88話 天誅
「あは…あははは…」
「う、うわぁぁあぁ!!?来るなっす!!」
「どうしてこうなった…」
「ご、ごめんなさい…」
呆れる小吉の前では例の子分二人が精神を壊滅させていた…。
カメロは話す事もままならなくなっており、カイに至っては誰かが近づくと恐慌状態になってしまう。
「イナリ…お前何したんだ?」
「尋問だよ…」
「確かに俺はこいつらを殺すなとは言ったけどよぉ…」
「ちょうちょー…」
「食っても美味しくないっすよぉ!!」
「これはないだろ…」
「小吉殿、イナリはイナリなりに頑張っただけ。偶々失敗しただけだ」
「…まぁそうだよな。すまん、イナリ」
「いえ、悪いのは僕だから…」
小吉に頼まれた事を上手く出来なかったからか耳も尻尾も垂れ下がって見るからに落ち込んで居たので頭をわしゃわしゃと撫でて慰める。
目を細めて気持ちよさそうにするイナリが頭を手に押し付ける様に動いてくるのがまた可愛い…。
「お手」
「はい!……って僕に何をさせるんですか!?」
「OK元通り」
「なるほど、そういうやり方もあるのか…」
「そこ!頷かない!」
すっかり元の調子を取り戻した様で良かった。
後はあの2人も戻ればいいのだが…。
「あれって戻せるのか?」
「トトーナとお姉ちゃんが居たら出来るかも…」
「分かった。後で呼んでおくからやれるだけやってみてくれ」
「分かりました!」
「なら私も一緒に見ておこう」
ミディーヴァが胸を張って自信満々に言ってきたので断る理由もなく頼んでおいた。
そしてマニとトトーナを呼んだ後、小屋から何故か女性陣の悲鳴が聞こえたとかそうでないとか…。
…
……
………
夜になって崖に囲まれた村でも空を見上げれば綺麗な満月がきちんと見える。
皆が修行や建築などで疲れ果てて眠りこけている中、虫の音に混じって奇妙な音が村の隅の一角から響いていた。
キャコキャコキャコキャコ!…バキン!
「よ、ようやく切れたか…」
袖の部分に隠してあった小さな金属製のノコギリを使い、鎖の古くなっていて特に脆い部分を延々と切り続けて2時間…ようやく切れた。
「あいつら…なぜ助けに来ないんだ…やはり金が目当てで自分が危なくなったらさっさと逃げやがって、クソッ!」
まさか精神を壊滅させられているとは思わずカイとカメロの評価を最低まで下げると自由になったウッソはその場から逃げ始める。
誰も居ない事を確認して建物の影を利用し出口を探す。
「なんだ?この場所…まるで檻じゃないか……………あれが出入り口か?」
そして唯一の出入り口である洞窟を発見し魔術で簡易の明かりを付け先へと進む。
そして何の障害もなく洞窟を抜けて拍子抜けした…。
「は、ははは!なんだ!大したことないじゃないか!馬鹿め!何時かもっと人を連れててめぇらをぶっ殺して内蔵引き摺りだして食わせてやるよ!あーはっはっは!!!」
"クスクス…"
"もう、静かに…"
"ごめんごめん…"
「誰だ!?」
ウッソは明かりを強くして先程拝借してきた模擬剣を構える…。
「………………………気の所為か…」
"クスクス…"
「そこか!!ブーメランスロー!!」
ウッソが投げた剣は弧を描いて草むらを薙ぎ払い手元へと戻ってくる…辺りに草の青臭い臭が充満してきた…。
"あははは!残念!"
"うふふふ!残念!"
"ストーンロケット!"
"ストーンロケット!"
ウッソの前と後ろの茂みが揺れ、何かが飛んできたと知覚した瞬間にはもう遅かった…。
ゴツッ!!!
