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転生貴族の三男だけど、前世の知識で帝国を買い取ります  作者: ニートは34歳まで
第二章 辺境開拓編

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第二十三話 利益の匂い


「商人が来た……?」


 ベルマンが信じられない顔をしていた。

 無理もない。

 ラウル村は、ここ数年ほとんど商人が来ていなかったらしい。

 そんな場所へ突然商人が現れた。

 しかも街道整備を始めた直後に。


(まあ、分かりやすいよな)


 利益の匂いを嗅ぎつけるのは、どこの世界でも商人だ。


「どんな人?」


 アルノルトが聞くと、村人は少し困った顔をした。


「ええと……荷馬車が二台で、護衛が四人ほどです」


「少数だね」


「北部街道じゃ普通はもっと護衛を付けます……」


 ベルマンが真顔で言った。

 つまり。


(様子見か)


 本格的な交易ではない。

 市場調査に近い。


「行ってみよう」


 アルノルトは広場を後にした。

 村の入口付近。

 そこには、二台の荷馬車が停まっていた。

 そして。


「……子供?」


 一人の女性商人が、露骨に困惑した顔をした。

 年齢は二十代後半くらい。

 赤茶色の髪を後ろで束ね、厚手の外套を羽織っている。

 目つきは鋭い。

 かなり仕事のできるタイプだ。


「初めまして」


 アルノルトは軽く手を上げる。


「アルノルト・ヴァルツェン」


「……侯爵家の?」


「一応」


 女性商人は明らかに警戒していた。

 まあ当然だ。

 辺境へ来た十三歳の貴族。

 意味が分からない。


「ミレナ商会代表、ミレナです」


「どうも」


 アルノルトは周囲を見回す。

 積荷は布と乾燥豆。

 それほど高級品ではない。

 つまり。


(生活物資系か)


 辺境向け商人としては正しい。


「驚きました」


 ミレナが街道を見る。


「少し前まで、ここは荷車が沈む道だったはずですが」


「直したからね」


「数日で?」


「ボトルネックだけ」


 ミレナの目が細くなる。

 完全に値踏みする目だった。


(うん、商人っぽい)


 ガルドとも少し似ている。

 利益を嗅ぐ人間の目だ。


「……共同輸送を始めた貴族というのは、あなたですか?」


「噂が広まるのが早いね」


「商人の情報網を甘く見ないでください」


 どうやら、灰狼共同輸送の話は北部まで届いているらしい。

 思ったより早い。


「それで?」


 アルノルトは笑う。


「今日は視察?」


「半分は」


「もう半分は?」


 ミレナは少し口元を上げた。


「本当に利益が出るのか確認です」


 正直でよろしい。

 アルノルトは嫌いじゃなかった。


「で、どう?」


「……まだ判断中です」


 ミレナは周囲を見る。

 村人たち。

 整備中の街道。

 石を運ぶ荷車。

 そして燻製小屋。


「ですが」


 彼女は静かに言った。


「村に“動き”が出ています」


 ベルマンが少し驚いた顔をする。

 たぶん今まで、そんな評価をされたことがなかったのだろう。


「前までは完全に死んだ村でした」


「辛辣だなぁ」


「事実です」


 即答だった。

 だがアルノルトも否定はできない。

 実際かなり終わっていた。


「でも今は違う」


 ミレナが真っ直ぐアルノルトを見る。


「人が動いている」


 その言葉に、アルノルトは少しだけ笑った。


(そこ気づくか)


 結局、経済とは人の流れだ。

 物流。

 労働。

 市場。

 全部、人が動くことで生まれる。


「ミレナさん」


「なんでしょう」


「北部街道、儲かると思う?」


 ミレナは少し考え込む。

 そして。


「……条件次第では」


 かなり高評価だった。

 商人が“可能性あり”と判断した。

 それは大きい。


「なら共同輸送、北部でもやろうか」


 空気が止まった。


「……は?」


「どうせ単独輸送じゃ利益きついでしょ?」


 図星だったらしい。

 ミレナの表情が一瞬固まる。


「北部街道は護衛費が高すぎる」


「だから共同化する」


「さらに保存食を流す」


「冬前需要も取る」


 アルノルトは静かに笑った。


「北部物流、全部まとめて変えよう」


 その瞬間。

 ミレナの目が変わった。

 商人の目だ。

 利益を見つけた人間の目だった。


【ユニークスキル《企業経営》が発動】

【新商人勢力を確認】

【ミレナ商会との関係構築可能】

【北部物流網形成率:12% → 24%】


(おっ!? 倍になったな)


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