2
家から森までは少し距離がある。
見えて来た森の入り口に自然と笑顔になった。
ビルは相変わらずアタシの肩にとまったままだ。
自分で飛ぶのは疲れるらしい。
アタシが森に行くのは薬草が生えているのもあるが1番は落ち着くからだ。
「今日は天気も良いし、薬草採取日和ね!」
そう言うとビルは返事をするかのように「ピーィ」と鳴いた。
森の入り口から薬草が生えている場所まではほぼ一直線で道に迷う事もない。
森に入ると獣も居そうだがそんな気配も無かった。
薬草は必要な分だけ採取すると籠に入れもう一つの場所へ向かった。
薬草採取場所からさらに奥に行くと大き過ぎず小さ過ぎない泉がある。
そこがアタシのお気に入りの場所。
初めて来た日にビルに案内され見つけた場所。
風で木の枝が揺れザワザワと音がする。
心地良い時間。
ビルも心なしか落ち着いているようだ。
「ここはいつも気持ちが良いな」
そうつぶやいてアタシは目を閉じた。
ザワザワと揺れる木の枝。泉に落ちる葉っぱ。
他に音は無い。
どれくらい目を閉じていたのか…
ゆっくり目を開ける。
「え⋯?」
目を開けた途端最初に映り込んだのは色とりどりの花達。そして泉に近付く獣達。
「何⋯?どういう事?!」
アタシはパニックになっていた。
ザワつく木々と泉だけだったはずだ。
「ビル⋯?ビル!」
慌ててビルを呼ぶがどこにも居ない。
困惑しているアタシをよそに花々は風に揺れ獣達は水を飲み離れて行く。アタシなんて居ないかのように。
「またここに来たのか?」
突然だった。男の人の声がし振り返る。
「え?」
知らない人⋯村の人じゃない。
「えぇ、ここは落ち着くもの。あなたもでしょ?」
今度は女の人の声。顔は見えない。
懐かしいようなどこか聞いた事のある声…
「だ、誰ですか?」
意を決して聞いてみる。返事はない。しばらくして
「あぁ、ここは落ち着く。しかしもう戻らねば…」
そう言って男の人は優しく女の人の肩を抱いた。
「…分かっているわ」
寂し気に応えた女の人の顔が露わになる。
「…っ!」
アタシと同じ琥珀色の目。
髪の色こそ違うが目の色は同じ。
驚いて声が出ないでいるとやがて2人は霞の様に消えていった。
「ピーィ!ピーィ!」
はっと目を開ける。そこにはさっきの光景はない。
ビルがアタシの手を突っついている。
「な、何だったの?」
「ピーィ」
呆然とした様子のアタシを心配してビルが鳴いているようだ。
「…ビルありがと、おかげで戻れたみたい…」
辺りを見回すとやっぱり目を閉じる前の風景。
「もう帰ろっか、思ったよりも長く居たみたい」
「ピーィ」
ビルも賛成のようだ。
帰り支度をし最後に辺りを見渡す。
やっぱりあの色とりどりの花達もないし、獣達も居ない。
「何だったの…」
そう呟きその場を後にした。
ビルがアタシをじーっと見ていた事にアタシは気付かなかった。
「ミルダさんいらっしゃい…」
「あぁ、スノーとさっき会ったよ。森に行くと言って
いた」
「そうなの、お気に入りの場所があるからね」
「あの場所に惹かれるのは仕方ない事だ」
「…えぇ…」
「もうそんなに時間は無いかもしれないな」
「……」
「これもあの子の、あの方の運命だ」
「…分かっている、分かっているわ」
「…ユリシア」
「大丈夫、忘れてない」
「………」




