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転生貴族の三男だけど、前世の知識で帝国を買い取ります  作者: ニートは34歳まで
第二章 辺境開拓編

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第四十四話 実績を売れ


 フェルン村から戻った翌日。

 アルノルトは商会倉庫で報告を受けていた。


「正直、驚きました」


 ベルマンが羊皮紙を見ながら言う。


「何が?」


「契約を迫らなかったことです」


 リリアも隣で頷いていた。


「私もです」


「普通は契約してもらわないと意味がないのでは?」


 もっともな疑問だった。

 だがアルノルトは首を振る。


「逆だよ」


「逆?」


「今のアルノルト商会に足りないのは契約じゃない、信用だから」


 商会はできたばかり。

 共同輸送も始まったばかり。

 名前だけでは誰も信じない。


「だからまず実績」


「実績ですか」


「うん」


 フェルン村へ確実に荷を届ける。

 約束を守る。

 それを積み重ねる。

 その方が後々大きくなる。

 前世でも同じだった。

 広告より口コミ。

 宣伝より実績。

 地方ほどその傾向は強い。


「侯爵の坊ちゃん」


 ダンが笑う。


「つまり今回は儲け無しか?」


「そんなことない」


 アルノルトは机の地図を指差した。


「フェルン村の隣は?」


 ベルマンが地図を見る。


「カルド村です」


「さらにその先は?」


「ローザ村」


「そのまた先は?」


「ミハル村ですね」


 ダンが少し考え込む。

 そして。


「ああ」


 ようやく気づいたらしい。


「噂か」


「そう」


 アルノルトは頷いた。

 北部では商人より村人の方が情報網を持っている。

 親戚。

 知人。

 行商人。

 全部繋がっている。


「フェルン村へちゃんと荷が届く」


「保存食も品質が良い」


「価格も安定している」


 そうなれば。

 勝手に噂が広がる。


「だから今売るのは商品じゃない」


「信用だ」


 ミレナが感心したように笑う。


「それで試用契約ですか」


「その方が警戒されないしね」


 その時だった。

 倉庫の外から声が聞こえる。


「アルノルト様!」


 若い商会員だった。

 孤児だったエルである。


「どうした?」


「フェルン村から人が来ています!」


 全員が顔を見合わせた。


「早いな」


 ダンが笑う。

 アルノルトたちは倉庫の外へ出た。

 そこには昨日会ったばかりの村長オルドがいた。

 しかも一人ではない。

 別の村長らしき男もいる。


「おや」


 アルノルトは少し笑った。


「もう契約ですか?」


「いえ」


 オルドは首を振る。


「今日は紹介です」


 隣の男を指差した。


「カルド村の村長です」


 なるほど。

 そういうことか。


「話を聞いてな」


 カルド村長が腕を組む。


「一度会ってみたくなった」


 アルノルトは思わず笑った。

 まだ何も売っていない。

 だが。

 もう次の客が来ている。

【ユニークスキル《企業経営》が発動】

【《口コミ効果》を認識】

【周辺村落への影響力が上昇】

【営業効率:向上】


(やっぱり始まったな)


 実績が。

 信用が。

 少しずつ北部へ広がり始めていた。


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