02-5または回想
その行動力たるや!
育ての親である慎一郎に海へ行くよう促された後、セオとルカは釈然としないまま、言われた通り家の前にある海へ向かう。
「全くなんなんだよ慎一郎のやつ、訳分かんねえことで追い出しやがって」
セオはぶつくさと文句を言いながら歩を進める。ルカもうんうんと頷きながら、
「ほんとにそうだよねえ、今から見たいテレビあったのにさあ。ちゃんと録画してくれてるかなー?」
と呟く。
「毎週録画にしてるし大丈夫だろ。…慎一郎がうっかり消さない限りは」
「おっさんまじで抜けてるからね…」
育ての親の気の抜けようを思い出しながら歩いていると、あっという間に目的の場所へたどり着く。
家からよく皆で眺めていた海。
潮の香りと風が、心地よくセオたちの頬を撫でる。
太陽の光を反射して輝くそれは、いつ見ても彼等の心を穏やかにしてくれた。
「んー!やっぱり気持ちいいね!!ねえ兄さん、靴脱ごうよ?砂浜一緒に歩こう!」
「…お前何のためにここ来たか忘れてるだろ…用事済ませたらな」
えーと文句を垂れる弟を呆れた顔で見つめていると、ルカの後ろから、てくてくと何かが歩いてきた。
「あ、鳩だ!」
ルカの言う通り、鳩がこちらに向かって進んでくる。
鳩自体珍しいものでもないが、よく見ると何かを咥えている。鳩は二人の目の前までくると、それをぽとりと落とした。そして二人をしばらく見つめたかと思えば、そのまま遠くへと飛び去ってしまった。
「なんだったんだろう?」
ルカは不思議そうに、飛び去っていく鳩を見つめる。セオは、鳩が落とした"それ"を拾い上げながら、
「どうやら、これを読めってことらしいぜ」
と、ルカの前にかざした。
「封筒?」
ルカはまた頭に?を浮かべながら、兄の持つそれを見つめる。
ルカの言うように、鳩が咥えてきたものは草臥れた茶封筒であった。ちょうどこれと同じものを、先ほど二人は見たばかりである。
「家に届いてたやつと同じだ。恐らく同じ差出人からと見て間違いないだろう」
セオはそう言うと、封筒をくしゃりと握りしめてニヤリと笑う。そこにはちょっとした苛立ちも含まれているように見える。
「せっかくこっちが来てやったってのに、ろくに顔も出してこないとはな…さっきの鳩捕まえとけばよかったぜ…」
「でも捕まえても鳩喋れないよ?」
「腹いせに食うんだよ」
「食べちゃダメだよ!?」
珍しく突拍子もないことを言い出す兄に、ルカは食い気味に静止の声を出す。さっさと話題を変えねばと、兄の持つ封筒に視線を移す。
「ね、ねえそんなことよりさ!!早く中身見よーよ気になるじゃん!!ね!!」
声が裏返りつつも兄に進言する。
「…それもそうだな、さっさと見てさっさと帰ろう」
納得はしていない様子だったが、セオは一旦怒りを鎮め、くしゃくしゃになった封筒を伸ばしつつそう呟いた。その様子に、ルカはホッと胸をなでおろす。
「…ま、帰りを待ってくれてるならの話だけど」
そんなセオの声は、波の声にかき消されていった訳だが。
封筒の上の部分を手で破り取り、中身を見る。
一体何が書かれているのか。思わず生唾を飲み込みながら、二人は中に入っていた便箋を開く。
中身には一言。
『海に潜るように。道は開けておきました』
「「…」」
「…は?」
先に声を出したのはセオであった。あまりに意味が分からない。潜れ??このまま???
「兄さんどうしよう…」
「…」
「水着持ってきてないのに…!」
「そういう問題じゃないだろ」
思わず真顔で弟にツッコんでしまう。いけない、今はそんなことをしてる場合じゃない。
「そもそも潜るったって、」
どうすれば、と言い終えるよりも先にルカはセオの腕を掴む。
「うん?おいなんだよ、心配しなくても今方法を考えて…」
「…よ」
「え?」
疑問の声を上げるセオにルカは顔を上げる。
満面の笑み。無性に嫌な予感がする。
「潜れって言ってるんだから、そのままの意味だよ!!潜っちゃえ!!」
腕を引き、そのまま海へ直行。
「ふざけんなあああああああああああああ」
そんなセオの叫びが遠くへ響きながら、彼等は海へ飛び込んでいった。
「そ、そんなことが…」
「ねーびっくりだよねー!」
ルカはあはは!と笑う。浅野的には、そこで海へ直行してしまうルカの行動力に驚かされたのだが、そこはまあいいとして。
「で、その後どうなったんですか!?」
「それでね…」
と、ルカが話を続けようとした時、
「おい、終わったぞ」
向かいから違う人の声が聞こえた。
どうやら、セオの作業が完了したらしい。
「ありゃ、終わっちゃったか!じゃあ続きはまたの機会にだね!」
「え、そんなあ…」
せっかく良いところだったのにと、浅野はしょんぼりとしてしまう。
その様子に違和感を感じたのか、セオが問いかける。
「何かあったのか?」
「んーん、なんでもない!」
ルカはそう言うと立ち上がり、浅野の方を振り返り、
「…またいつかね」
と伝えると、セオの方へ向かっていった。
その表情は、どこか申し訳なさそうにも見えたが、それを問いかける暇もなく、浅野もセオの方へ向かっていくのだった。
お疲れ様です。柏田です。
いつも本当にありがとうございます!
次回で02終える予定です。過去の話もまたかいつまみながらお届けできればと。
良ければ評価や感想等お待ちしております。いつも大変励みになってます。
それでは。




