03-6
…やっぱりズルしたのバレちゃった?
あれから少し経ち、セオの初任務の日がやってきた。
不安なことが無いと言えば嘘になるが、一緒に来てくれるという他の回収装置と現地で落ち合うことになっているので、少し気持ちは楽だった。
それよりもセオが最も心配していたのは、やはりルカのことである。
あれから今日まで、ルカは何度か石に触れ、色が変わるか試したものの、やはり無色のまま反応を示さなかった。このままだったら、ルカはどうなってしまうのか。
パラティリティスは、「大丈夫、なんとかなるさ」と言っていたが、正直不安は尽きない。
当のルカ本人はのほほんとしているため、ことの重大さを分かっているだろうかと、若干の苛立ちも覚える。が、セオにはどうすることもできない。
どうすることも出来ない分、初任務はせめてしっかりとこなしたい。
分からない事だらけでここまで来て、正直今も、分からないことは多い。
だがそれでも、自分達の生まれた理由があるのなら、人でないとしても生きていかねば。
「また小難しいこと考えてるね~?」
そう言って隣にやって来たのはパラティリティスだ。
朝日が昇り、生命が活動を活発に始める時間帯。海辺の鍵をパラティリティスに開けてもらい、ここからセオは任務に赴くことになる。
「帰りのことは心配しないで、ちゃんと見てるから。任務が終わったら近くの海においでね」
「兄さん!頑張ってね!!」
いつものように微笑むパラティリティスと、手を握ってブンブン振ってくるルカに、先ほどまでぐるぐる考えていた思考がどこかに追いやられ、セオの無意識に強張った体から力が抜ける。
「分かった、そうする。後ルカ止めろちぎれるだろ腕が」
手を軽く振り払うセオに、「えー」とルカは呑気な声を発する。
「じゃあ、準備は良いかい?」
そう言うと、パラティリティスは手を海の方向へかざす。
すると、近くの海の水がパラティリティスの身長程に盛り上がり、ドアの形に変形する。
「…来るときもこのくらい分かりやすいドアなら良かったのに」
ボソッと呟くルカに、パラティリティスはフルフルと首を横に振る。
「確かに分かりやすいけれど、逆に言えばそれは、普通の人間の目にも留まりやすいということだからね。今は海の裏側だから良いけど、向こうから帰ってくるときはこうもいかないかな」
「なるほど…」
やはり人目に触れないということは重要なのだなとセオが頷いていると、パラティリティスは続ける。
「とはいえ、帰りは現地で落ち合う回収装置がこっちまで送り届けてくれるから心配ないよ、私がお願いしたからね。今度は酔わないと思うけど念のため酔い止めは持ったかい?小腹が空いた時用にお菓子とか、あと飲み物も。後は」
「さっきも確認しただろうが!そんなに心配しなくてもいいって」
セオの発言に、パラティリティスは目を丸くする。
「心配…そっか。私、君のこと心配してるんだ」
「はあ?」
またおかしなことを言い始めたとセオは思ったが、パラティリティスのなぜか嬉しそうな顔に何も言えなくなる。つい見入ってしまった訳ではない。断じて。
「そうだね、君が心配だ。でも大丈夫だろうと確信もしてる。なんて言ったって私が教えたのだから!」
「…ああ、そうだな。行ってくる」
そう返事をするセオの背中を、パラティリティスは軽く押してやる。激励の意味も込めて。
「行ってらっしゃい。頑張ってね~!」
そして呑気な声を上げるパラティリティスと、「頑張れ兄さーん!」と声を張り上げるルカの声を背に、セオは開けた扉の中へ足を踏み出した。
…
「…さん、兄さん起きて!もう夜になっちゃうよ!」
「…ああ、もう夕方か」
本を読んでいたらそのまま寝落ちてしまったらしい。
ルカの声に起こされたセオは軽く伸びをすると、本を机に置きながら窓の外を見つめる。
ルカの言う通り、もう日は沈みかけており、茜と夜の色が美しいコントラストを作り出し、海がそれを反射している。
「こんなにのんびりしたのはいつぶりだろうな…本は全然読み進められなかったけど」
「それでもいいんじゃない?休みは寝てこそだし!」
ルカはカーテンを閉めながら笑うルカに、まあそれもそうだなと少し笑う。
こうして今はルカと任務を一緒にしているが、結局なぜルカが石を光らせることが出来たのか、セオは知らない。
最終試験を共に見守ったため、ルカが石を光らせられたときは嬉しかったものの、どういう風に教えたのか、原因はなんだったのかを問うても、パラティリティスは「え~なんでだろうね~」といつもの貼り付けた笑みを浮かべるばかりであった。
…ん?
ふと、セオの思考が止まる。そして一からまた、それを巡らせる。
石を回収できない。「死」を理解していないルカ。
にも関わらず、最終試験で光った石。でもいまだ石を回収できないルカ。
…。
あいつまさか。
「兄さん、どうしたの?」
ルカの声に、セオはハッと現実に引き戻される。
「…いやなに、今度パラティリティスに会ったら問い詰める事が増えただけだよ…」
片側の口と目の端を軽く吊り上げて笑うセオに静かな怒りを感じ取ったルカは、「パーちゃんなにしたのさ…」とそこにいない人物に哀れみの目を向けた。
やはりあいつは、ろくでなしと呼ぶにふさわしいようだ。
「まあいい、腹減ったしなんか作ろう。今日は何食べる?」
「あ!じゃあロールキャベツ作ろうよ!この間テレビで見て食べたくなったんだよね!」
「また手のかかるものを…まあいいけど、じゃあ他には…」
夕飯の相談をしながら、二人はキッチンへ向かっていく。明日はまたいつも通り、任務の封筒が届くだろう。
それまでの温かな時間を、互いが心を落ち着けられる時間を少しでも大事にしたいなと、セオは柄にもないことを思うのであった。
お疲れ様です。柏田です。
気を付けてはいるものの、ちょいちょい誤字脱字を発見してすいません…となってます。本当すいません。
それでも見てくださる皆様、いつも本当にありがとうございます。
03はこれにて終了です。次はいつも通り記石回収です。
次はどんな話になるのか、楽しみにしていただけますと嬉しいです!
感想等お待ちしております!
それでは。




