第3話 ダウナー系は代弁者
「や。成神くん」
駅から学校へ向かっていると神宮寺華恵が話しかけてきた。
「何の用?」
「ん。見かけたから」
だからと言ってわざわざ俺に話しかけんのか?言っちゃあ何だが俺って結構近寄り難いと思うのだが?
「昨日で君に興味が湧いた。だから観察したい」
彼女は俺の顔を覗き込んできた。
「見ても面白いもんなんてねぇ。他あたれ」
「それは私が決める」
ふむ。意外と頑固な奴である。普段はミステリアスな雰囲気でダウナー系の彼女だが芯はあるらしい。
「…………」
「…………」
互いに沈黙が流れる。果たしてどうする事が正解なのだろうか。朝は省エネでいきたいのであんまり喋りたく無い。かと言ってこれも気まずいのだ。
「ん。ちょっと止まって」
俺は不思議に思って立ち止まった。何をするのかと思ったら彼女は急に俺の髪を触ってきた。風に乗って彼女の甘い香りが俺を包む。
「これでよし」
「もしかして寝癖?」
「ん。気になった」
彼女はそれだけ言うとまた歩き始めた。
(何だコイツ!?)
朝から心臓に悪いなと思いつつ俺も歩き出した。
◆◆◆
「おはよう成神くん………え?何で華恵と一緒に居るの?」
教室に入ってきた瞬間に守崎佳子が距離を詰めてきた。俺の身長は170cm超えで彼女と20cmも差があるのだが何かの圧を感じた。
「なんか……捕まった」
「捕まえた」
説明するのが難しく面倒になったので、適当に返答したのだが神宮寺華恵が乗ってきた。
「ふーん。なんか二人とも息合ってない?」
守崎佳子はジト目を向けてきた。
(いや、別に付き合ってるとかでは無いのだが説明が面倒だな)
俺は思案した後に無言で席に着いた。守崎佳子と神宮寺華恵は当然の如く着いてきていた。
「ねぇ何で無視するの?もしかして……いや、何でも無い(一瞬付き合ってるかもって思ったけどゲームしてるし流石に無いか。昨日の今日でこんなに仲良さそうなの?むぅ)」
「多分成神くんは私と同じで朝は省エネタイプ。だから気持ちを代弁するなら『説明めんどい』かな?」
俺は少し目を見開いた。
「すげぇな神宮寺さん」
俺がそう言うと神宮寺さんは両手でピースして守崎さんに勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「私と成神くんは相性抜群」
「むむむ」
守崎さんは何故か悔しそうな表情を浮かべていた。いや相性抜群では無いし、悔しがる場面でも無いのだが?
「おっはー!今日も一日……って成神くんじゃーん!」
「……うわ来たよ」
天敵が来たために俺の顔は歪んだ。
「ねぇねぇ。二日連続その反応は流石に傷つくよ?」
「しょうがない。サキナは天敵認定」
またもや神宮寺さんに言い当てられてしまった。コイツ怖い。
「……なんで華恵と成神くんは仲良くなってんの?流石のサキナちゃんも仰天びっくりだよ?」
石川サキナはむむむと表情を強張らせた。
「私と成神くんは秘密の関係」
「違うが?」
何を口走っているのだろうか?
「ふふ。ドキッとした?」
神宮寺華恵は普段は見せない妖艶な笑みを見せてきた。俺は少しだけ見惚れてしまったが、思考をすぐに戻した。
「悪いが微塵も感じなかった」
「何故?おかしい」
神宮寺さんは眉を顰め、悩むような表情を見せた。しかしそんな表情でも絵になるのが彼女だ。
「成神くんって本当に表情変わんないよね。ポーカーフェイスってやつ?」
石川さんが不思議そうに言ってきたが何と答えればいいか分からないためにスマホに目を落とす。
「でも私のクッキーを食べた時は嬉しそうな表情してたよ?」
「確かに。普段からあの顔しとけばいいのにね」
「余計なお世話だ」
俺はスマホからは目線を変えずに言う。
「成神くんの気持ち分かる。佳子やサキナみたいにニコニコするのは疲れる」
俺の代弁者はうんうんと頷いて同調した。
(コイツらやかましすぎる………)
俺は心の中で大きくため息をついた。




