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週末勇者とひも付き魔王様 ~前世で殺し合った相手と世界を救うことになった件~  作者: 浦賀やまみち
第四章 重なり合う現在と過去

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第28話 放課後、嵐の予兆




「そういえば、知ってるか? 5のリメイクの話」

「見た見た。公開された動画、完全3Dだったな」



 この街へ引っ越して、三か月半が過ぎた。


 期末テストも終わり、夏休み目前。

 放課後の教室はどこか気が抜け、終礼が終わってもざわめきが残っていた。


 呼んでもいないのに、俺の周りに集まってきたのはゲーム仲間だ。

 そのうちの一人が、スマホの画面を軽くこちらに向けた。



「ふっ……。やるからには、最高だ」



 椅子にもたれ、腕を組む。

 動画では、ドラゴンなクエストのいくつもの静止画が、紙芝居のように流れてゆく。


 キャラクター、街並み、マップ、戦闘シーン。

 どれも、完全な3Dで描かれている。


 俺は、満足げに笑みをこぼし、うんうんと頷いた。



「なんで、お前が偉そうにするん?」



 呆れたように眉をひそめられた。



「偉そうではない。偉いのだ」



 俺は、胸を張って、言い切る。


 ドラゴンなクエスト5の新作リメイク。

 北陸方面帰還者対策室への、父親の誘い文句。


 その正式な内示を知らされて以来、俺は少しだけ協力的になった。

 以前は『呼ぶな』と言っていたが、今は『まあ、困ったら呼べ』と言ってある。


 報酬の半分も、制作費に投資している。

 煩わしさは増えたが、神作を生み出すためには仕方がない。



「相変わらず、訳わからん」

「声優、誰になると思う?」

「誰もが納得する人選……。完璧だ」



 無論、出資者の一人として、口は出させてもらった。


 フルボイス化にあたり、俺の嫁のイメージと違っていては意味がない。

 これだけは、絶対に譲れない。



「お前は、審査員かってーの」

「じゃあ、ビアンカは誰になると思う?」

「知らん。どうでもいいから、一任した」



 俺の嫁が3Dとなり、走って、戦って、喋る。


 胸が踊る。

 今から楽しみすぎて、ドラゴンなクエスト5の再走を最近はやっている。



「お前の、その熱いフローラ推しは何なの?」

「よし、帰りにファミレスへ寄るか。

 家には、夕飯はいらないって電話しておけ」



 いや、それだけでは足りない。

 語りたい。思う存分、語りたい。


 俺は立ち上がり、机に掛けてあるスクールバッグを肩に担ぐ。



「最近、リッチだよな。またいいのか?」



 金の心配は要らない。


 なにしろ、今の俺は父親より高給取りだ。

 俺の嫁を布教するための資金なら、いくらでも出せる。

 ファミレス程度の代金など、たかが知れている。



「いや、駄目だろ。

 俺、嫌だぜ? 名香先輩に、また無言でじーっと見られるの」

「確かに、あれはきつかった」



 問題は、柚葉だ。


 あいつ、学校では仲を隠そうと言っておきながら、ぐいぐい来すぎる。

 最近、変な言いがかりをつけてくる男どもが減ったのは歓迎するところだが。



「……だ、大丈夫だ。も、問題ない」



 しかし、今日の柚葉は委員会の会議があると言っていた。


 俺は自由だ。

 昼食時に『待っててね!』と言っていたような気がするが、気のせいだろう。



「声が震えてますよ? 旦那さん」

「旦那ではない」

「いい加減、認めろよ。ほぼ公認カップルなんだしさ」



 さっさと帰るに限る。

 そう思った瞬間、どこかで椅子を蹴って立ち上がった音がした。


 思わず振り向くと、出入口の扉そばの席に座っている眼鏡の女子だった。

 何やら深く俯いたまま、立ち尽くしている。



「むっ、また明日な」



 彼女は、俺が転校初日に校門で挨拶をしてきたやつだ。

 見知らぬ相手に、ただ目が合っただけで。


 その勇気に敬意を表し、俺は朝と帰りに彼女へ挨拶するのを日課にしていた。



「は、はい! ま、また明日!」



 彼女は小さく頭を下げ、そのまま教室を駆け出していった。


 いつも不思議に思う。

 普段、彼女は人と滅多に話さず、声も小さい。


 それなのに、俺との挨拶だけは、半ば叫ぶように声が大きくなる。



「国守……。ほんと、いい加減にしろよな」

「……だな。期待させるなって」

「あん?」



 ひそひそとした非難の声。

 俺が眉を寄せた、その時だった。



「みんな、来てみろよ!

 隣町の女子校の子が、校門に立っているぜ! しかも、金髪だ!」



 帰ったはずのクラスメイトが血相を変えて舞い戻ってきた。


 一瞬、教室が静まり返る。

 次の瞬間、俺を除いて、男子どもが我先にと廊下へ駆け出していった。





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