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週末勇者とひも付き魔王様 ~前世で殺し合った相手と世界を救うことになった件~  作者: 浦賀やまみち
第三章 世界の一端

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第22話 魔王の今




 人間は定命の生物だ。

 魔法で延命したところで限界がある。



「そういえば、人間以外に転生したことないの?」

「ない。後天的に種族を変えたことはあるがな」



 違和感の正体を探る時間が足りないと感じた。

 そこで、来世に問題を託すことにした。


 それが『黄泉の法』だ。



「あーー……。前世の最後で言ってたね。それ」



 魔法とは、世界との接続。

 無から、有を取り出す。


 俺は、その狭間に着目した。

 そしてそこに、自分の記憶を死に間際に送り、転生後に取り出す秘術を構築した。



「おーー……。言ってる意味は分からないけど、とにかくすごいってのは分かる」



 俺は『大賢者』と呼ばれていた。


 目論見通り、『黄泉の法』は成功した。

 その副産物として、違和感の正体も判明した。


 記憶を狭間に入れたことで、自分がこれまで転生を繰り返してきたという構造そのものを認識できたのだ。



「やったじゃん」

「やってない」



 狭間とは、世界の記録だった。

 俺は勇者だったのだ。



「……はい?」



 かつて、神に願い、力を手に入れた。

 その代償として、転生を繰り返している。



「うん? ……うん?」

「お前にとって、死は状態異常。

 一夜明けると、最後に寝た場所で蘇るんだったな?」

「意味不明だよねー」

「俺も同じだ。

 違いは、転生するところだ」

「ああ……。なるほど」

「もっと言えば、転生先が必ずしも危機に陥っていない、ってのもある」



 肉体はリセットされるが、経験と知識はある。


 俺は歓喜した。

 身体を鍛え、備えればいい。


 魔剣士。

 至白の騎士。

 万雷の魔女。

 百識の軍師。

 晴天宰相。


 転生を繰り返し、様々な名で呼ばれた。



「百識の軍師が、なんか格好いいね」

「……そうか?」



 一度も勇者とは呼ばれない。


 いつしか、俺は人類存亡の危機を待つようになっていた。

 だが、平和が続くと、人類同士で勝手に争い始める。


 戦争、平和、革命。

 終わらない三拍子。


 俺は王になった。

 明日の不安を抱かず眠れる、より良い世界を目指した。


 しかし、たった三年で革命が起こる。

 前王の幼い遺児を祭り上げ、右腕だったはずの男が裏切った。



「もしかして、背中からブスリ?」

「ああ」

「わおっ……。」



 次の人生では、民衆を締め上げ、恐怖で縛った。

 いつしか、俺は『魔王』と呼ばれていた。



「私も、色々な世界を見てきたからなー……。」


「ちょっとだけ分かっちゃう」


「実を言うと、私もお母さんに反抗していた時期があってさー」



 二十年くらいが過ぎた頃、俺の前に『勇者』が現れた。


 笑うしかなかった。

 笑って、笑って、この運命の鎖に俺を繋いだ神を呪った。


 次はもっと上手くやる。

 そう胸に刻み、魔王を七度重ねた。


 勇者を倒し続けていれば、いつか業を煮やした神が現れると信じて。


 民衆は生かさず、殺さず。

 そのギリギリのラインを見極め、支配の年月は魔王を重ねるごとに伸びていった。



 ******




「そして、五百年。お前が目の前に現れた」

「そっかー……。そうだったんだ」



 気づけば、名香神社の鳥居が見えていた。


 ようやく家に帰り、ゲームができる。

 俺の心は弾んだ。



「それより、ここまで教えたんだ。俺にも教えろ」



 しかし、その前に解決すべき問題があった。


 等価交換だ。

 今なら、聞ける。



「何を?」



 柚葉は首をかしげる。



「なぜ、お前は俺を一目で分かった。

 前世とは、顔が全く違うのに」



 この世界で、柚葉と初めて出会ったときから抱えている疑問だった。



「えっ!? ……今更?

 もう二十年以上、一緒にいたのに?」



 柚葉は目を丸くし、ぱちぱちと瞬きした。



「お前だって、俺の過去を詳しく聞いたのは初めてだろうが」



 俺が眉を寄せると、柚葉が視線を逸らす



「だって……。なんか聞きづらかったし」

「……俺もだ」



 俺も思わず逸らしてしまった。

 この気まずい間は何なのだ。



「あら、いつも仲が良いわねー」



 近所のおばさんが自転車に乗り、チャリンチャリンとベルを鳴らして追い越してゆく。



「分かるよ……。一度は自分の手で殺した相手だもん」



 しばらくして、柚葉がぽつりと言った。

 その横顔を見ると、細めた目で、近づいてくる鳥居を見つめていた。



「それにさ。ヒデが前世でいった言葉……。

 俺という存在がいたからこそ、許されていた、って、あれ」


「すごい考えさせられて、納得しちゃったんだよね」


「実際、学校の体育で一度も本気だしたことないし……。」



 極稀に垣間見せる、柚葉の中の闇。

 柚葉は組んでいる腕に力を入れ、身を寄せてきた。



「だから、嬉しかったんだ。

 ヒデがうちの玄関に初めて立っているのを見たとき」


「ああ、やっと私にも一緒にいてくれる人が現れたんだなってね」



 そして、言い終えたあと、柚葉は小さくはにかみ笑った。



「……恥ずかしいことを言うな」



 不覚にもドキッとしてしまった。

 少しだけ歩みを早める。



「もーーーっ! せっかく、ちゃんと告白したのに!」



 柚葉は頬をふくらませて抗議した。

 再び気まずい間が漂う。



「やだわ。私ったら、忘れ物しちゃった」



 近所のおばさんが自転車に乗り、チャリンチャリンとベルを鳴らして通り過ぎてゆく。

 柚葉が顔を伏せ、上目遣いをちらりちらりと向ける。



「ねえ、うちに寄っていかない?」

「……んっ!?」



 何を求めているか、すぐに悟った。

 だが、俺は家に帰って、ゲームがしたい。



「もーーーっ! 分かるでしょ? 女の口から言わせないでよー」

「……いいだろう」



 より密着し、押し付けられる柔らかさ。


 俺は本音を飲み込んだ。

 ゲームがしたいといったら、本気で殴られるのは間違いない。



「うふふっ……。」



 しかし、嬉しそうに微笑む横顔に、三十分くらいはいいかと許した。

 決して、俺は負けていない。





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