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週末勇者とひも付き魔王様 ~前世で殺し合った相手と世界を救うことになった件~  作者: 浦賀やまみち
幕間

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第34話 曇天の玉座




「最近、日本での活動が芳しくないようですけど?」



 暗闇の中、私の隣には空の玉座。

 足元からの光に照らされ、玉座の前に六人が並ぶ。


 便利な世の中になったものだ。

 立体投影とネットワークの発達で、自宅にいながら世界中の連中と顔を合わせられる。


 つい十年前まで、こうはいかなかった。

 会議のたびに場所を決め、その都度、現地へ出向く必要があった。



「ちっ、うっせーな……。」

「全くよ。どうして御方は、こんな野暮ったい女に目をかけるのかしら?」



 私たちは、世界再構統制機関。

 意思を持たずに生きる者たちの上に、正しく力を持つ者が立つための組織だ。


 世界は間違っている。

 力なき者が世を動かし、力ある者がそれに縛られている。


 ゆえに、力ある元勇者たちが集い、強者による支配を是とする。

 家畜と成り下がった元勇者を排し、混沌をもって世界を再構する。それが私たちの使命だ。



「レッドもパープルもやめておけ。

 我ら曇天監査七席において、グレイが筆頭なのは御方が定めたことだ」

「イエローの言う通りだ。

 見た目や年齢など、我らには関係ない」

「そうは言っても、ホワイトさんよー」



 ここは、世界再構統制機関の最高幹部『曇天監査七席』が集う会合場。


 レッド、ブルー、イエロー、パープル、ホワイト、ブラック、グレイ。

 七色の名を冠する者たちに、人種や性別、年齢は無意味。


 価値を持つのは、力のみ。

 私は『グレイ』の名を与えられている。



「くふふっ……。」

「何がおかしい? ブルー!」

「無知が滑稽でね」

「何ぃっ!?」



 私たちが主と仰ぐのは、『御方』と呼ばれる存在。


 所在はおろか、名前すら明かされていない。

 分かっているのは、銀髪と翠眼を持つ、三十代後半ほどの外見のみ。


 だが、その年齢すら定かではない。

 聞くところによれば、この組織が生まれた1960年頃から、その姿は変わっていないらしい。



「ブラック、説明してあげたら?」

「今、俺のエリアで起きている戦争。

 あれは、最初からグレイの介入を前提に維持されている」

「嘘っ!? じゃあ、今の世界的な物価高って、グレイのせいなの?」



 もっとも、見た目に関しては、私も同様だ。


 どこにでもいる日本の女子高生。

 それも、クラスで埋もれる、いわゆる『陰キャ』だ。


 仕方がない。

 力を得た時点で、身体の成長は止まっている。


 一時は幻術で『陽キャ』を纏い、はしゃいで見せたこともある。


 しかし、どうにも性に合わない。

 疲れるので、すぐにやめた。



「そこに干渉してくるのが……。ヴァレンテスクだ」

「閃光の剣か! 一度戦ってみてえな!」

「ふっ……。先代レッドを超えてから口にしろ。

 お前では気づいたときには終わっている」



 見た目が変わらないというのは、不便だ。

 一か所に留まることができない。


 もっとも、この組織のおかげで戸籍の用意には困らない。

 高校の入学から卒業を一区切りに、私はアジア圏を渡り歩いている。



「……それほどなのか?」

「私ですら、避けるのが精一杯だ。

 そしてグレイは、あれに膝を付かせた」

「えっ!? グレイって、魔法使いじゃないの?」



 友人なんて出来るはずもない。


 親には見捨てられた。

 どうでもいい。とっくに墓の中に収まっているだろう。


 一人でいるのは、性に合っていた。



「くっくっくっ……。」

「イエロー、そう笑ってやるな」

「な、何よ!」

「なら、教えてあげる。

 グレイは魔法剣士よ。それも剣士寄りのね」

「二人は曇天監査七席に就いてから日が浅い。知らないのも無理はない」



 だが、そんな私を見つけてくれた人がいた。


 今のクラスメイトの国守くん。


 毎日、私に挨拶してくれる。大好き。

 それも、国守くんの方からだ。愛してる。


 だけど、私と国守くんの仲を邪魔するやつがいる。

 名香柚葉、飼いならされた豚の勇者だ。


 絶対に殺してやる。

 狭間に叩き込み、輪廻すら封じる。



「静粛に。御方がお見えです」



 ふと、空の玉座に気配を感じた。

 下らない会話を聞き流し、国守くんへの想いに浸るのは、ここまでだ。


 空気が、重くなる。


 先ほどまでのざわめきが嘘のように消え、誰一人として声を発しない。

 気づけば、全員が玉座へと意識を向けていた。


 踵を打ち揃え、姿勢を正す。

 一呼吸の後、玉座に御方が現れる。



「全ては、御方のために!」

「全ては、御方のために!」



 右掌を胸に当てる。

 それに続き、六人の声が重なり、同じ言葉が空間を満たした。



「一ヶ月ぶりか。報告を聞こう」



 御方は足を組み、気怠げに肘掛けに身を預けた。





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