第4話 ギャルとは同類かも
(〜〜♪〜〜♪)
俺はヘッドホンをつけて心の中で歌っていた。俺が好きなアーティストはMr.Green lemonというバンド。通称ミスターだ。ちなみに俺は音楽ジャンルは問わないがベースがかっこいい曲も好きだ。ビートボックスも少しだが齧っている。
「あっ。成神くんもミスター好きなの?」
目の前を見れば石川サキナが興味津々な顔で立っていた。俺はヘッドホンを首にかけた。
「何で分かった?」
「かすかに鼻歌聞こえたから。もしかしてって思って声かけちゃった(聞き耳立ててただけなんだけどラッキー!)」
どうやら自然と鼻歌を歌っていたらしい。俺は少しだけ羞恥心が芽生えた。
「しかもミスターの初期の曲じゃん!もしかして成神くんって古参?」
「まぁ、結構前から聞いては居るけど」
「ウチと一緒じゃん!この曲マイナーだから知ってる人少なくて悲しかったんだよー!」
「俺も……現実で会ったのは初めて」
ミスターがヒットしたのは最近の明るい曲調のやつだ。昔は暗い曲調やバンド感がもっと強く、人を選ぶ曲が多かった。まさか、石川サキナが昔のミスターを知っているなんて驚きだ。
「じゃあじゃあ!これも知ってる?」
彼女はそう言うとスマホの画面を見せてきた。それは彼女のプレイリストで最近の流行りの曲の中にミスターの曲がそこら中に散らばっていた。
「あぁ。いいよなこの曲」
俺がそう言うと彼女は嬉しそうにはにかんでずいっと顔を寄せてきた。彼女は制服のボタンを外して着崩しているので何がとは言わんが見えているのだ、山の間のくぼみが。それが前に乗り出してきたところで彼女のダイナマイトボディが強調されて凄く目のやり場に困る事態になった。
「エッチ」
「第一に見てないし、だったらしまってくれ」
「あれあれ〜?ウチは何をって言って無いのに?やっぱ見てたって事〜?」
クソ。コイツ慣れてやがる。女がそういう目線が分かるというのは本当だったか。
「まぁ?ミスター好きに免じて特別に見てもいいよ?」
「悪いがキモい奴にはなりたく無いのでな。遠慮しておくよ」
俺はスマホに目線を変えた。
「あれあれー?『孤高の成神』さんがー?実はすました顔したムッツリさんって事かなー?」
石川サキナは弱いものを狩る猛獣の如き顔になりニヤニヤしながら揶揄い始めた。
返答するのも馬鹿らしくなったので俺はヘッドホンを装着しようとした。
「ストップストップ!冗談だって〜!」
彼女は慌てた様子で制止してきた。焦った時に山が揺れたのはここだけの話にしておこう。
「そう言えば成神くんはミスターのライブに行った事ある?」
「あぁ。毎回行くようにはしてる」
「マジ!?じゃあ先月のライブも行ったって事!?倍率めっちゃ高かったよね!?」
「まぁ、運良くな」
「良いな〜。神セトリだったしウチも生で聞きたかった〜!」
羨むような目線を送ってくるがどう返答したらいいか分からない。
「じゃあさ!次のライブは一緒に申し込んで一緒に行こうよ!」
「守崎さんとか神宮寺さんとか誘えば?」
「二人は有名曲しか知らないミーハーだから温度差が違うの!その点、成神くんはウチと同じだから色々都合がいいでしょ?」
何と返すのが正解なのだろう。初めて現実で会ったファン仲間を退けるのは心が痛む。しかし相手はかの有名な石川サキナだ。………それにそこまで友好関係を築く必要性もないだろう。
「まぁ、機会があれば」
俺は曖昧な返事をした。
「マジ!?言質とったからね!」
彼女は興奮を隠しきれていない様子だった。
「それとさ。これから瑛太って呼んで良い?ウチの事もサキナでいいから!」
「…………好きに呼べば?」
「じゃあ瑛太で!」
彼女はにししと笑った。
「サキナ〜?さっきのあれなんだけどー?どこ居るのー?」
どこからか彼女の呼ぶ声が聞こえた。
「呼ばれちゃった。またね瑛太!」
彼女はそれだけ言うとどこかへ消えていった。
(まぁ、同じアーティストが好きなら少しうるさくても目瞑ってやるか)
俺はヘッドホンを装着して、自分の世界に入っていった。




