「どうして?」
「昔からやっておりますので」
その言葉で理解した。
典型的なケースだった。
当たり前すぎて価値を感じていない。
前世でもよくあった。
地元民が気付かない名産品。
「売り方の問題だよ」
「売り方?」
「例えば」
アルノルトは言う。
「燻製肉って、北部以外では珍しいよね?」
「……言われてみれば」
「なら価値になる」
オルドが少し考え込む。
ベルマンも頷いていた。
「確かに帝都では見かけませんね」
「だよね」
つまり。
商品がないんじゃない。
商品化していないだけだ。
「リリア」
「はい」
「試作品作れそう?」
「できます」
即答だった。
最近は保存食作りにも慣れている。
「では村の皆さんに協力してもらいます」
リリアが笑顔になる。
その時だった。
遠くから声が聞こえた。
「村長!」
若い村人が走ってくる。
「どうした?」
「商人が来ています!」
オルドが驚く。
「商人?」
「南からです!」
アルノルトはミレナの報告を思い出した。
(早いな)
どうやら。
赤蛇商会も同じことを考えているらしい。
「何人だ?」
「馬車三台です!」
かなり本気だ。
単なる挨拶ではない。
間違いなく営業だろう。
「アルノルト様……」
ベルマンが不安そうに言う。
「来ましたね」
「来たね」
アルノルトは笑った。
むしろ都合が良い。
市場競争は避けられない。
なら。
真正面から見ておきたかった。
赤蛇商会が何を売り。
何を武器にしているのか。
【ユニークスキル《企業経営》が発動】
【競合勢力を確認】
【赤蛇商会との市場競争が本格化】
【次の選択が市場占有率へ影響します】
(さて)
アルノルトは村の入口へ視線を向けた。
赤蛇商会。
帝国有数の大商会。
そのやり方を見せてもらおうじゃないか。




