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週末勇者とひも付き魔王様 ~前世で殺し合った相手と世界を救うことになった件~  作者: 浦賀やまみち
第四章 重なり合う現在と過去

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第29話 あと五歩




「金髪! 外人さんだぞ!」

「中学生かな? 高校生って感じじゃないよな」

「……可愛い。お付き合いしたい」

「あんな娘の噂、聞いたことないぞ?」



 教室を出ると、廊下は異様な空気に包まれていた。


 端から端まで、男子たちが群がっている。

 下らないと思いながらも、妙に気になった。



「国守ぃっ! お前は見るな!」

「そうだ! お前には、名香先輩がいるだろ!」



 窓辺に寄ろうとしたら、立ち塞がれ、そのまま後ろから羽交い締めにされた。



「ええい、鬱陶しい」

「のわっ!?」

「ぐえっ!?」



 身体を左右に振る。

 羽交い締めにしていた相手ごと、無理やり進路をこじ開ける。



「……ふん」



 窓辺へ進み、校門を見下ろす。


 東京ならともかく、この辺りではまず見ない金髪だ。


 容姿は悪くない。

 美人というより、可愛い系。


 背丈は低い。

 中学生だろうか。


 男どもが騒いでいる女子校は、中高一貫と聞いた記憶がある。


 しかし、何だろう。

 妙に、視線が離れなかった。



「こっちを見たぞ!」



 少女がこちらを見上げる。



「手も振った!」



 目が合うと、満面の笑みで大きく手を振ってきた。



「誰にだ!」

「きっと、俺だ! 俺!」



 その瞬間、悟った。


 髪の色も、瞳の色も違う。

 体つきも幼く、見慣れたグラマラスな彼女とはまるで別人だった。


 それでも、少女が誰なのかは分かってしまった。

 そういう『契約』だからだ。



「あれ? 国守、興味なしか?」

「まあ、名香先輩がいるもんな」



 校門へと歩き出す。

 背を向けたまま、ゲーム仲間に軽く手をひらひらと振った。




 ******




「……アホばかりだな」



 サンダルから靴に履き替え、昇降口から出る。

 校舎をちらりと見上げると、教室棟の二階から四階までの窓に、男どもが隙間なく並んでいた。


 そのため、校門までの道のりは、女子しかいない。

 時折、教室棟を見上げては、白けた眼差しを向けている。



「それにしても、同じ世界に転生していたとはな」



 両手に鞄を下げ、校門に寄りかかる少女。


 その周囲には、彼女を避けるように校門の右側にぽっかりと空間ができている。

 さらに、少し離れた位置には、場違いなほど派手なクリームピンクのリムジンが停まっていた。



「しかし……。」



 思わず苦笑がこぼれた。

 かつても、油断すれば俺の部屋はクリームピンクに侵食されていた。


 俺は、部屋の内装にこだわりはない。

 だが、魔王の自室がクリームピンクにまみれていては、様にならない。


 そのたびに、無言で家具を入れ替え、カーテンを剥ぎ取り、元の状態へと戻してきた。



「リムジンで、あの色……。相当な家だな」



 視線を戻す。

 少女がこちらに気づき、目を輝かせた。


 すぐさま駆け出そうとするが、右掌を突き出す。

 少女はぴたりと動きを止めた。



「くっくっくっ……。」



 その忠犬ぶりに、たまらず肩が震えた。


 俺の命令を守ってはいるが、居ても立ってもいられない様子だ。

 忙しなく足踏みをし、そわそわしている。



「こうして生身で会うのは、久しいな」

「魔王様!」



 あと五歩のところで声をかけると、少女は両手を広げ、駆け寄ってきた。


 久々の再会。

 これも魔王の務めかと、忠臣を迎えるべく、俺も両手を広げた、その瞬間。



「あん?」



 ドシン、と重い衝撃音が響いた。

 思わず立ち止まり、振り向くと、柚葉だった。


 どうやら、特別教室が並ぶ棟の三階から飛び降りたらしい。

 跪いて着地した柚葉の頭上を見上げると、窓が開いていた。


 柚葉は超高度から落下させても、『ちょっと足が痺れちゃった』で済ませる女だ。

 三階から飛び降りたくらいで、心配はしない。


 しかし、日頃から俺に『力は隠すように!』と、しつこいくらい念を押している。

 それが、自ら力を明らかにするとは何事か。



「ヒデええええええええええっ!?」

「ぐおっ!?」

「ま、魔王様っ!?」



 だが、文句を言う暇なく、真横からタックルを喰らった。

 そのまま柚葉に襟首を掴まれる。


 土煙を上げながら学校の前庭を越え、グラウンドへ。

 叩きつけられた衝撃で、金網のフェンスが凹む。



「あの女、誰! あの女、誰! あの女、誰!」

「や、止めろ!」



 あまつさえ、襟首を掴まれたまま、猛烈に揺さぶられる。

 金網のフェンスが悲鳴をあげ、俺の頭が突き破った。





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