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転生貴族の三男だけど、前世の知識で帝国を買い取ります  作者: ニートは34歳まで
第一章 帝都物流革命編

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第十二話 侯爵家からの呼び出し


「旦那様が、“すぐ戻れ”と……」


 リリアの言葉で、倉庫の空気が変わった。

 ガルドが腕を組む。


「面倒そうだな」


「まあね」


 アルノルトは苦笑した。

 正直、いつか来るとは思っていた。

 共同輸送が成功した。

 市場で噂になった。

 灰狼商会が動いた。

 ここまで派手にやれば、侯爵家の耳にも入る。


「怒られるんですかね……?」


 リリアが不安そうに聞く。


「たぶん」


「たぶんって……」


 だがアルノルトはそこまで焦っていなかった。

 むしろ。


(思ったより早かったな)


 という感覚に近い。

 前世でもそうだった。

 新しいことを始めると、必ず上が反応する。

 特に、自分たちが理解できない成果を出した時ほど。


「坊ちゃん」


 ガルドが低い声で言う。


「気をつけろよ」


「侯爵家相手に?」


「ああ」


 ガルドは真顔だった。


「商人相手なら、利益で話ができる」


「でも貴族は違う?」


「面子で動く」


 アルノルトは少し感心した。


(この人、本当に人を見てるな)


 利益を優先する商人。

 権威を優先する貴族。

 確かに文化が違う。


「まあ、なんとかなるでしょ」


「軽ぇなぁ……」


「なんとかならなかったら、その時考える」


 社会人時代に身につけた処世術だった。

 悩んでも会議は消えない。

 怒られる時は怒られる。

 なら、先にできることをやるしかない。


「それより」


 アルノルトは倉庫を見渡した。


「共同輸送、次回準備進めておいて」


「……侯爵家戻るんじゃねぇのか?」


「戻るよ?」


「なら普通そっち優先だろ」


「ビジネスは止めちゃ駄目」


 前世でもそうだった。

 一度流れを止めると、全部崩れる。

 勢い。

 信用。

 市場熱。

 全部落ちる。


「今は一番大事な時期なんだ」


 共同輸送は、まだ始まったばかり。

 ここで継続性を見せなければ、

“一時的な思いつき”

で終わる。

 だから。


(仕組みにする)


 それが重要だった。


「……なるほどな」


 ガルドがニヤリと笑う。


「坊ちゃん、お前ほんと商人向きだわ」


「褒めてる?」


「ああ。“止めたら終わる”を分かってる奴は強ぇ」


 その時だった。


【ユニークスキル《企業経営》が発動】

【継続型事業を認識】

【《組織運営 Lv1》を獲得】


(新スキル?)


 アルノルトが驚いていると、


【一定人数以上の組織管理が可能になります】

【人員効率が微上昇】

【忠誠度補正が発生】


(急に経営シミュレーション感が強くなってきたな……)


 だが悪くない。

 むしろありがたい。

 今後、人が増えるほど重要になる。


「アルノルト様?」


「あ、うん。なんでもない」


 リリアが不思議そうに首を傾げていた。

 まだスキルのことは話していない。

 というか説明しても理解されない気がする。


「じゃ、行ってくる」


「お気をつけて……!」


 リリアが心配そうに頭を下げる。

 ガルドも軽く手を振った。


「胃痛に気をつけろよ、坊ちゃん」


「それ前世でも聞いた」


 それは少しだけ笑ってしまった。

 アルノルトは苦笑しながら倉庫を出る。

 そして侯爵家への馬車へ乗り込んだ。

 窓の外では、灰狼商会の人間たちが慌ただしく動いている。

 共同輸送。

 契約。

 物流管理。

 まだ小さい。

 だが確実に、この世界へ変化が生まれ始めていた。


(さて)


 アルノルトは背もたれへ体を預ける。


(今度は貴族社会か)


 前世では上司。

 今世では貴族。

 結局、面倒な相手はどこにでもいるらしい。


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!


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