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転生貴族の三男だけど、前世の知識で帝国を買い取ります  作者: ニートは34歳まで
第二章 辺境開拓編

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第四十二話 契約を取りに行け


 赤蛇商会による値下げ攻勢が始まってから五日。

 ラウル村の市場は、少しざわついていた。


「塩が安いぞ!」


「赤蛇商会の方が得じゃないか?」


「いや、でも前回届かなかったって聞いたぞ」


 そんな声が飛び交っている。

 アルノルトは市場の様子を見ながら頷いた。


(予想通りだな)


 価格だけ見れば赤蛇商会が強い。

 だが物流は違う。

 安いだけでは意味がない。

 届かなければ価値はゼロだ。


「侯爵の坊ちゃん」


 ダンが笑う。


「思ったより客取られてないな」


「うん」


「慌てないのか?」


「慌てる理由がない」


 赤蛇商会がやっているのは、短期戦。

 だがアルノルトが欲しいのは、長期契約だ。

 勝負の場所が違う。


「ミレナさん」


「はい」


「今の契約数は?」


 ミレナが羊皮紙を広げる。


「定期契約は村が三つ」


「商人が二組」


「保存食予約が四十七件です」


 悪くない。

 むしろ辺境としては十分すぎる。


「もっと増やそう」


 その言葉で、ミレナが少し笑った。


「やっぱりそうなりますか」


「当然」


 価格競争しないなら、やることは一つ。

 顧客を囲う。

 それも価格ではなく、契約で。


「ベルマン」


「は、はい!」


「周辺村の数は?」


「この辺だけでも十以上あります」


「全部回ろう」


 ベルマンが固まった。


「ぜ、全部ですか!?」


「全部」


 アルノルトは即答する。

 待っていても契約は増えない。

 なら取りに行く。

 営業だ。

 前世でも何度もやった。


「侯爵の坊ちゃん」


 ダンが吹き出した。


「貴族なのに、自ら売りにでるのか?」


「市場は足で作るものだから」


「意味分からねぇ」


 だがミレナは納得した顔をしていた。


「確かに効果的です」


 赤蛇商会は大きい。

 だから一件一件回らない。

 回れない。

 だがアルノルト商会は小さい。

 だからこそできる。


「価格は少し高くてもいい」


 アルノルトは言う。


「その代わり、必ず届ける」


「冬でも?」


 リリアが聞く。


「冬でも」


 そこが重要だ。

 北部では、「安い」より、「手に入る」方が、価値が高い。

 だから。


(売るのは商品じゃない)


(安心だ)


 その時だった。

【ユニークスキル《企業経営》が発動】

【《地域営業》を認識】

【推定契約数:増加】

【周辺村との関係改善】


(営業までスキル化するのか)


 少し笑ってしまう。

 だが方向性は間違っていない。

 大商会が値段で来るなら。

 こちらは人との繋がりで戦う。

 その方が、アルノルト商会らしい。


「よし」


 アルノルトは立ち上がった。


「まずは一番近い村から行こう」


「今からですか?」


 リリアが驚く。


「競争相手は待ってくれないからね」


 そして。

 辺境初の営業活動が始まった。


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