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転生貴族の三男だけど、前世の知識で帝国を買い取ります  作者: ニートは34歳まで
第二章 辺境開拓編

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第四十六話 赤蛇商会の次の一手


 フェルン村との年間契約締結から三日後。

 アルノルト商会の倉庫には、以前よりも多くの荷が積まれていた。


「カルド村向けの荷、準備完了です!」


「燻製魚の追加分もあります!」


「塩は第五便へ!」


 人が増えた。

 仕事も増えた。

 そして契約も増え始めている。

 順調だった。

 少なくとも表面上は。


「侯爵の坊ちゃん」


 ダンが倉庫の壁にもたれながら言う。


「最近、妙な連中を見かける」


「妙な連中?」


「商人だな」


 アルノルトは顔を上げた。


「商人なら普通じゃない?」


「問題はそこじゃねぇ」


 ダンは腕を組む。


「北部の村を回ってる」


「それだけ?」


「予想だが、赤蛇商会の連中だ」


 空気が少し変わる。

 ミレナが嫌そうに眉をひそめた。


「始めましたか」


「何を?」


 リリアが聞く。

 ミレナはため息を吐いた。


「囲い込みです」


 その一言で、アルノルトも理解した。


(契約取りか)


 当然の動きだった。

 こちらが村との長期契約を増やしている。

 なら向こうも動く。

 市場競争なのだから。


「条件は?」


「かなり良いそうです」


 ミレナが報告書を机へ置く。


「初年度割引」


「大量購入特典」


「護衛費負担」


「さらに農具貸与」


「豪華だねぇ」


 ベルマンが青ざめる。


「勝てるんですか?」


「正面からは無理」


 アルノルトは即答した。

 資本力が違う。

 赤蛇商会は大商会。

 こちらは地方商会。

 同じ条件を出せば、先に潰れるのはこちらだ。


「じゃあ、どうするんです?」


「同じことはしない」


 前世でもそうだった。

 大企業と戦う時に、

 大企業の真似をする。

 これは一番やってはいけない。


「向こうが配るなら」


「こっちは育てる」


 空気が止まる。


「育てる?」


 リリアが首を傾げる。


「うん」


 アルノルトは地図を広げた。

 北部一帯。

 村が点在している。


「今の北部の問題って何?」


 ベルマンが答える。


「貧しいことです」


「もっと根本」


「物流?」


「それもある」


 アルノルトは頷く。

 そして。


「稼げる商品が少ない」


 全員が黙った。


「塩は仕入れ」


「保存食は加工」


「でも北部そのものの商品が少ない」


 それが問題だった。

 だから貧しい。

 だから人も出ていく。


「つまり」


 ミレナが気付く。


「村ごとに特産品を作る?」


「正解」


 アルノルトは笑った。

 フェルン村。

 カルド村。

 ラウル村。

 それぞれ得意なものが違う。

 なら。

 売れる商品も違うはずだ。


「侯爵の坊ちゃん」


 ダンが呆れた顔をする。


「また面倒なことを考えてるな」


「利益になるよ?」


「アンタの利益話は大体面倒なんだよ」


 否定できなかった。

 だがこれは重要だ。

 契約だけでは弱い。

 村が儲かる仕組みまで作れば。

 簡単には離れなくなる。

【ユニークスキル《企業経営》が発動】

【《地域特産品開発》を認識】

【北部市場成長率が上昇】

【契約村との結び付きが強化】


(よし)


 アルノルトは静かに笑った。

 赤蛇商会が金で囲うなら。

 こちらは利益そのものを増やす。

 その方が、ずっと強い。


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