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神授のアサシン ~ジョブが人生を決める世界で、誰も知らないジョブを授かった~  作者: 茜 南峰


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第25話 「戦闘鍛治士」

 特級校舎の一角から、金属を打つ乾いた音が響いていた。


 渡り廊下を歩いていたアカメは足を止めた。昨日は自分のジョブを調べたが、今日は幼馴染のヴァルが授かった《戦闘鍛治師》を研究する予定だ。


「……もう作業してるのかな」


 音のする方へ歩き出しかけたところで、背後から明るい声が飛んできた。


「おーい、アカメ! こっちだ!」


 振り返ると、ルカが大きく手を振っていた。その隣には作業用の手袋を持ったヴァルもいる。音の主は別の工房にいるらしく、ヴァルはアカメが見ていた方へ一度だけ目を向けた。


「何だ、また鍛冶の音を聞いてたのか?」

「うん。ヴァルが先に始めてるのかと思った」

「俺の工房はもう少し先だ。今日は先生たちと調べるんだろ。勝手に始めるわけないだろ」

「それもそうだね。待たせてごめん。先生に《隠密》のことで質問してたんだ」

「またスキルか! 俺も授業が終わったら剣を振りたくて仕方ないけどな!」

「それも十分熱心だと思うよ」


 三人で歩き始めると、ヴァルは試験用の材料を揃えておいたと教えてくれた。普段より少し足が速い。


「ヴァル、結構楽しみにしてたんだ?」

「自分のジョブだぞ。何ができるか、知りたくないわけないだろ」

「俺も見たいなあ。戦える鍛冶屋って、すげえ面白そうじゃん!」

「お前は訓練場の予約があるんだろ。終わったら来ればいい。ただし、工具には勝手に触るなよ」

「分かってるって! じゃあ、またあとでな!」


 ルカを見送り、二人は研究棟へ向かった。


 ―✧―◇―✧―


 《ジョブ史・記録研究室》は、昨日と変わらず書類の山に埋もれていた。リゼットが机に記録用紙を並べている。


「こんにちは、アカメ。ヴァルさんも、今日はよろしくお願いします」

「こちらこそ。調べてもらえると聞いた。助かる」

「私も楽しみにしていました。《戦闘鍛治師》は、記録だけでは分からないことが多いですから」

「昨日の研究が終わってから、もうヴァルの資料を読んでたの?」

「少しだけです。……気づいたら、思ったより時間が経っていましたけど」

「それ、少しだけって言わない気がするな」


 ハロルドが広げた資料には、《鍛治師》《魔導鍛治師》、そして《戦闘鍛治師》と記されていた。


「まず確認しよう。《鍛治師》は道具や武具を作る生産系のジョブで、《魔導鍛治師》は魔力を使った加工にも適性がある。ただし、君の《戦闘鍛治師》を、その二つに戦闘能力を足しただけのものと考えるのは早いね」

