05-1もしくは回想
「あの野郎…」
家のベランダの椅子で、今日はルカではなくセオが腰かけていた。緑は相も変わらず青々としており、昼間の太陽の光を程よく遮ってくれる。
そんな中で思い出すのは、コムギの任務を終えた後の、先日の一件である。
諸々の処理を済ませた後、二人はその足でそのままパラティリティスの元へ向かった。
正確には、向かおうとしていたことを察したのか、鳩が近くの海まで連れて行ってくれた、と言った方が正しいのだろうか。
ご丁寧に既に道も開いた状態になっており、二人は迷うことなくそこへ足を伸ばした。
次に目を開いたときに見えたのは、見慣れた砂浜と白い人。
真っ白の長髪を海風になびかせ、白銀の瞳を伸びた前髪から覗かせる、常人とはかけ離れた、美しい人。
「やあ、おかえり」
当の人物は、まるでなんてことないかのように、いつものように、そこにいた。
「…なんで私は殴られそうになったのかな」
先ほどの凪いだ雰囲気はどこへやら。飛んできた全力の拳を顔面直前で受け止めたパラティリティスは、顔面蒼白で冷や汗を流しながら拳の主に問いかける。
「悪い、顔を見たら、つい。」
「ロマンス小説で言うような台詞をこんな場面で消費しないでくれるかなあ!」
受け止められた拳に舌打ちをしながら、セオは手を振りほどく。
「パーちゃんロマンス小説とか読むんだ!意外ー!」
「ルカ君今そんなこと呑気に言える場面でもないのでは!?」
自らに変わらず苛立ちと怒りの目を向けてくるセオを横目に、パラティリティスは気まずそうな顔をする。
「…お前、全部分かってたな」
目線をそのままパラティリティスに向けたまま、少し苛立ちを抑えた声で、セオは問いかける。
「さっきのお前の顔を見て分かった。最初はお前に、ルカが俺と一緒に石を触ってしまったことに関して、純粋にどうすればいいかを聞きに来たつもりだった。加えてふざけた手紙をルカに送ってきたことに対する文句も。…でも、こうなるリスクがあることを、監視者であるお前が考えなかったわけがない」
「…まあね、いずれそうなるだろうとは思っていたし、そうなった時に、ちゃんとここへ来てくれるであろうことも、分かっていたよ」
「…」
セオは何も言わない。先ほどとは一転して刺すような雰囲気となってしまった二人に、ルカは何が何やらよく分かっていない様子で、二人を交互に見つめる。
「ねえ、二人とも…?一体なに…?」
二人は話さない。しばらくの沈黙ののち、先に根を上げたのはパラティリティスの方だった。
「…まあとりあえず中で話そう。ルカ君の容態も診ないといけないしね」
パラティリティスの言葉に、セオも一応は警戒を解く。目は相も変わらず疑心に満ちていたが。
「早くおいで~、そこで固まってたってしょうがないだろ~」
先に家に向かって歩を進めながら、パラティリティスはセオを急かす。
「…兄さん早く行こ?パーちゃんが僕らに危害を加えてるってわけでもないんだし…ないよね?」
セオの緊張が伝わったらしく、珍しくルカも疑心暗鬼となっている。こちらの反応を恐る恐る窺うような態度に、セオは冷静を取り戻すために頭を振る。
「さすがにそれはない。目的がよく読めなくて警戒しただけだ。行こう」
なるべく落ち着いた態度でルカを諭し、セオもまた家に向かう。
何にせよ、持っている違和感と、パラティリティスが何を考えているのかを明かさねば。
家に向かう足取りは、あの頃よりも少し重かった。
お疲れ様です。柏田です。
構成凄く迷いましたが、とりあえずこれで行こうかと。
相変わらずの見切り発車が多いこと多いこと…見捨てず見守っていただけますと幸いです。
いつも本当にありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします!!
それでは。




