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週末勇者とひも付き魔王様 ~前世で殺し合った相手と世界を救うことになった件~  作者: 浦賀やまみち
第三章 世界の一端

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第23話 俺は魔王だ




「ふぅ……。」



 丼と箸を置き、人心地を付く。

 美味かった。


 やはりカツ丼は、完璧な逸品。


 トンカツを揚げるとき、焦がしさえしなかったら、まず美味い。

 味のベースとなる割り下も黄金比が決まっている。


 手間を省き、スーパーの惣菜を使い、めんつゆで作っても美味い。

 カツ丼を最初に作った料理人を、俺は心から尊敬する。



「ごちそうさま」



 だが、ゲームの製作者たちをもっと尊敬している。


 柚葉のせいで、結局夕飯までの時間を取られた。

 そして今、夕飯が済み、ついに俺は解放された。


 確率は10%以下。

 今夜はリオなレイアから『棘』がドロップするまで、寝る気はない。


 胸が踊る。



「はい、お茶」

「いや、いい」



 母親が湯呑を差し出すが、椅子を引いて立ち上がる。



「……ヒデ」

「あん?」

「話がある。座れ」



 しかし、父親が待ったをかけた。



「急用か?」

「急用だ」

「手短に頼む」

「長くなる」

「くそっ!」



 父親は、俺の生活を支えるスポンサーだ。

 無下には扱えない。


 俺は、浮かしかけた腰を椅子に落とした。




 ******




「わざわざ、何なんだ?」



 父親は場をダイニングからリビングに移した。

 母親もソファーに座り、父と並んでいる。


 夕飯の片付けは放ったまま。

 テレビは点いておらず、壁時計の針の音だけが響いていた。



「母さんから、話は聞いた」



 父は腕を組み、真っ直ぐな鋭い眼差しを向けてくる。

 その隣では、母が不安そうにこちらを見ていた。



「……うん?」



 一人掛けのソファーに背を預け、組んだ膝の上に両手を乗せたまま、俺は首を傾げた。



「柚葉ちゃんとのことよ」



 一拍の間が空き、居ても立ってもいられない様子で、母親が口を挟んだ。


 ようやく理解を得た。

 いつの間にか、母親は俺と柚葉の仲を知っていた。


 先日は朝帰りもしている。

 一応連絡は入れたが、帰宅したときには白い目で見られた。


 高校生の親として、色々と心配なのだろう。

 週の始めにもかかわらず、父親が珍しく定時で帰ってきたのも頷けた。



「安心しろ。避妊はちゃんとしている」



 俺は苦笑を隠せなかった。


 実際のところ、ある理由でそこまでは至っていない。

 だが、それを言う必要はない。


 柚葉の両親はまだしも、自分の両親にまで知られてしまったら、俺は本気で家出を考える。



「そうじゃない、そうじゃない。

 いや……。それも気になってはいたが、そうじゃない」

「あん?」



 父親は首を左右に力なく振り、母親と揃って、深々とため息をついた。

 イラッとした。



「むしろ、安心したのよ。

 あなた、女の子というか……。女性そのものに興味を全く示さないから」

「実は……。お前は男が好きなんじゃないか、と思ってな。

 そういう子どもを持つ親御さんたちの相談会に、母さんと通っていたくらいだ」



 知らなかった両親の悩み。

 さらに、イラッとした。



「話を戻せ。単刀直入に言え」



 肘置きを、軽く叩いた。


 俺はゲームがしたいんだ。

 貴重な時間を潰すな。



「じゃあ、教えてくれ。

 ヒデ……。お前、勇者なのか?」



 父親はわずかに身を乗り出し、俺を見据えた。



「いや、魔王だ」



 その問いに答えると、空気が止まった。

 カチ、カチ、カチ、と秒針の音だけが響く。



「魔王だ」

「……まおう?」



 聞き慣れない単語を確かめるように、母親がゆっくりと繰り返す。



「魔王だ。勇者などと同列にするな」



 もう一度言い切ると、二人は戸惑い、顔を見合わせた。



「おい、母さん。聞いていた話と違うぞ?」

「でも、名香さんたちは、勇者だって……。」

「魔王といったら、勇者と対になる、世界を滅ぼす存在だ」

「えっ!? ……ヒデが?」



 父親の小声に、俺の眉がぴくりと動いた。


 勇者と魔王を題材にする、ゲームやマンガ、アニメ。

 今の俺が生まれる前からあり、今ではむしろ流行はさらに加速している。


 しかし、父親はゲームやマンガ、アニメに興味がない。

 自衛隊で日々身体を鍛えているくせに、休日の趣味も筋トレという変なやつだ。


 その父親が、勇者と魔王の概念を知っている。

 違和感があった。



「詳しく聞かせてくれないか?」



 父親の眼差しは、最初に口を開いたときよりも鋭くなっていた。


 夕方、俺の過去を柚葉に話したばかりだ。

 それを、もう一度語らなければならないのか。


 壁時計をちらりと見れば、午後七時十五分を過ぎている。


 早くゲームがしたい。

 八時までには終わらせよう。



「……いいだろう」



 俺は一度目を閉じ、短く息を吐いた。


 中指と親指を弾く。

 パチリと乾いた音が鳴り、隣の床に深淵が開いた。


 スケルトンが、まるでエレベーターに乗るかのように、ゆっくりと姿を現す。



「なっ!?」

「えっ!?」



 父親と母親が、同時に息を呑んだ。


 ここに至り、もはや魔法を隠す必要はなかった。

 手っ取り早い証明として選んだのが、このスケルトン召喚だ。



「おい、茶を頼む」



 俺が命じると、スケルトンは骨をかたかたと鳴らしながら、キッチンへと向かった。





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