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転生貴族の三男だけど、前世の知識で帝国を買い取ります  作者: ニートは34歳まで
第二章 辺境開拓編

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第三十六話 既得権益


「危険?」


 アルノルトは首を傾げた。


「俺、盗賊じゃないけど」


「そこではありません」


 クラウスは即答した。

 声は静か。

 だが圧がある。

 完全に“交渉慣れした人間”だった。


「アルノルト商会は、成長速度が異常です」


「褒めてる?」


「警戒しています」


 素直だった。

 ミレナが小さくため息を吐く。


「やっぱりそう来ますよね……」


「当然です」


 クラウスは広場を見回す。


「北部物流は長年停滞していました」


「それを、わずか数週間で動かした」


「しかも商人ギルドを介さずに」


 アルノルトは少し考える。


(つまり中抜きできてないのか)


 前世知識が嫌な方向で理解した。

 たぶん今までの北部物流は、

•ギルド仲介

•高額手数料

•既得権益

で成り立っていたのだろう。

 だがアルノルトは、

•共同輸送

•共同護衛

•直接契約

でコストを削った。

 つまり。


(既存構造壊している)


「アルノルト様」


 クラウスが静かに続ける。


「北部商人たちが動揺しています」


「どうして?」


「利益構造が崩れるからです」


 ベルマンが固まる。

 リリアも少し緊張していた。

 だがアルノルトは逆に納得した。


(まあそうなるよな)


 前世でも同じだった。

 物流改革。

 共同化。

 直販。

 中間コスト削減。

 全部、既存組織と衝突する。


「具体的には?」


 アルノルトが聞く。

 クラウスは淡々と答えた。


「北部街道の輸送料が下がっています」


「共同護衛で護衛費も低下」


「さらに保存食流通で冬価格まで安定し始めている」


「うん」


「結果、既存商人の利益率が急減しています」


 かなり深刻そうだった。

 だがアルノルトとしては。


(むしろ健全化しているだけでは?)


 という感覚だった。

 高コスト構造が崩れただけだ。


「クラウスさん」


「はい」


「北部って、今まで正常だったと思う?」


 クラウスが少し黙る。


「……正常ではありません」


「だよね」


 輸送崩壊。

 高額通行料。

 物流停滞。

 市場縮小。

 完全に悪循環だった。


「俺は市場を広げているだけ」


「ですが、その速度が危険なのです」


 クラウスの目が細くなる。


「急激な変化は、必ず反発を生みます」


(おお……)


 アルノルトは少し感心した。

 この人、かなりちゃんと見えている。

 ただの悪役ではない。

 本当に市場全体を見ているタイプだ。


「例えば?」


「既存商人の破産」


「地方流通の混乱」


「価格競争の激化」


「あと」


 クラウスは少し間を置く。


「あなたを潰したい者も出るでしょう」


 空気が静まった。

 ダンがニヤリと笑う。


「もう出てるけどな」


「黒牙団ですね」


 クラウスが即答した。

 情報早い。


「ただ、あれはまだ小さい」


「本当に危険なのは――」


 クラウスが真っ直ぐアルノルトを見る。


「中央側です」


 その瞬間。

 アルノルトの脳内で、半透明の文字が浮かんだ。

【ユニークスキル《企業経営》が発動】

【《既得権益勢力》を確認】

【帝国中央市場がアルノルト商会へ注目】

【推定危険度:上昇】


(はい来た)

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!


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