第2話 ロリっ子とダウナー系
「おはよう成神くん!」
朝からロリっ子がぴょんぴょんと跳ねている。しかし他の二人とは違って跳ねるものは何も無い。何がとは言わないが。
「おはよう」
俺は短くそう言って席に着いた。
「ねぇねぇ成神くん。また作ってきちゃった!」
彼女はそう言うと水玉模様の包みを出してきた。俺は不審に思った。守崎佳子は男女問わず友達が多い。しかしお菓子を渡しているところなんて1年の時から見たことも聞いたことも無い。いつも一緒に居る石川サキナや神宮寺華恵にも渡しているところを見たことが無いくらい珍しい。
「今回は別に何もしてないけど」
俺はやんわりと受け取りを拒否した。
「実は楽しくなっちゃってさ!昨日とは違うやつだから成神くんにも食べて欲しいな〜って!」
彼女ははにかむような笑顔を浮かべた。何だか妹に似ている気がする。いや、俺の妹はこんなに可愛く無い。
「まぁ、貰えるならありがたく受け取るか」
俺は可愛らしい包みを受け取った。
「ふふっ。じゃあ後で感想聞かせてね?」
彼女はそれだけ言うと軽い足取りで席に戻った。
(………貰ってばっかはキモいな。後でジュースでも持っていくか)
周りを見れば今の光景を物珍しそうにしているギャラリーが多数であった。
◆◆◆
俺は自販機でジュースを買ってから守崎佳子の元へ向かった。彼女いつも通り三人グループで話している。
「守崎さん。これ」
俺がジュースを差し出すと三人は驚いた表情を浮かべた。
「え?な、成神くん?これどうしたの?」
「いや、俺が貰ってばっかだからお返し。これいつも飲んでなかったっけ?」
確か守崎佳子はいつもいちごオレを飲んでいた記憶があったので事前にそれを選ぼうと考えていた。
「ありがとう成神くん。っていうかお返しなんて要らなかったのに」
「俺が気にするから」
昨日言った言葉をそっくりそのまま返したので彼女は悔しそうに黙った。
「へぇー!成神くんって意外とそういう気遣いできるんだ!しかも佳子ちゃんが好きないちごオレを選ぶなんて〜?隅に置けないなぁー!」
響き渡る声。一発でわかる。石川サキナである。彼女は俺の顔を見てにししっと笑った。
「……それとクッキー美味しかった。柑橘系の香りがいいアクセントだったよ」
言い返すといい事が無いと昨日学んだために、俺は石川サキナをフルシカトした。
「そう?良かった〜!」
「えっ!?ウチのことフル無視じゃん!?」
あまりにも騒がしいので俺は顔を歪めた。
「サキナ。五月蝿いって」
そんな俺のようすに気がついたのか神宮寺華恵が初めて声を出した。
「ごめんね成神くん。うちのサキナが騒がしくて」
「ちょい華恵?何勝手に謝ってんの?」
石川サキナは神宮寺華恵にジト目を向けていた。俺はこの空間から一刻も早く離れたいと感じた。
「じゃあそれだけだから」
俺が踵を返したところで腕を掴まれてしまった。
「ねぇ成神くん。もうちょい話そうよ」
石川サキナであった。つくづく面倒な奴である。
「無理。離せ」
俺は不機嫌さを隠さずに言葉にした。
「流石に真っ向から拒否られたのは初なんだが!?」
「サキナ。成神くんに嫌われた。情けな」
「華恵は黙ってて!」
石川サキナが別の方向に噛みついたので俺はその隙に颯爽とその場を離れた。
「あっ!ちょい!」
石川サキナの怒っている声が聞こえた気がするが……おそらく気のせいだろう。
◆◆◆
「大丈夫?」
帰ろうと思っていた矢先に神宮寺華恵がひょっこりと顔を覗かせてきた。やはり、こう近くで見るとコイツが一番美人な気がする。
「何が?」
しかし何故話しかけてきたのか分からないため質問で返してしまう。
「サキナにダル絡みされてたから」
「別に」
「嘘。顔に出てた」
……まぁ顔に出てたのは否定せんが。
「アフターケアってやつ?まぁ、サキナは悪い子では無いから許してあげて」
彼女は女子にしては低めの声だ。聞いていて落ち着く声、そんな印象を持つ。
「許すも何もない。俺にとって石川サキナはうるさい人っていう印象がついただけだからな」
「………それ許すより酷くない?」
「騒がしいのは好かん。それだけ」
「そ」
神宮寺華恵はそれ以上何も言わなくなった。そして何故か俺の顔をじーっと見つめてくる。流石にこんな美人に見つめられると照れてきてしまうので少し目線を逸らした。
「………逸らした」
「何で見つめてくんだよ」
「ん。なんとなく」
不思議な奴。それが最初の印象。マイペースであるのは普段から見て分かるがここまでとは想像していなかった。
「じゃあまたね。成神くん」
彼女はミステリアスな笑顔を浮かべてどこかへ行った。俺はため息をついて、さっさと帰った。