「俺も、そこがよく分からなくて。普通に鍛冶をする時と、武器を握っている時で、スキルの感覚が違うんです」

「今日はその違いも確かめよう。神授祭で確認されたスキルは六つだったね」


 記録には、《鑑定》《素材理解》《鍛造》《付与》《戦場加工》《修復》の名が並ぶ。


「全部、物作りに関係ありそうだね。でも《戦場加工》だけ、ちょっと変わってる」

「ああ。そもそも、俺は戦うのが得意なジョブなのか、作るのが得意なジョブなのか、その両方なのかも分かってない」

「でしたら、一つずつ実際に確かめましょう。何ができるかだけでなく、どこまでできるかも知りたいです」


 試験は本人の同意を得て行い、戦闘には専門の教官が立ち会うことを確認してから、ヴァルが席を立った。


「じゃあ、工房へ案内します。材料も、そっちに揃えてありますから」


 ―✧―◇―✧―


 《特級生専用工房 第七室》には鉄と炭の匂いが漂い、工具は種類ごとに整頓されていた。


「こんなに道具があるのに、きちんと整理されているんですね」

「使いたい時に探してたら、作業になりませんから」

「ハロルド先生の研究室とは大違いですね」

「……リゼット、それは今言わなくてもいいだろう」


 ハロルドが苦笑する横で、ヴァルは布に包んだ小さな金属片を取り出した。黒ずんだ表面には青い筋が走り、アカメには何の金属なのか見当もつかない。


「これは?」

「先生に頼んで、俺が見たことのない素材を一つ用意してもらった。先に答えを知らない方が、試しやすいだろ」

「なるほどね。ではヴァル、《鑑定》を使ってみてくれるかな」


 ヴァルが金属片に触れると、金属の配合、内部の亀裂、熱への弱さ、魔力を通した時の性質まで次々と言い当てた。


「……触っただけで、そんなに分かるの?」

「俺も驚いてる。初めて見るものなのに、情報が頭へ入ってくるんだ。名前を知らなくても、何でできているか、どこが傷んでいるかは分かる」

「今の説明は、別に保管していた検査記録とも一致しているよ」


 ハロルドの検査記録にも一致し、指摘された場所には肉眼では見えない亀裂が確認できた。


「普通の観察や道具の検査だけでは、ここまで短時間に調べられません。《鑑定》というスキルの中でも、かなり珍しい働きだと思います」

「……じゃあ、知らないものでも詳しく分かるんだね」

「ああ。ただ、分かった情報をどう使うかは別だ。初めて見る構造のものなら、加工する腕まで勝手に身につくわけじゃない」


 ヴァルは金属片を置き、もう一度ハロルドへ目を向けた。


「この力、人にも使える気がするんです。試してもいいですか?」

「まずは本人の許可が必要だね。アカメ、君に試しても構わないかな?」

「うん、いいですよ。ヴァルなら平気です」


 ヴァルが《鑑定》を向けると、年齢や過去の出来事ではなく、足の運び方や身体の重心、どんな間合いで戦うのに向いているかが分かった。短剣で素早く距離を詰めたり離れたりする動きに適性がある一方、重い武器を振り続ける戦い方とは相性が悪いらしい。


「人の秘密が見えるんじゃなくて、戦い方が分かるのか……」

「そうみたいだ。得意そうな武器や、力が入りやすい姿勢まで浮かぶ。でも、次に何をするかまで分かるわけじゃない」

「鍛冶のための《鑑定》なら、使い手を知る力としても説明できますね」


 武器と使い手、その両方を知るための《鑑定》なのだ。


 ―✧―◇―✧―


「次は《素材理解》だね。《鑑定》とは何が違うんだい?」

「同じ素材を見てるはずなのに、考えることが変わるんです」


 ヴァルは先ほどの金属片へ再び手を伸ばした。今度は材質や亀裂の情報ではなく、どんな形に加工すれば力を活かせるかが浮かんでくるという。


「この金属は、薄く長い刃にするより、小さな留め具か魔力を通す部品に向いてる。刃にしても欠けやすいけど、別の金属と合わせれば魔導具の芯に使えるみたいだ」

「素材の詳しい情報を知るのが《鑑定》で、その素材を何に変えるべきか教えてくれるのが《素材理解》なんだね」

「はい。武器だけじゃないです。防具や道具の方が向いてる素材なら、そっちが浮かぶ。だからって、何も考えず作れば成功するわけじゃないですけど」


 アカメにも、二つの役割の違いが分かってきた。


 続いてヴァルは《鍛造》を実演した。炉で熱した金属を金床に置き、魔力を通しながら槌を振るうと、力の掛かる位置が自然と分かり、端に残っていた歪みが整っていく。だが、火も工具も必要で、材料の分量を間違えれば出来上がるものも不格好になる。


「《鍛造》は作業を助けてくれる。でも、金属を勝手に剣へ変えてくれるわけじゃない。熱し方も叩き方も、自分で考える必要がある」

「技術が要らなくなるわけじゃなくて、身につけた技術を活かしやすくなるんですね」

「そういうことだ。だから、俺は鍛冶そのものも覚えたい」


 ヴァルは仕上がった金属を満足そうに眺めた。そんな彼へ、ハロルドが次の質問を向ける。


「《修復》はどうかな。こちらも作業の補助なのかい?」

「……いや、こっちは少し違います」


 ヴァルが取り出したのは、刃先が欠け、柄の留め具も緩んだ訓練用の短剣だった。工具を手に取ることなく両手で包み、直したい部分を思い浮かべて魔力を流す。すると欠けた刃先が淡い光に包まれ、金属がゆっくりと形を戻した。続けて留め具も締まり、見た目だけなら使える短剣に戻っている。


