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週末勇者とひも付き魔王様 ~前世で殺し合った相手と世界を救うことになった件~  作者: 浦賀やまみち
第三章 世界の一端

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第24話 親子証明




「……ということは、柚葉ちゃんとはもう二十年以上も?」

「正確には、二十五年くらいだな」



 俺は語った。


 元勇者だったこと。

 転生を幾度も繰り返していること。

 世界に絶望し、神を呪い、魔王を七度繰り返してきたこと。



「もう夫婦というか……。私たちより長いわね」

「実際、前の異世界では、夫婦として過ごしていた」

「……朝帰りも当然かしら」



 今生では知識を蓄え、平和に過ごすと決めていたこと。

 だが、柚葉に捕まってしまったこと。


 土曜の午後五時、異世界へ召喚されること。

 それを既に四度繰り返していること。



「じゃあさ、そっちのスケルトンさんだけど……。」

「こいつが、どうかしたか?」

「もしかして……。

 前の家の周辺で下着ドロが出没してた頃、私のこと守ってくれてた?」

「ああ、こいつの手柄だ」

「犯人が言ってた骨って、あなたのことだったのね。

 ありがとうございます」



 異世界で何年過ごしても、この世界では一瞬に過ぎないこと。

 二十五年、柚葉と同じ時の中を歩んできたこと。


 全て語った。



「今はこんなナリだが、元王女だ」

「……柚葉ちゃんにちゃんと紹介した?」

「不眠不休のアンデッドは便利だ。

 異世界では、何度も警備を担わせている」



 壁時計を見ると、八時五分前。

 どうやら、予定通りに済ませられた。


 だが、柚葉の分も合わせて、俺の貴重な時間を三時間も奪われた。


 常日頃、十一時には寝ている。

 風呂の時間を考えたら、あと二時間半しかない。


 どう考えても、不満が残る。

 こうなったら、睡眠を不要化する魔法を使うしかない。



「違う、違う……。元王女ってところ」

「あん? 必要か?」

「そうやって、死んだあとも一緒にいてくれるんだから……。」

「そういう契約だからな」

「あなたが懇意にしていた女性じゃないの? 結婚していたの?」

「いや、ただの情婦だ」



 その前に、スケルトンを送還しておこう。

 何やら不満そうに、歯をかちかちと鳴らしている。


 ぱちり、と指を鳴らす。

 スケルトンは一瞬で、闇の粒子となって消える。


 静かになった。



「い、今、息子の口から、信じられない言葉を聞いた気がする。

 ……こ、これが魔王なの?」

「魔王だと、何度も言っただろうが」

「あなたも何か言ってやって」

「んっ!? ……ああ、そうだな。何の話だ?」



 早速、部屋に戻りたいところだが、残念ながらそうはいかない。

 俺の過去を語る過程で、一つ問題が浮上していた。




 ******




「ふっ……。父さん」

「な、何だ?」



 父親が落としていた視線を跳ね上げる。

 肩がびくりと震え、その表情には明らかな動揺が浮かんでいた。



「当ててやろうか。今、何を考えているか」



 俺は口の端をわずかに吊り上げ、言葉を続ける。



「目の前の男は、本当に自分の息子なのか、だろ?」

「なっ!? あなた!」



 母親が声を荒げ、父親は口を開きかけ、そのまま固まった。



「まあ、そう怒ってやるな。

 自分で子どもを産める女と違って、男にはいつまで経っても実感がない。

 あるのは、月日が積み重ねた確証だけだ」



 淡々と告げると、母親の顔がさらに歪む。



「だからって!」

「これはな、男も女も経験した俺だから分かる実感だぞ」

「……ひょっとして、出産も?」



 一呼吸の間を置き、母親の表情から熱がすっと引いた。



「さっき『傾国の悪女』と呼ばれていた、と言っただろ。

 権威を得るには、子を作るのが一番手っ取り早かったからな」

「ま、また息子の口から、信じられない言葉を聞いた気がする。

 だ、第二王子だったっけ? あ、愛してはいなかったの?」



 俺が肩を竦めると、母親は目を右手で覆った。



「愛など、幻想だ。脳内物質が生み出す、ただの快楽に過ぎん」

「……柚葉ちゃん、大丈夫かしら?」



 おまけに、深々とため息をつかれた。

 理解不能だが、今はそれよりも優先することがある。



「さて、答え合わせだ」



 俺は指を軽く鳴らした。



「ブラッド・ブレス」



 キーワードを告げた瞬間、全身に力が漲る。

 その効果は、父親と母親にも及んだ。



「こ、これはっ!?」

「な、何なの……。」



 見た目には変わらない。


 だが、内側での変化は確かに感じるのだろう。

 父親と母親は目を見開き、目の前にかざした両手を、何度も開いたり閉じたりしていた。



「面白いだろ?

 ある王族の決戦用の秘術でな。血族を対象に、超人的な力を引き出す」



 俺は喉の奥で、くつくつと笑った。


 その言葉に意味を理解したらしい。

 父親は見開いたままの目で、俺へと視線を跳ね上げた。



「つまり、俺たちが親子である証明だ」



 静寂が満ちる。


 母親が、そっと父親の腿を揺すった。

 父親が、ゆっくりと頭を下げる。



「……すまない」

「間違っているぞ。謝るのは、俺じゃないだろ?」

「ごめん……。」

「ううん」



 一つだけ、言い忘れていたことがある。


 この魔法は、生存本能と強く結びついている。

 つまり、副作用として、種族保存の衝動を刺激する。


 だが、それによってさっきまでのわだかまりは、多少は解消されるはずだ。


 実に、いいことをした。

 俺は親孝行な息子だ。


 今なら、柚葉を満足させる自信がある。

 しかし、その前に俺が満足しなければならない。



「さて、問題は解決したな。

 ゲームをするから、風呂の準備ができたら教えろ」



 最優先は、ゲームだ。

 俺は意気揚々とソファーから立ち上がった。



「待て! 話はまだ終わってない!」

「くっ!? まだ何かあるのか!」



 次の瞬間、父親が腰を浮かせ、開いた右掌を突き出す。

 どうやら、俺の貴重な時間の浪費は、まだ続くらしい。





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