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02-4

チョコレートパフェ、美味しそうだな~!


耳に響くBGMで、セオは目を開ける。

今いる場所は…どうやらファミリーレストランのようだ。

店の中は、家族連れや若者たちでにぎわっている。


「ちょっと、まだ食べないの?早くしてよね」


自分が立っている目の前の席から冷たい声が聞こえる。目を向けるとそこには一人の女性。

派手な化粧に真っ赤なネイル、大きな宝石の指輪。ファミレスにいるには似つかわしくない様相だ。

「…はい」

そして、その向かい側に座る人物、彼女が今回の記石を残したカイキシャ…ゆみで間違いない。


回収装置が見る記憶は、己が透明人間のような存在になって、カイキシャを見守る形で見ることが多い。

稀にカイキシャ本人の視点だったりもするが、その際はカイキシャの当時の記憶通りに体が動くため、かなり行動が制限されてしまう。思考も強く流れてくるため、あれは中々に疲れる。

…ちなみに慎一郎の時は、どれにも当てはまってはいない訳だが。


「(…あれから色々考えたが、やっぱりあれはおかしい)」

慎一郎の記憶。あそこはあまりに異質だった。慎一郎本人の姿はなく、かといって自分自身が慎一郎の視点で動いていたわけでもない。なのに、あの触れた砂の感覚は妙にリアルだった。

当時は気が動転していたが、不可解なことが多すぎる。

「(今までそれなりの数の記石を回収してきたが、あんなことは一度もなかった。極稀に発生するものなのか、いやしかし…)」


そう悶々とセオが考えていると、気づけば女性はどこかにいなくなっており、カイキシャだけがその場に取り残されていた。荷物が残されているのを見るに、手洗いにでも行ったのだろう。


「(いかん、今は記憶の閲覧に集中せねば。これはいわば検閲みたいなもんなんだから)」

他人の記憶を覗き見ることに、セオは最初こそあまりいい気はしていなかったものの、検閲や検品のようなものだと考えるようになってからは、むしろ向き合わねば無作法だろうと思うようになった。

物は考えようとはこのことである。


カイキシャである少女は、目の前に置かれた、半分まで食べ終えたデザート…チョコレートパフェをちまちまと食べ進める。スピードがゆっくりのため、既に底の方のアイスはだいぶ溶けていたが、少女はお構いなしといった様子で味わうようにそれを食べる。

口に運ぶたびに幸せそうな顔をする少女に、見ているセオもつい頬を緩める。

「(よほど好きなんだろうな…)」

そう思いながら眺めていると、ふと彼女のスプーンを握る腕に目が行く。

七分袖からちらりと見えたものに、セオは思わず顔を歪める。

どす黒い色をした傷…痣…?がそこにはあった。

もはや見分けがつかないほどのそれに、セオは浅野が言っていた言葉を思い出す。


「(虐待「まがい」…か…)」

これだけはっきりとした証拠があるにも関わらず、当時はもっと適切な処置が講じられなかったのだろうか。

「(いや…きっと目に見えていないだけで、見逃してしまうだけで、こういう家庭はきっと珍しくはないのだろうな)」

目の前で美味しそうにチョコレートパフェを頬張る彼女を見つめる。

祈ったところで、もう死んでいることには変わりはないが、せめて、彼女の最後が少しでも安らかなものであったことを、願わずにはいられない。


「…光に包まれていはいますが、完全に飲み込まれてその場からいなくなる、みたいなことはないんですね」

記石の光に包まれながら目を閉じているセオを見つめながら浅野はルカに話しかける。セオの様子を見るに、まだまだ時間はかかりそうだ。

「そうだねえ。僕も最初は石の中に飲み込まれちゃうかも!?って焦ったよー。まあそのまま光に包まれたのも、記憶を見ることができたのも兄さんだけだったけどねー」

ルカはのほほんとそう答える。浅野は先ほどのルカとセオの会話を思い出しながら、そういえば、と問いかけた。

「ルカさん、さっきセオさんから『いい加減出来るようになれ』みたいなこと言われてましたよね?てことは…」

「そう、僕も本当なら、兄さんみたいに回しゅ…じゃなかった除霊できるはずなんだけど、何故だかできないんだよねー」

「……修行不足…とか?」

あまりにも真面目な顔で浅野が聞くので、思わずルカは吹き出し、畳をバシバシと叩く。

「あはははは!!これ、修業とか全然関係ある内容じゃないからっ、ふふっ、」

「し、仕方ないじゃないですかっ!そちらの除霊事情なんて全然知らないし!!」

何となく恥ずかしくなった浅野も、声を大にして騒ぐ。

あー笑った笑ったと目を拭いながらルカは続ける。

「僕にもよく分かんないんだよね、何が原因で兄さんと同じように仕事がこなせないのか。本当は兄さんだけしかそういう能力がないんじゃないかとか思ったんだけど、『あの日』は僕もご指名だったのを見るに、そんなことはないみたいだし」

「あの日…?」

浅野は訝しげに尋ねる。

彼女の言葉にルカは黙り込み、しばし考え込む。

「…」

突然どうしたのだろうかと様子を窺う浅野をしばらくじっと見つめ、かと思うと、まあいいかっ!と何かに納得した様子で、今度はルカが浅野に問いかける。


「…聞く?僕らがこの任務を始めた経緯。細かい単語とか分かんない部分には、とりあえず目を瞑ってくれると嬉しいんだけど」


浅野は思わず黙り込む。何故だか、ルカの纏う周囲の空気が変わったような気がした。目の前にいる存在が、まるで同じ人間とは思えないような。

ごくっと生唾を飲み込む。ゆっくりと浅野は口を動かす。


「…知りたいです。めちゃくちゃ興味あります」

好奇心は猫をも殺す。そんな言葉を、ふと浅野は思い出した。

「…いいよ!どうせまだ兄さんの方は終わんなさそうだし!」

ルカはニコっ!と笑ったあと、当時のことを懐かしそうに話し出す。

きっとこんな機会は二度とない。

浅野は胸騒ぎを覚えながらも、それに気づかないふりをしてルカの話に耳を傾けるのであった。


お疲れ様です、柏田です。

遅くなってしまい申し訳ないです…


次回はセオとルカが海で何があったのかを書こうと思います。

02あんまし長くしないって言っただろと思われた皆様ほんとすんません。

これが行き当たりばったり…いつか本格的に事故りそうで冷や汗とまりません。

そん時は生温かい目で私を見つめてください。泣きます。


評価や感想、ブクマお待ちしております。是非していただけると嬉しいです。

いつもしてくださってる皆様も、本当にありがとうございます。日々の励みです…!

それでは。



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