18 ボンオドリの後の祭り
Southern Crossシティ!
そこは暴力と金と女が支配する街!
金愚という謎の男……ここだけの話だが、大魔王ネギトロドンの幹部の四天王サーモンドンかもしれないとか、そうじゃないかもとか言われる人物が支配する、そんな悪徳非道の街だった!
そして、女性派人権団体『玉狩り族』と呼ばれる女傑集団と、『童貞大邪神アンベレベ教』という男結新興宗教団体が激しく対立していた!
まあ、どう対立していたか一例を出すと、下記のような議論が、男と女で酒場で交わされていた!
議題は『なぜメンズはトイレに行った後、手を洗わないのか?』で、男と女が向かい合って睨み合っていた。
玉狩り族側の女たちの主張は、「洗面台が濡れてない! これは手を洗ってないのが明白!」、「便器の周りに縮れ毛が落ちてる! これはチ●ポを弄くり回した証拠よ!」、「なんで座ってできる洋式便座なのに小水が飛び散ってるのか? 立ちションして撒き散らしてるに違いない! 座ってしなさいよ! もしくは汚したら掃除しろ!」など!
対して、童貞大邪神アンベレベ教の男たちは鼻ホジーでシラケきって、「ウ●コした後には洗うけど、オシッコだけで手を洗うって無駄じゃね? 節水だよ、節水」、「座ってシッコするなんて男の尊厳が失われる。立ってできることこそ男らしさ」、「掃除は女の仕事だろ。汚れが気になるヤツが率先してやればいい。我々は気にならない。どうせまた汚れるからだ。掃除は無意味な自己満足の行為」など!
当然、両者の溝は埋まることはなかった!
「オシッコした時にチ●ポ触れたでしょうが! 手洗えや! 汚い!」と女たち、「はぁ? それって、もしかして俺たちのチ●ポが汚いって言ってるのか!?」と男たち。
両者の怒りはピークに達し、殴り合いに発展するかと思ったら、大祭司っぽいジジイが手を挙げた。
「そもそもじゃ。メンズにはレディーにはねぇ、チ●ポという素晴らしい機能が搭載されておる」とか気の狂ったことをのたまう!
女たちが「はああ!? いったい何の話よ! ブチ頃すわよ! 汚物がぁ!」と鉄パイプを握り締めたところで、大祭司は「とどのつまり、チ●ポは神聖で穢れのない存在である。ゆえに汚れぬ。レディースはすべからくチ●ポを褒め称えるべきである。これこそ自然の摂理なり」とやっぱり気の狂ったことを言い出すことで、血で血を洗う暴動となるのが常なのであーる!
そんで、なんでまたこんな話を突然したかと言うのかと──
そう! ボンオドリの飛んできたロケットが着地しようとしていたのだ!
かの、イー●ン・マスクのスペース●をパクった、ボンオドリのスケベースH社がパクった──もとい、生み出した“戻ってくるロケット”、つまり“再利用型ロケット”として、この街に着地したのであーる!
そして、なぜボンオドリはこの街へやって来たのか!?
簡単な話である!!
それは資金洗浄! マネーロンダリングのためだった!
ボンオドリは悪どく稼いだ資産を元に、金愚に多額の融資をし、宗教団体を裏から支え、『玉狩り族』を擁護するなんかよく分からねぇー人権派団体を作り、内部抗争を裏から操っている黒幕だったのだぁ!
それだけでは飽き足らず、信者どもにはよく分かんねぇ像や壺を売って荒稼ぎ、人権派団体は、保護を名目にして女子供を掻き集め売り飛ばし、金が金を生むシステムを構築していたのであーる!
「グフフフェ。ワテが実は大魔王ネギトロドンと取引してるだなんて、誰も気がつくわけがないでおま!」
そう! そして、彼は大魔王ネギトロドンの配下サーモンドンに与するとんでもねぇー大悪党だったのであーる!
『ひみつのつうろ』と書かれた秘密の通路を、ボンオドリは肩で風を切って歩く!
この時、彼はもはやただの商人ではなかった。
世界を裏から操る大物、トリリオネア(兆万長者)としての威厳が滲み出ており、120%増し(当社比)でキリリッとした顔をしていた!!