適度な大きさと驚きの精度で飛んできた岩の礫はウッソの足と足の間にぶら下がる"アレ"を前と後ろから挟み潰すように直撃して、あまりの衝撃で砕け散った…。
「はぁぅぉあ1?!&:13(!?!?」
ドサッ…
視界がスパークした様な錯覚と脳天まで突き抜ける激痛が意識を一瞬で刈り取り、ウッソは股間を抑えながら前のめりに倒れ、尻を突き出しながら泡を吹いて気絶した…。
ガサガサ…
「お、恐ろしいなお前ら…」
「しょ、小吉君…間違っても俺にあの子達をけしかけないでくれよ…」
「そ、それだけは絶対にしないから安心しろ…」
草むらから股間を抑えた小吉とコルオが出て来て、考えただけで恐ろしい激痛に戦慄する。
"あははは!楽しいー!"
"うふふふ!楽しいー!"
「みろあの無邪気な喜び方…」
「…君の子だろ?」
「うちの子にあんな恐ろしい子は居なかったと思うけど…」
"見た見た!?"
"見た見た!?"
"ぶちゅ!!ってなったよ!!"
"凄かったぁ!多分折れたよね!?"
「「あぁ、もうやめなさい!!」」
考えるだけで下腹部が痛くなってきた…。
あれはもう確実に子孫を残す事は不可能だろう…一族滅亡である。
復讐としてはもう十分だ…というより改めて考えるとやり過ぎたかもしれない…。
"後は森の外の街道に置いておけば良いんだよね?"
"運が悪かったら魔物に食べられちゃうかもね!"
「あぁ、それでいい…後はあいつらだな…」
「あぁ!!待ってくださいっす!!姫様達ー!!!」
「はぁはぁ…天使様ー天使様ー…」
「きゃぁぁ!?」
「来ないでー!!」
「お姉ちゃん!早く魔術魔術!」
どうやら睡眠の魔術が切れた様で例の2人がまた暴走したらしい…。
一体マニ達が何をしたのかは知らないが賊から変態に変わったところを見ると絶対に碌な事じゃないと思う…。
「さっさと飛ばしてくれ…みてられん」
"あいあいさー!むぅーー……えい!!"
"あいあいさー!むぅーー……えい!!"
ノエルとシエルが何かをしたと思ったらいきなり突風が吹いてきた…そして…
ゴォォォ!!!
ウッソの下から竜巻が生まれ彼を吹き飛ばしてゆく…、少し向こうでも同じような竜巻が上がってる所を見るとあの2人もこの絶叫災害に巻き上げられた様だ。
「あぁ!!姫様ぁー!!!」
「天使様ぁー!!!何でもしますから私をぉぉ!!!」
「ウチの子に付いていた悪い虫がようやく飛んでいったぜ…」
「やったのは小吉君の子たちだけどね」
手を下したのはノエルとシエルだがやり遂げた感を出して額を拭う小吉であった。
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ザッザッザッ!!
ガラガラガラガラ!
森の外の街道を数名の馬に乗った兵士とその後ろの馬車で構成された見回りが走っている。
「ったく…何で俺達がこんな場所で見回りなんか…」
「早く戻って一杯やろうぜ」
「だな…」
ズドン!バキバキバキ!!
「「!?」」
突如後方の馬車から破壊音が聞こえて、しっかりと見回りをしていた前の数名の兵士は困惑し後ろを振り向く。
「おい!何があった!?」
「隊長!そ、空から人が降ってきました!!」
「なんだって!?全隊止まれ!」
最前列に居た隊長が後ろの馬車へ急ぎ確認する…馬車の天井は無惨に壊れ中の物資も半分程壊れてしまっている…そして後ろのカーテンを開けると…
「な、なんだこいつら…」
「あぁ…姫様ぁ…どこ行ったっすか…」
「天使様…卑しい私目に罰をぉぉぉ」
「ぶくぶくぶく…」
変な目でキョロキョロする者、野盗に近い格好で両手を組んで祈る者、そして泡を吹いて股間を抑える者がいた…胸にはそれぞれ変質者、狂信者、犯罪者と書かれている。
カオス過ぎる光景があまりにも面倒くさくて隊長はカーテンを閉めた…。
「はぁ…始末書だな…」




