第1話 ゲームスタート
(眠いなぁ)
俺、成神瑛太はスマホに目を落としながら思案した。最近はとあるアニメにハマって夜更かしをしているのだが、それのせいだろう。
「でさ〜!それがおもしろいのなんのって!」
「あはは!」
「もぅ、またその話?」
俺は声のする方を一瞥した。
(チッ。アイツらかよ、寝不足で頭痛いから声のボリューム下げろよ)
俺はとあるグループにモヤモヤした感情を抱いたがすぐにスマホに目線を戻す。
アイツらは高校では有名なグループだ。巷では美少女3人組と呼ばれているが、俺からすれば騒がしい輩でしかない。一人ずつ印象を言うなら、石川サキナはハーフの高身長ギャルで元気はつらつでダイナマイトボディが目を引く。神宮寺華恵はダウナー系美少女でいつも眠そうにしているがその美貌は本物で意外とこっちのボディも中々のもの、後はいつも首にかけているヘッドホンもトレードマークだ。守崎佳子は妹系ロリっ子美少女で愛嬌がある言ったところか。
「あっ!そろそろ時間だから行くね!」
「えー?最近の佳子の追い上げすごくない?ちょっとやばいんだけど……」
「佳子はたらしだから。仕方ない」
確かに顔が整っているのは認めよう。しかし、こいつらは五月蝿い。やかましい。以上。
「……ッッ」
守崎佳子が教室を出ようと小走りをしたところで俺の机にぶつかってきたので、思わず俺の顔が歪んだ。
「あっ、ごめんね成神くん。大丈夫?」
彼女は申し訳なさそうな顔で心配の声をかけてきた。……コイツ。小動物みたいな顔してんな。
「……別に。急いでたけど俺に構ってる暇あんの?」
俺はイライラを隠さずにぶっきらぼうに言い放った。
「そ、そうだね!じゃあまたね!」
彼女は困ったように眉を顰めると小走りでどこかに去っていった。その後すぐに教室内が騒がしくなった。
「成神くん感じ悪くない?」
「いつもあんなんだよ。『孤高の成神』って言われるだけはあるよ」
俺は特に何も感じないので一瞥すらしない。誰から構わずああいう態度をとっていたらいつの間にかそう呼ばれるようになっていたのでもう日常茶飯事である。別に同年代のくだらない話なんて生産性が無いので困りはしない。
「………はぁ」
俺はため息をついて、机を元の位置に戻した。
◆◆◆
6限の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。中学とは違って帰りのホームルームは無いので、俺はさっさと帰宅の準備をした。用意ができたので立ちあがろうとした瞬間に何者かに声をかけられた。
「成神くんさっきはごめんね?大丈夫だった?」
目の前を見れば俺の机にぶつかった張本人である守崎佳子が眉をハの字にして申し訳なさそうにしていた。
「別に気にして無い。……逆に怪我は無い?結構な勢いで突っ込んでたけど?」
「……?私は大丈夫だけど。……もし良かったらこの後お詫びに何か奢りたいな!良い?」
彼女は先ほどとは一転して花のような笑顔を浮かべて首を傾げた。
「そういうの間に合ってるから。他に何かある?無ければ帰るけど」
俺はため息をつきそうになるのを堪えて言葉を紡いだ。彼女はそれを悪く受け取ったのだろう、またもや表情は一転した。
「あっ、うん。それだけだけど……」
「そう」
俺はその一言だけを残して教室を後にした。
「あっ!成神くん!」
守崎佳子の焦っている声が聞こえたが、俺は振り返ることはせずに帰った。
-次の日-
俺が教室に入った瞬間にある人物に話しかけられた。
「おはよう成神くん!昨日はごめんね。お詫びにクッキー作ってきたんだ!」
彼女はそう言いながら花柄の可愛い包みを俺の前に出してきた。意外と気にしていたのか、ミスったな。
「気にして無いって言ったよね?たかだか机にぶつかったくらいで………」
「私が気にするの!ほら受け取って?」
彼女は上目遣いで俺のことを見つめてきた。こいつは150cmあるかないかぐらいの低身長なのでそういう顔をされると虐めている気分になる。決してそういう趣味がある訳では無いと言っておこう。
「まぁ、これでチャラって事で」
俺はそう言いつつ受け取った。
「ふふっ」
何故かニコニコ笑顔で笑っている。
「どうした?」
「いやー。成神くんって意外と優しいんだなぁって!」
俺が?優しい?コイツは何を言ってるんだ?