そして、秘密の通路は、童貞大邪神アンベレベ教本部の謎の部屋に──
「え?」
ボンオドリはお目々を丸くする。
なぜなら、そこには“部屋”がなかったからだ。
そこは風の吹き荒ぶ荒野。よく分かんねぇ玉っころみたいな枯れ草がコロコロと転がっていた。
ボンオドリは振り返って自分の来た道を見やる。間違いない。いつも通る道だ。それに一本道だから道に迷ったわけではない。
そして通路の上を見て、通路の端から無理やり抉り取られでもしてように、断面が粗くギザギザになっていることに気づく。
「こ、これは……部屋が崩壊した?」
ボンオドリは自分が直面している事態に戸惑う。
そして、荒野の端に、倒れている人影に気づく。
「だ、大祭司はん?!」
近寄って、それが童貞大邪神アンベレベ教の大祭司……自分の最大のビジネスパートナーであることに驚きつつ、ボンオドリは彼を抱き起こした。
「何があったんでっか!?」
「……や、やられたんじゃ」
大祭司は虚ろなお目々でそう呟く。
「やられたって何に? この建物を壊したのは魔物でっか?」
「も、もっと恐ろしいモノだ……」
大祭司は身震いして首を横に振る。
「せ、せや! 金愚はんは!? 金愚はどないしたんや!?」
ボンオドリが大祭司の肩を揺さぶると、彼はある方向を指さす。
そこには、黄金の甲冑がバラバラになって散らばっていた。ボンオドリはそれが何なのかをよく知っていた。金愚ことサーモンドンの武具だったのだ。
「大魔王直属の四天王が、や、やられたって言うんでっか……」
「そ、それだけではない。“ヤツ”はこの街で、初の女大総統となり、我らの童貞大邪神アンベレベ教を潰して……しまった!」
大祭司のお目々が涙で滲み、ワッと泣き出して、ボンオドリの服を掴んだ。
「そ、そういえば、さっきから聴こえてくるこの悲鳴は……」
金儲けの話しか聴こえない都合のよいボンオドリのお耳が、今になってこの街に木霊する阿鼻叫喚に気づく。
「や、“ヤツ”が作り出した“蟻人間”だ」
「あ、蟻人間?」
「そうだ。蟻人間たちの王、“蟻王”が人間を肉団子にして食っておるのだ……」
「な、なんやってぇ?」
さすがのボンオドリも理解に及ばない話になってきた。
「そ、それで、その女大総統となった“ヤツ”は? あ、蟻王を放置してるんでっか?」
大祭司は首を横に振る。
「“飽きた”、と」
「は? 飽きた?」
「……“飽きたから、大魔王ネギトロドン退治を再開する”と言ってこの街を発った」
ボンオドリはゴキュリと喉を鳴らす。
「……ま、まあ、なんや知りまへんが、脅威が去ったならよろしゅうおま」
ボンオドリはチラリと悲鳴の聞こえる路地裏の方を見やる。彼にとって、この街の住民がいくら犠牲になろうが、自分の懐は痛まないのでどうでもいいのだ。
「せっかくここまで“育てた”ちゅうのに惜しい気もしないこともないけんど、商いにはこういう損切りも重要なのね。ここは早々に撤退して、新たなビジネスを再開するのが大吉でっせ♡」
ボンオドリはニカッと笑い、ぐったりしている大祭司を担ぐ。
「さ、大祭司はん。金庫の中の金を持ってトンズラなのね♡」
「……ない」
大祭司がポツリと言う。
「ない? ないって何がやねん?」
「……金ならもうない」
ボンオドリの小さなお目々が見開かれ、その場に大祭司をドサリと落とした。
「ど、どういうことや?」
「“ヤツ”が寄付した」
「き、寄付……?」
それはボンオドリの中で、一番嫌いなワードベスト5に入る言葉だった。彼の全身に蕁麻疹が生じる。
「ど、どういうことや! ワテが預けていた金! ど、ど、ど、どないしたって言うんや!?」
「『BLを普及する会』という慈善事業団体に、全額を寄付してしまったんだ……」
ボンオドリはガクリと膝をつく。
そして──
「NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!」
ボンオドリの血の叫びは、Southern Crossシティ全土に響き渡ったのであーーった!!!




