83 川遊び
"あははは!"
"うふふふ!"
「まてぇー!!肉共ー!!」
マニが未だ必死になって2頭の兎を追い掛けている…。
スピードはマニの方が上だが追い掛けられている側と追い掛ける側では断然違う…兎達のトリッキーな動きに翻弄されてマニのストレスが溜まる一方だ。
"貧乳!貧乳!"
"乏しい人ー!"
"あははは!"
"きゃははは!"
「むっきー!!もう容赦しませんよぉ!!…ブリザードランス!」
堪忍袋の緒が爆発四散したマニはお得意の魔術を詠唱破棄した上で魔力による力技を使って何時もの数十倍の量の槍を生成した。
その様は最早白い壁だ…。
「今夜のおかずはハンバーグですよ!!」
"わわっ!?"
"ひゃぁ!?"
まるでマシンガンの様に槍が発射されて兎をミンチにするべく迫る…一方の兎は両手で頭を抑えて蹲っている…
"ーーなーんてね♪"
"ーーなーんてね♪"
ゴォウ!!
兎の角が光り、目の前に真っ赤な溶岩が何処からとも無く流れ出してきた。
氷の槍はその溶岩に触れると跡形もなく溶けて蒸発していった…。
"あははは!"
"きゃははは!"
"これ返すね!"
"これ返すね!"
「!?」
兎の上に馬鹿デカイ氷の楔が召喚され、急激に周囲の気温が低下し始めた…。
"えい!"
"えい!"
「お姉ちゃんを舐めるなです!!」
マニが地上に降りてメタモルフォーゼを解き、まんじゅう形態に戻ると想像魔術で硬化した土のブロックを周囲に幾つか浮かせる。
「ーーーー!!」
(ドリルストライク!!)
そしてブロックに乗るとそれを足場に、全身をバネとして使い全力で戻す。
ガギャァァァァン!!
独特の音と氷を削る音が響き、それを削る…。
"?"
"?"
しかし狙いは中心から外れて側面の辺りを削っている。
そして削り抜けた先で別のブロックに当たる瞬間回転をやめてその足場を使いまたドリルストライクを放つのを繰り返してゆく…。
ガギャギャギャギャァン!!
ものの数秒で氷の楔が削られ近くにあった川に落ちる…。
バシャーン!!
「ふぅ…」
"わぁ!!凄い凄ーい!"
"わぁ!!凄い凄ーい!"
氷は見事なリンゴの氷像に生まれ変わっていた。
どうやってやったのか完璧にへたまで再現されている。
「ふふーん♪どうですか?私には適わないのです!」
"あははは!"
"うふふふ!"
"それはどーかなー?"
"それはどーかなー?"
…
……
………
バシャバシャ!
バチャバチャ!
「冷た!?やったな!」
「のほほーんとしてるライアーさんが悪いんだよ♪」
「のほほーんとしてなどいない!」
「ひゃ!?この!お返しー!」
「おっ!みろイナリ!カニが居るぞ!」
「カニですか?どうせ小さいーー」
ジャキン!ジャキン!
イナリが振り向くと全長2m位の巨大なカニが「ふぉっふぉっふぉっ!」という何処かの星人よろしく自慢のハサミをチョキチョキしていた…。
ジャキン!!
「わひゃあ!?」
巨体に似つかわしくない素早さで繰り出されたハサミがしゃがんだイナリとミディーヴァの上で鋭利な音を立てて閉じる…。
「あははは!よく切れそうだな!」
「笑い事じゃないよ!!これ完全に餌って思われてるよ!?」
「いや、もしかしたら私達の下着を切りたい変態なカニかもしれないぞ」
「それはそれで嫌!!」
(ふぉっふぉっふぉっ!)
ジャキン!!ジャキン!!
「らんららん♪」
「偶にはこうやってのんびりするのもいいですねー」
「あら?楽しそうねトトーナちゃん」
ライアー達やイナリ達の騒ぎを見ながら川に足だけ入れてトトーナとフラールが寛いでいると暇になったリンネがやってきた。
「うん!みんな楽しそうだからトトも楽しいの!」
(どうしてトトーナちゃんはこんなに純粋なのにどうして小吉さんは…)
「トトーナちゃんは本当にいい子なんですよ!ねー!」
「ねー!」
「じゃあそんないい子には後でお菓子を作ってあげますわよ」
「お菓子!?欲しい欲しい!!」
「後で…ね?」
「むぅ…」
ザァーー!!!