「守崎さんってマゾ?」
「違うよ!?!?……だって気にしてないとか、私の心配とかしてくれてたじゃん。それって私が負い目を感じてるって思って言ってくれたって事でしょ?」
そう言われた瞬間、ほんの少しだけ恥ずかしくなって目線を逸らした。
「そんなんじゃねぇよ」
「あー!誤魔化したなー!?」
彼女はその場で俺の顔を確認しようとぴょんぴょんと跳ねた。
(チッ。コイツと喋ると調子が狂う)
俺はそのまま席に着いた。
「ねぇねぇ。折角だから感想聞きたいなぁ」
机の下からちょこんと顔を出しているロリっ子が居た。
「まぁ、一つくらいなら」
俺は包みを開けた。すると中には綺麗な花弁の形をしたクッキーがいくつも入っていた。その中の一つを手に取って口に運んだ。食べるとサクッという気持ちのいい音と共に香ばしい匂いが鼻を抜けた。
「……美味い」
俺は自然とそんな事をを口にしていた。気づけば二つ目を口に運んでいた。
「良かった〜。口に合わなかったらって思ってたけど………ふふっ」
「何笑ってんだ?」
目の前のロリはやけにニヤニヤしていた。
「成神くんってそういう嬉しそうな顔も出来るんだーって思っただけだよ」
(俺って嬉しそうな顔してんのか?自分じゃイマイチ分からん。)
周りを見てみれば物珍しいものを観察するような目線がいくつも俺に向けられていた。
「……ごちそうさまでした」
そんな事をしていたら完食していた。
「ふふっ。嬉しいなぁ……ねぇねぇ?もっかい作ってきてあげようか?」
「今回はお詫びの形で受け取ったんだ。次は受け取れない」
「えー?友達としてじゃダメ?」
彼女はむーっと言ってジト目になった。
「まぁ……考えてやらん事もない」
「やった」
俺がそう言うと彼女は小さく笑った。
「じゃあまたね、成神くん」
彼女はそれだけ残して席へ戻って行った。
-守崎佳子視点-
「佳子ちゃん、ついに成神くんまでいったの?」
サキナは呆れたように言ってきた。
「うん。負けたくないしね。丁度接点が作れたからラッキーって感じかな?」
「このロリ。意外と肉食」
華恵は眠そうにしながら失礼な事を言ってきた。しょうがないじゃん。だってゲームに負けたく無いし。
私たちがやっているゲームとは誰が高校内で一番告白されるかというもの。他校からは無し。同じ人からは無し、最初に告白された時だけカウントする。期限はこの2年生までだから残り半年といったところだろうか?罰ゲームは人数が一番多い人が決めることになっている。
「ねぇ?そろそろ全員で人数公開しない?」
「確かにアリ!」
「良いけど、後悔しないでね?」
それぞれが己の数に自信があるためここだけ異様な空気になっている。
「じゃあ行くよ〜?せーの……」
「「「122!!!」」」
「「「え???」」」
私たちは固まった。そんな奇跡あるのだろうか?
「え?サキナと華恵も同じなの?すごい偶然だね?」
「むぅ。私が一番だと思ってたのにー!」
私とサキナは悔しさを表現していたが華恵は違った。何故か動揺していた。
「ねぇ二人とも。この学校の男子が全員で何人いるか知ってる?」
華恵は声を震わせながらそんな事を言ってきた。私は腕を組んで考える。
「うーん。確か……全校生徒が700無いくらいで、男子がちょっと多めなイメージだから400くらい?」
私は頭を悩ませて結論を出したが華恵はゆっくりと頭を左右に振った。
「367人。この学校の男子生徒は全員で367人。この意味が分かる?」
「おー!さっすが華恵!生徒会なだけあるね!」
サキナは呑気に感想を述べていたがそんな言葉は耳に入らなかった。
「え?待って。私たち全員は122人から告白されて?それを足したら……」
私は恐る恐る言葉を紡いだが、最後は華恵に言われる事になった。
「うん。私たちの勝敗はあの成神くんが誰に告白するかで決まるって訳」
そんな事があるの?私たちは既に学校の男子生徒ほぼ全員から告白されていたの?
「マジ?」
「大マジ。サナキ、私たちも見ているだけじゃいられなくなったよ」
私たちは一斉に静かになった。
(落ち着け私。この中では唯一成神くんと接点がある。つまり現状は優勢だ)
(マジか〜。佳子ちゃんに先越されたな〜。まぁでもなんとかなるっしょ)
(成神くんがどんな子がタイプか調べないと)
それぞれ思惑はあるだろう。
しかし狙う場所は同じである。
「「「絶対負けないから」」」
成神瑛太くん。可哀想だけど……負けたくないし、私たち可愛いから許してくれるよね?
小説家になろうの初投稿です
カクヨムでも同じペンネームで掲載してるのでぜひそちらもチェックしてみてください!




