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転生貴族の三男だけど、前世の知識で帝国を買い取ります  作者: ニートは34歳まで
第二章 辺境開拓編

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第二十六話 “止まらない”を作れ


「荷馬車が襲われてる!?」


 ベルマンが顔を青くする。

 村人たちにも一気に緊張が走った。


「ど、どこだ!」


「北の分岐路です! 煙も上がってて……!」


 ミレナが舌打ちする。


「……最悪ですね」


「黒牙団?」


「可能性は高いです」


 北部街道で荷馬車襲撃。

 しかもタイミングが良すぎる。


(見せつけに来たな)


 共同輸送。

 物流回復。

 その動きを察知して牽制してきたのだろう。


「アルノルト様!」


 リリアが不安そうに袖を掴む。


「どうしますか!?」


「行く」


「えっ」


 ベルマンが固まった。


「い、行くんですか!?」


「現場確認は大事」


 前世でもそうだった。

 問題が起きた時、

報告書だけ見ている上司は大体失敗する。

 現場。

 状況。

 空気。

 それを見ないと、本当の問題は分からない。


「ミレナさん」


「……護衛二人出します」


「助かる」


 即決だった。

 判断が早い。

 かなり優秀だ。

 数十分後。

 アルノルトたちは北側街道へ到着した。


「……うわ」


 リリアが青ざめる。

 荷馬車が一台、横転していた。

 積荷の木箱は壊され、中身が散乱している。

 幸い死人はいないようだ。

 だが。


(酷い襲い方だな)


 必要以上に壊されている。

 単なる略奪ではない。

 恐怖を植え付けるための襲撃だった。


「アルノルト様」


 ミレナが小声で言う。


「これ……」


「うん」


 アルノルトはしゃがみ込み、散乱した荷を確認する。

 乾燥豆。

 安布。

 保存食。

 つまり高級品ではない。


(利益率の低い荷ばかりだな)


 普通の盗賊なら、もっと高価な積荷を狙う。

 なのに、こういう荷まで襲う。

 つまり。


(目的は別か)


【ユニークスキル《企業経営》が発動】

【物流妨害型勢力を確認】

【黒牙団の目的:《北部街道支配》】

【推定収益:《通行料》】


(あー、そういうタイプか)


 アルノルトは納得した。

 その時だった。


「若様」


 横転した荷馬車の陰から声がした。

 アルノルトたちが振り向く。

 そこには、怪我をした中年商人が座り込んでいた。


「無事?」


「ああ……命だけはな」


 顔色は悪い。

 かなり怯えている。


「連中、なんて言っていた?」


 商人は震えながら答える。


「“勝手に北部街道を使うな”って……」


 空気が重くなる。

 ベルマンが青ざめた。


「や、やはり黒牙団……」


「通行料を要求された?」


 商人が驚いた顔をする。


「な、なんで分かったんで?」


「やっぱりか」


 ミレナが苦い顔をした。


「最近増えてるんです」


「金を払った商隊だけ、“護衛”するとか言い出して」


「なるほど」


 完全に理解した。

 黒牙団はただの盗賊じゃない。

 街道そのものを支配し始めている。


「つまり連中」


 アルノルトは静かに言う。


「物流で飯食ってるんだ」


 ミレナが頷いた。


「ええ。そして街道が危険なほど、連中は儲かる」


 だから。

 共同輸送。

 街道整備。

 安定物流。

 それらは全部、黒牙団の利益を削る。


「若様」


 商人が震えながら言う。


「悪いこと言いません」


「北部物流なんざ、諦めた方がいい」


「どうして?」


「無理だからです」


 即答だった。


「この街道は、もう黒牙団の縄張りだ」


「商人はみんな怯えてる」


「逆らえば襲われる」


 アルノルトは少し考える。


(あー……)


 これ、かなりまずい。

 物流問題だけじゃない。


(恐怖で市場支配されている)


 つまり今の北部は、“非合法物流権”を握られている状態だ。

 前世で言えば。


(ヤクザが物流インフラ握ってるようなもんか)


 そりゃ経済死ぬ。


「……でも」


 アルノルトは静かに立ち上がる。


「止まらないよ」


 商人が呆然とする。


「え?」


「共同輸送も、街道整備も、全部続ける」


「若様、正気ですか?」


「正気」


 アルノルトは笑った。


「だって、ここで止めたら北部物流が全部黒牙団のものになる」


 物流で一番重要なのは、“止まらない”ことだ。

 一度止まれば信用が消える。

 信用が消えれば、人も金も離れる。

 だから。


(何があっても回し続ける)


 それが物流網の本質だった。

【ユニークスキル《企業経営》が発動】

【《継続物流》を認識】

【北部共同輸送の信頼性が上昇】

【黒牙団との市場競争が開始】


(市場競争って出るんだ……)


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