「えっ、道具を使わずに直った!」

「ああ。《修復》なら、どこをどう戻したいか考えて魔力を込めれば、ある程度は直せる。ただ、これで完成ってわけじゃない」


 だが、リゼットが魔導器具で確かめると、修復部分の強度は元の刃より低く、わずかな歪みも残っていた。


「なるほど。道具なしで修復できる一方で、仕上がりは本格的な修理に及ばないわけだね」

「魔力も使いますし、失った材料までいくらでも増やせるわけじゃありません。長く使うなら、あとでちゃんと直した方がいいです」

「でも、外で武器が壊れた時にはすごく助かりそうだね」

「ああ。直す時間が取れない時のための力なんだと思う」


 ヴァルは短剣を置き、未加工の木片と金属片を取り出した。


「で、問題は《戦場加工》だ。こっちは道具も炉も使わずに、武器を作れる気がする」


 ―✧―◇―✧―


 四人は炉も金床もない隣の試験区画へ移り、ヴァルは手持ちの金属棒と木片だけを取り出した。


「これだけで武器を作れるの?」

「試してみる。余計な魔力を使わないように、まずは小さいものからだ」


 ヴァルが短槍の形を思い浮かべると、魔力に包まれた二つの素材が軋みながら変形した。数呼吸の後、粗い穂先の付いた槍が手に残った。


「……できた!」

「うわ、本当に道具なしで作れたんだ!」

「時間を掛けずに武器を形にする。《戦場加工》という名前にも合っていますね」


 しかし、ハロルドが用意した標的へ試しに突き立てると、二度目の衝撃で穂先の根元がわずかに歪んだ。ヴァルは槍を引き抜き、表面を確かめて眉を寄せる。


「……やっぱり、弱いな。材料も加工の仕方も間に合わせだ。きちんと鍛えた槍なら、こんな簡単に曲がらない」

「でも、武器を失った時に、持ってる素材で次の武器を作れるってことだよね?」

「ああ。それが一番の使い道だと思う。素材がなければ作れないし、元の材料以上の量が突然増えるわけでもない。攻撃力も耐久性も、本格的に作ったものには届かないけどな」


 工具を広げられない戦場でも、手持ちの素材から武器を作れるのだ。


「さっきの《修復》と合わせれば、少し長く持たせられるのかな」

「多分な。でも、弱いものを何度直したって、最初から丈夫なものになるわけじゃない。そこは勘違いしない方がいい」

「道具のない場所で《戦場加工》を使い、傷めば《修復》で繋ぐ。時間を確保できた時に《鍛造》で作り直す……六つのスキルが少しずつ結びついてきたね」


 ハロルドがそうまとめると、ヴァルは短く頷いた。残る《付与》の働きも、素材の加工に関わっているらしい。


 工房へ戻ると、《付与》を施した金属板が魔力に反応して温まった。別の板は光が途中で途切れた失敗作だという。


「《付与》は、素材に元々ない働きを持たせる力だ。ただ魔力を流すだけじゃなくて、その働きを残すための通り道を作る感じだな」

「じゃあ、炎が出る剣とかも作れるの?」

「材料と作り方次第だろ。でも何でも好きに付けられるわけじゃない。効果を強くすれば素材に負担が掛かるし、使ってるうちに働きが弱まることもある」

「今は一つの素材に複数の働きを安定して持たせるのも難しいんですよね」

「ああ。無理に重ねると、魔力の流れがぶつかって壊れる。もっと上手くなれば違うかもしれないけど、今の俺には一つで精いっぱいだ」


 六つの力は、武器を知り、作り、使い、直す仕事へと繋がっていた。


 ―✧―◇―✧―


「ここまでは、生産に関わる働きが中心だったね。けれど、《戦闘鍛治師》には、もう一つ確かめたいことがある」


 神授祭の判定記録には、生産への適性だけでなく、ヴァルの身体能力と戦闘時の魔力に高い補正があると記されていた。


「……これ、俺にもあるんですか?」

「あるようだね。鍛冶に特化したジョブなら、戦闘の補正は小さい例が多い。でも君は、単に武器を作れるだけの人ではないらしい。実際の動きも見て確かめよう」


 ちょうど訓練を終えたルカが合流し、一行は特級生用の訓練区画へ向かった。実技担当の教官に許可を取り、ヴァルはルカにも《鑑定》を使用することを説明した。


