17 ボンオドリの秘密
「はい。これも持って」
ケイトは、ビビルゲリンが両手に持つ箱の上にもう1つオマケとばかりに紙袋を乗せる。
「お、おい……。買いすぎなんじゃ……」
「それ、アンタの下痢止めだから。迷惑なんだよね、旅先でブリブリブリブリとさぁ〜」
「……」
ケイトにそんなことを言われても、ビビルゲリンはもはや反論すらしない。
今じゃ、飼い慣らされたクマより大人しいやもしれん。
ビビルゲリンのヤツはやつれはて、今では単なるパーティーの荷物持ちとなってしもうたわけじゃ。
「ふーむ。あの馬鹿はどうしようもなかったとして、ワシらも少し気をつけねばならぬかものぅ」
ホテルの窓から、商店街で買い物する2人を見てワシは言う。
「せやかて、ヘンドラゴンはん。“偽装”はパーペキなんでっしゃろぉ?」
ワシの後ろで茶をすすっとる、ボンオドリが言う。
「まあな。ケイトがワシらの“悪事”に気づくことはあるまい。口封じも完璧じゃ」
受身料も詐武救のことも、調べてもワシらが黒とはでないわい。
他に罪を擦り付ける“生贄”は、あっちこっちにおる。ワシらをピンポイントで特定することは不可能じゃ。
「……だが、油断はするな。金の動きを怪しまれれば即アウトじゃぞ」
「問題ないでおまっせ」
「最近、馬鹿勇者が勘付かないのをいいことに調子に乗っておるじゃろ?」
ワシが釘を刺すと、ボンオドリは抜いた鼻毛を息で飛ばした。
「なぁにも心配する必要ありまへんのやで♡ ワテの金の動きはダァレにも追えまへんさかいに♡」
ふん。弱味を握ることに関しては、ワシよりもむしろボンオドリの方が得意じゃろうしな。
「まあ、注意することに越したことはないわい。ほどほどにじゃぞ」
◯◎◯
「しもしも〜? そう。ワテ、ワテ。いま向かってるぅ〜♡」
ボンオドリはいつものように連絡を取り、いそいそとお出掛けをした!
ケイトは彼の後ろを気づかれないようにつける。
「えー、オラキ屋ぁ〜? あそこぉ、カラアゲにレモンついて来ないしぃ〜♡」
幾つもの角を曲がり、ボンオドリはあるテナントビルへと入った。
それを見届け、ケイトは飛び込むが──
「いない? あのオヤヂどこへ!?」
そこには誰も乗っていない無人のエレベーターが一基あるだけであった。
「ケイトはん。後を付けるとは悪い子でおま」
無人のエレベーターの“裏側”でボンオドリはニヤリと笑った。
そう! “裏側”だ! 実はこのエレベーターの奥は隠し扉となっており、長い通路となっていたのであーる!
「でも、まだまだ若いでおま。ワテのこの秘密は、絶対に気づかれはずがありまへんのやで♡」
ボンオドリはさらに無機質な通路を進む。
すると、上から金色ヘルメットが、横から金色ボディスーツが、下から金色のブーツが──戦隊ものとか、科学的な忍者みてぇな服に換装されていく!
そして、どこからともなくBGMが鳴り出す!
♫ボン〜 ♫オドリ〜
♫黄金色に〜 ♫光る〜金〜
♫イケぇ(あーん♡)〜 ♫一括払いはダメ〜
通路が斜面になり、ボンオドリは両手をクロスさせ、勢いよく滑り落ちていく!
♫ボン〜 ♫オドリ〜
♫ワテの金を〜 ♫狙う輩は許さな〜い
♫金こそが〜 ♫人生すべて〜さ〜
ところどころ光る輪を潜り、さらにボンオドリは加速して湾曲するスロープをクルクルと回って行く!
♫ボン〜 ♫オドリ〜
♫現生は好き〜 ♫でも 利子払いはもっと好き〜
♫ボン〜 ♫ボン〜 ♫オドリ〜(エコー)!!
そして、スルリンと黄金色に輝くジェットのコクピットに到着した!
テナントビルの先端がゴゴゴと割れて、『拝金主義』と書かれたロケットが打ち上げられる!!
♫ボン〜 ♫ボン〜 ♫オドリ〜(エコー)!!
「……なにあれ?」
ケイトだけでなく、町中の人が唖然としてその光景を見やったのであーーった!!