「「「え?」」」
突然川が異常な速度で増水し始め、慌てて川辺に居た3人が退避する…。
「え!?何事なの!?」
「落ち着けセリス!とりあえず岸に上がるぞ!……って冷た!?」
「あっ!カニーー!!!」
「ミディーヴァさん!カニよりも岸ですよ!!……わひゃあ!!?つつつ冷たい…」
バサバサ!
「お姉ちゃん達!トトに捕まって!」
ちょっとばかし不味いと感じたトトーナが助けにきた…、足に捕まった2人を引き揚げて岸に連れてゆく。
…
……
………
「あぁあぁぁぁ…さむぅぅいぃぃ…」
尻尾の先までびっしょり濡れたイナリが全身を震えさせ、焚き火にあたりながら呟く。
震えているのはライアーもセリスも一緒だ…。
「ななななんでミディーヴァはそそそそんなに平気でいられるのよ!!ど、どう考えてもあれ氷水だよ!?」
「ははは!お前達は修行が足らんのだ!」
「はぁ…ライオネル…お前こんなにも暖かかったのか…」
「…………暖房代わりに使われたなぞ他の精霊から聞いたことがないぞ…」
「わーい!もふもふー!!」
「ふふふ…じゃーん!!こんな事もあろうかとケイリスさんからスープを貰っておきました!」
「あら?気が利きますわねフラールさん」
みんながが口々に用意の良いフラールに賞賛の声を飛ばしていく。
特に最後に氷水に浸かってしまった3人はかなり嬉しそうだ。
「でも器を忘れました!!」
…………
あまりにドヤ顔で堂々と叫ぶので一瞬駄目な情報には聞こえず、沈黙が流れる…。
「う、器…?」
「忘れました!!……ってみなさーん?顔が怖いんですけど…悪いのは私じゃないです!(はっ!そうだ!)そうです!悪いのはラッツさんです!意地悪されて器を持っていかれたんです!」
「ラッツが?」
……………
「「「嘘をつくなぁぁ!!!」」」
「ごめんなさーい!!」
「ちょっとお行儀悪いけどもうそのまま飲んじゃおうよ!」
寒さに耐えきれなくなってきたイナリがぷるぷるしながら提案する。
一同も「まぁ仕方無いか…」とその案を飲もうとしたが…
「あ。鍋ごと持ってきたので多分無理ですよ。ほら」
フラールのこの言葉で再び空気がどんよりとし、フラールが指した先を見た一同が唖然とする…そこには布からはみ出たドラム缶の半分ほどの大きさのどう見ても炊き出しとかに使う鍋があった…。
(なんか一人だけ大荷物だと思ったら…)
(まさかフラールが此処までアホの子だったなんて…)
(そもそもなんて言って借りてきたんだ?)
もうこの子は色々手遅れだと諦め始めたその時…
ゴゴゴゴ…ズズズズ…ズシン!
川上から何か大きな物が流れてくる音がしてみんなが一斉に振り向いた…
「は?」
「り、リンゴ?」
「2個もあるけど…」
直径6m程の溶けかけた氷のリンゴと直径4m程の丸い氷の球がゴロゴロと転がってきたのだ…。
「どう考えてもアレが原因っぽいな…」
「だね…」
「でも何であんなのがこんな場所にあるのでしょうか?全く分かりませんわ…」
「ん?何か聞こえない?」
「………セリス、私には聞こえないぞ」
「…ーい……」
「ほらまた!」
「セリスは耳がいいですからね…わたくしにも聞こえませんわ」
「おー…!!……けてー!」
「ん?なんだろう…あれ…………あっ」
イナリが川上を凝視していると何かを発見した様だ…。
他の仲間も川上を良く見てみてそれに気が付いた様だ。
「おーい!此処です此処です!助けてくださーい!!」
川上から流れてきたのは綺麗なボール状の氷に閉じ込められたマニだった…。
半泣きで氷をバンバン叩いているが岸に居る仲間達は唖然としていてただただ流されるのを見守っていた。
アレが大きい順に上から並べると…
リリー(擬人化時)
↓
リンネ
↓
フラール、ミディーヴァ
↓
トトーナ
↓
超えられない壁
↓
マニ、ライアー、セリス




