03-3
めんどくさいとこは、昔から端折っちゃうんだよね~
「それで、何から聞きたい?」
家に通され、椅子に腰かけた二人を前に、パラティリティスは口を開く。
「あーでも、その前に飲み物とかあったが良いよね?それとも体調悪そうだし、ちょっと休む?」
「いえ、お気遣いなく…?」
これで合っているのだろうかと疑問を頭に浮かべながら、セオはそう伝える。
「おや、随分と大人びた言葉を使うんだね?さっきも思ったけど、君はかなり利口なようだ」
とりあえず君たちの文化圏だとこれかな?と、パラティリティスは3つのコップに麦茶を注いで持ってきてくれた。飲みなれた味に、セオは心がホッとする心地を覚えた。
「兄さんは物知りなんだー!何でも解決してくれるんだよ!この間も、僕がなくした靴下を見つけてくれたんだ!凄いでしょ!」
「なんでお前が偉そうなんだよ…」
えっへん!と言わんばかりのルカの態度にセオは呆れるも、特別嫌な気持ちにはならなかった。むしろ少し気恥ずかしい。
「あっはは!そうか、君のお兄さんは凄いねえ」
「でしょー!」
まるで子供をあやすように、パラティリティスはルカに語りかける。やはりこちらに害をなそうとしているようには思えなかった。まあ相手から差し出されたものを飲んだ時点で、という話にはなるのだが。
「聞きたいことを聞けば、何でも答えてくれるのか?」
「何でもとはいかないかもしれない。正直、言ったところで君たちがどこまで理解できるかというレベルの話だからね」
パラティリティスは、コップを掲げながら話す。
「子供にはまだ早いってやつ?よくおばさんが話してた!」
「まあそうとも言うかな~とりあえず、疑問に思ったことを何でもいいから聞いてごらん?」
「…あんたからは何も話してくれないんだな」
セオはそう言うと、パラティリティスを思慮深く見つめる。何故だか、試されているような気がしてならない。
「おや?もしかして疑われてる?私」
「疑うとか以前の問題だ。そうするにも判断材料が少なすぎるし」
「やはり君は聡いね」
そう呟き、パラティリティスは手を机にかざした。そしてそのまま手を横にスライドさせたかと思えば、そこには白い板が映し出された。
「「!?!?」」
摩訶不思議な光景に、二人は目を見開く。パラティリティスはそれを見ると、楽しそうにくつくつと笑う。
「こういうのを見るのは初めてかい?」
「は、はじめてって言うか…凄い…」
「これ、魔法ってやつ!?」
二人は好奇心を全面に押し出し、目の前で起きた現象に釘付けになる。
「魔法とは少し違うかもだけど、まあそれで理解しやすいならそれでいいかな?」
パラティリティスはそう言うと、白い板に指で何かを書き始める。どうやらこれはホワイトボードのような役割を持っているらしい。なんとも不思議な仕組みだと、セオは興味津々でその様子を見つめる。
「セオ君が言うのも尤もだからね~そもそもの話をしよう」
パラティリティスはその板に絵を描きながら、子供にも分かりやすいように話をしてくれた。
人は死んだら、土ではなく海に還る者がいること。その者たちを『カイキシャ』と呼ぶこと。回収装置とは、その記石を回収するのが仕事であるということ。他にも何となくの概要を。
「…そして、君たちがその『回収装置』と言う訳さ、分かってくれたかな?」
「…?」
「???」
パラティリティスの説明を聞いたはいいものの、頭には疑問が生まれるばかり。というより、なんだか他の世界の話を聞いているようで、セオとルカもいまいち頭が追い付かなかった。
「…あれ?結構分かりやすく説明できたと思うんだけど、分からなかった?」
「「分からない。」」
「…そっか~」
パラティリティスは、気持ち少し落ち込んだように肩を落とす。
「いや、あんたの説明が分かりにくかったとかそういうんじゃなくて…いまいち現実味がないというか…」
「うん、寝る前の絵本聞いてるみたい」
「ここまで来ておいて、今更現実味がないとはよく言ったものだね」
セオとルカの反応に、パラティリティスは苦笑する。
「まあすぐに理解できるとは思ってないよ、最初セオ君にも言っただろう?『言ったところで君たちがどこまで理解できるかというレベルの話だ』ってね」
「…そんな相手に、『聞きたいことあれば答えるよ』っていうのも、中々雑では?」
「だってその方が手間かかんなくていいかな~と思って~」
なんて投げやりな奴なんだ、とセオは一瞬苛立ちを覚えるが、同時に一つ、大きな疑問も浮かんだ。
「なあ、俺たちがその『回収装置』っていうものだとして、なんで一度人間の世界に放り出されたんだ?あんたの話だと、そんな描写なかったような…」
パラティリティスによれば、回収装置は海から生まれ、この世界…いわゆる海の裏側で教育を受けたのち、任務に就くのだという。つまり、任務として人間の世界に赴くまで、ずっと海の裏側にいるということだ。であるにも関わらず、自分たちは赤子の姿で海から放り出された。
「あれ?そういえば確かにそうだね、なんでだろう??」
「それはね…」
セオとルカの疑問に答えようとするパラティリティスの真剣な顔に、二人は息をのむ。
「それは……ごめ~ん私にも分からない~」
気の抜けたパラティリティスの声に、思わず二人はズッコケそうになる。コントをしたいわけじゃないのだが。普通にやめてほしい。セオは苛立ちを隠せない声を上げてしまう。
「…お前なあ」
「だって~今までこんなこと一度だってなかったんだもん。『マザー』に聞きたくても、今通信切除されちゃってるし」
「「…『マザー』?」」
また知らない単語が出てきた。いや単語は知っているが、ここで意味するそれの存在を、セオもルカも知らない。
「まあ一つ言えるのは、君たちは例外的な存在だから、ちゃんと観察してちゃんと教育して、立派な回収装置になってもらおうという訳さ!」
「だいぶ大事なとこ端折ってないか、この男?」
「ねえ兄さん…僕凄く不安になってきたかも…」
あからさまに怪訝な顔をする二人を、パラティリティスはまあまあと宥める。
「追々色んなことが分かってくるさ。そのために私がいるのだから。…それと、人を見た目で判断するのはいただけないな~」
「「?」」
再び頭に疑問符を浮かべた二人に、パラティリティスは薄く微笑む。それは今まで見たどんなものよりも怪しく…美しかった。
「私は男でもなければ女でもない。一緒にこれから頑張っていこうね、未来の回収装置たちよ」
お疲れ様です、柏田です。
無性別の美しいヒトって素敵ですよね。パラティリティスには私の夢が詰まっております。(唐突の自己開示)
あんまり説明になってしまってもつまらないかなと思ったので、情報は少しずつ出していこうかと。
「なんじゃそりゃ?」となってもどうか見捨てず、お付き合いいただけますと幸いです。
pv数も少しずつ伸びてきており大変嬉しいです。いつも本当にありがとうございます。
今後とも何卒よろしくお願いいたします
それでは。