「俺の戦い方が分かるのか? 面白そうじゃん! いいぜ、試してみろよ!」


 二人は刃を潰した訓練用の剣を手にする。安全のために攻撃の強さを抑え、決められた範囲で打ち合うことになった。


「待ってたぜ! ヴァルと剣を合わせるの、久しぶりだな!」

「言っとくけど、俺はお前みたいに剣ばっかり振ってるわけじゃないからな」

「分かってるって。でも、遠慮はしないぞ!」


 ルカが踏み込むと、ヴァルはその一撃を受け止めた。続く斬り返しにも素早く反応し、重心を崩さず剣を返す。アカメは思わず身を乗り出した。以前から腕力はあると思っていたが、今の動きはそれだけでは説明できない。


「……ヴァル、結構動けるんだね」

「本人も驚いているかもしれません。剣を扱う時に、身体へ魔力が集まっています」


 リゼットの見つめる測定器には、剣を構える前とは異なる反応が記録されていた。


 ヴァルが《鑑定》を使うと、ルカが得意とする間合いや身体の使い方が浮かび上がった。だが、次にどこを攻撃してくるかまでは分からない。剣を構える間にも身体へ魔力が巡り、普段より踏ん張りが利いていることを実感した。


 しかし、剣術そのものではルカの方が上だった。


 数度打ち合ったところで、ルカの訓練剣がヴァルの肩先へ届いた。


「一本! ……って、ヴァル、思ったよりずっとやるじゃん!」

「負けたけどな。……それでも、前より身体が動いてるのは分かった」

「戦闘に高い適性があっても、技術や経験まで同じになるわけじゃないからね。ただ、S級の生産系ジョブとしては、珍しいほど戦うための補正が大きいと考えてよさそうだ」


 ヴァルは剣を返し、息を整えた。


「戦わないと使いこなせない力が、俺にもあるってことか……」

「そういうことかもしれませんね。しかも、戦う意味はそれだけではなさそうです」


 リゼットが開いた希少な発現例の記録には、自ら戦って持ち帰った素材で作った武具に、通常以上の強化が生じたとあった。


「……それって、戦って手に入れた素材の方が、いい武器になるってこと?」

「報告ではそう読めます。ただ、戦闘に参加しただけなのか、相手を自分で倒す必要があるのか、記録だけでははっきりしません」

「だったら、確かめましょう。俺も、自分で倒した魔獣の素材を使ってみたいです」


 幸い、特級生用の実習区画では、教官の監督下で低位魔獣との訓練が行われていた。ハロルドが担当教官へ事情を説明し、ヴァルの参加が認められると、一行は実習区画へ向かった。


 ―✧―◇―✧―


 実習区画の小型の角持ち魔獣へ、ヴァルは片手剣を構えた。《鑑定》には、飛びかかる時に前脚へ重心を寄せる動きが浮かぶ。


 魔獣の突進を横へ避け、ヴァルは距離を取って剣を振るう。次の踏み込みで急所を捉え、魔獣を仕留めた。


「……やった!」

「よし! 今のはいい動きだったぜ!」

「大声出すな、ルカ。まだ息が整ってねえんだよ」


 教官の確認後、ヴァルは角を回収した。比較用には、学園で保管していた同種の角を使う。


 工房へ戻り、《鑑定》で二つの角の品質が近いと確かめる。《素材理解》によれば、どちらも硬さを活かした短い突き刺し用の刃に向く素材らしい。ヴァルは工具で削り、同じ長さの試験用の刃を二本作ることにした。


 学園の角を加工した後、自分で得た角へ魔力を通すと、素材の内側に見慣れない光が生じた。


「……何だ、これ」

「ヴァルさん、魔力の反応が変わっています!」


 同じ工程で完成させた二本を比べると、自分で得た角の刃だけ、先端の強度と標的への貫通力に明らかな強化が見られた。


「……同じ種類の素材なのに?」

「しかも、加工中の魔力の通り方が違いました。ただ、素材そのものの個体差も考えられるので、もう少し比較が必要ですね」

「自分で倒して手に入れたから、なのか……」


 ハロルドは一度の比較で全条件を証明できないと念を押した。


「ただ、君の《戦闘鍛治師》が、戦って得た素材を加工する時に特別な強化を与えるという見方は、かなり有力になった。これは六つのスキルのどれかが増えたというより、ジョブそのものに備わる働きなのかもしれないね」

