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とある『カイキシャ』の記録_3
お前はいつも、俺の傍にいてくれたね。
両親もいなくなり、滅多に人の訪れなくなったこの場所で、俺はこの子と暮らしている。
くるんと丸まったしっぽに、お日様で温まったような薄い茶色。
つぶらな瞳は愛らしく、抱きしめるとそのぬくもりに酷く安心する。
両親が亡くなる数年前に、ひょんなことから家にやってきた子。それがコムギである。
柴犬のオスで、我が家にやって来たときはまだまだ小さかった。
この子と過ごす日々は特別で、優しく穏やかなものだった。
だというのに、ああ。
俺は、あの子を置いていってしまうのか。
うすぼんやりとした意識の中で考えるのは、あの子のことばかり。
俺は幸せだった。でも、あの子は?
幸せでいてくれただろうか。
君を置いていく主人を、どうか恨んでくれ。
きっと君は優しいから、そんなこと考えつかないかもしれないけれど。
嬉しそうにしっぽを振って散歩する姿。
気持ちよさそうにお風呂に入る姿。
撫でたときの毛の手触り。
舐めてくる舌の温度。
目一杯遊んだ後の、草木の匂い。
ああ、
どうか、どうか君が。
俺なんかを忘れて、幸せに生きてくれますように。