「戦って素材を手に入れて、その素材で強い武器を作る……。だから《戦闘鍛治師》なんだ」

「まだ全部の条件が分かったわけじゃない。でも、俺が戦うことにも意味があるってのは、分かった気がする」


 ヴァルは二本の刃を箱に収めた。良い武器を作るために、自分で戦うことにも意味がある。


 ―✧―◇―✧―


 夕暮れ頃、ハロルドは六つの働きを記録にまとめた。《鑑定》は物や戦い方を知り、《素材理解》は適した用途を見極める。《鍛造》は加工を助け、《付与》は新たな働きを持たせる。《修復》は魔力で手早く直し、《戦場加工》は手持ちの素材から即席の武器を作る。


 さらに高い戦闘補正と、戦って得た素材への強化がある。二つの道が一つに繋がった。


「……すごいジョブだね、ヴァル」

「まだ全部使いこなせるわけじゃない。即席の槍だって、すぐ曲がっただろ」

「でも、何を練習すればいいか分かったじゃん」

「……ああ。そこはでかいな」


 ハロルドとリゼットが記録を持って研究棟へ戻ると、アカメはヴァルの片づけを手伝った。道具を元の位置へ戻している時、腰に下げた短剣が作業台に触れ、小さな金属音が響く。


「……アカメ、その短剣、ちょっと見せてくれ」

「これ? 父さんにもらったやつ?」

「ああ。前から、柄の重さが気になってたんだ」


 ヴァルは鞘ごと受け取り、刃を抜いた。父ロンドからもらった短剣には、長年使われてきた跡が残っている。重心を確かめながら、握る位置を変えた。


「……これ、面白い造りだな。狩猟用の形なのに、持ち替えても収まりがいい。ただ、今のお前の手には少し柄が重いかもしれない」

「直した方がいい?」

「急に変えない方がいい場合もある。でも、戦い方が変わってきたら、柄だけ作り直すって手もある。刃は残したままでな」


 父からもらった大切な刃は残したいが、ヴァルなら、いつか柄の改修を頼めるかもしれない。


「ところで、これを作ったのは誰なんだ?」

「そういえば、聞いたことないな。父さんが使ってたやつなんだけど」

「今度、手紙で聞いてみてくれないか。どういう考えで作ったのか、ちょっと気になる」

「うん。書いてみるよ」


 ヴァルは短剣を鞘へ戻して差し出した。


「それと、いつかもう少し詳しく調べさせてくれ。勝手に加工はしないから」

「もちろん。ヴァルなら安心だし」

「……随分あっさり言うんだな」

「だって、俺が大事にしてるって知ってるだろ? なら大丈夫だよ」


 ヴァルは少しだけ目を伏せ、それから口元を緩めた。


「……ありがとな」


 アカメが工房を出ると、ヴァルは記録用紙を引き寄せた。六つの働きは見えたが、鍛冶も戦闘もまだ技術が足りない。だからこそ、次に何を身につけたいのかも見えてきた。


 強い武器を作るために、自分で戦う。そして、戦って知ったことを次の武器へ活かす。これまで別々だと思っていた二つの道が、今日ようやく繋がったように感じられた。


「……面白くなってきたな」


 ヴァルは小さく呟き、用紙の最後にアカメの短剣のことを書き加えた。いつかあいつが望んだ時、父から受け取った刃を残したまま、今の戦い方に合った柄を作ってやりたい。


 夕日が工房を赤く染める中、ヴァルは次に作りたい武器の形を、ゆっくりと描き始めた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


今回はヴァルの《戦闘鍛治師》についてのお話でした!


六つのスキルに加え、戦闘能力への高い補正や、自ら戦って手に入れた素材への強化など、S級ジョブならではの能力が明らかになりました。


戦うことで、より強い武器を作れる。まさに《戦闘鍛治師》という名前にふさわしいジョブですね。


そして、アカメが父からもらった大切な短剣にも、少しだけ新たな可能性が見えてきました。


今後、ヴァルがどんな武器を生み出していくのか、楽しみにしていただけたら嬉しいです!


次回もよろしくお願いします!

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