81話 隠し事の多い神様
「あれ?知り合いだったのかい?」
「知り合いなんかじゃない…あれはただの辻斬りだ!」
「…………じゃあお前は辻斬りの言う通りにしてハンニバルを助けたのか?」
「そ、それは…」
「ご主人様?あれは誰なんですか?」
「知らん!」
「…………ヌルだ」
「いやぁ、何時聞いてもヌルの名前は気持ちが悪いね!」
「…………ふん」
「お待ちしてましたよヌルさん。…香茶とプリンはどうですか?」
「…香茶だけ貰おう」
「分かりました。…はい、どうぞ」
「いやいや待て待て!なんでコイツが此処に居るんだよ!?」
椅子から立ち上がり殆ど文句に近いような声を上げる。
「……俺がお前らを呼んだんだよ」
「俺が説明するよ…ヌルが言うと絶対にややこしくなるから」
「……任せた」
ヌルの前にアルメラが出てきて小吉がヌルに噛み付かないように間に入る。
そしてその顔が急に真剣なものに変わった。
「さて、何処から説明したものか…君達の世界がゲームだったっていうのは聞いた?」
「聞いた」
「そんなにピリピリしないでくれよ。ヌルはただぶっきらぼうで誤解を受けやすいだけなんだ。…で、駒がどうこうっていうのは?」
「聞いてなーー」
「まだ聞いていませんよ!…ささ、ややこしくなるのでご主人様は座って私のプリンでも食べててくださいね」
全く反省の色が無い小吉をマニが椅子に座らせて20分の1程しか残っていないプリンを差し出す。
「………………ふっ」
「ヌルさんも笑うんですね!」
「じゃあ本題に戻るけど、クロトとダスターが小吉君の体を魔力が使える様に作り直した時にベースとして使ったのは一般的なあの世界の住人の物だ。それは汎用が効くけどそれだと内包する過剰な魔力には耐えきれない。現に今の君達はそんな感じになりつつある」
「…このままだとパンパンの風船に無理矢理空気を入れる様な物って事ですか?」
「察しが良いねマニちゃん!つまりはそういう事だ!クロトちゃん達とは個人的に付き合いがあるからその尻拭いをしてあげようって訳。OK?」
「いやいや全然OKじゃないしそもそも聞きたいことが山程あるんだが…」
「OKなんだね!いやぁー話が分かる奴で良かったよ!はい、戻ったらこれみんなと飲んでね」
具体的にはこいつら何者だとか、なんでヌルが襲ってきたとかそれはもう山程ある。
しかしアルメラはそんな事知らないと言わんばかりに錠剤の入ったビンを渡してきた…。
「1個飲むだけで十分だからね!残ったら好きにしてくれて構わんよ!じゃあまた機会があればよろしく!」
パチンっ!
「は?」
「え?」
呆れる程に好き勝手に捲し立てたアルメラが指を鳴らす…すると足元に穴があいて小吉と飛んでいた筈のマニが落ちていった…。
「うひゃぁぁー!!?」
「お前ぇ!覚えてろよぉー!!!」
穴が閉じて小吉の怒りの叫びがシャットアウトされた…。
途端にアルメラの態度が180度変わって冷めた目に変わる…。
「さて…どういう訳か聞かせてもらおうか?"Null"君?」
アルメラが何処からともなく幾何学的な紋様が沢山付いている銃に似た物騒な物を取り出しそれをヌルに向ける。
「教授!?」
「俺の後ろに居ろウルル。…これでいいんだろ?君の言われた通り錠剤も渡した…中身もきちんと小吉君に説明した物と同じだ。だけど何故君がその事実を知っている?クロト達がそれを言う訳が無い以上君が知っている事は有り得ない」
「……言えんな」
「なぜだ?」
「……口は災いの元って言うだろ?」
「貴様…」
ジャキ!!
「……お前を此処で殺すのは致命的だ。降ろしてくれないか?」
「ほぉ…俺がここで死ぬと致命的なのか…ならーー」
ズダンッ!!!
「ーー!?」
「!?」
アルメラが自分の頭に銃口を押し付けると引き金を引いた…。
飛び出した弾丸はアルメラの脳を掻き回した後貫通し、肉片がそれを追うように飛び散る。
「教授!!?」
ウルルが悲痛な叫びを上げて崩れ落ちるアルメラを受け止め何度もその体を揺する。
「馬鹿か!?なんてことをしやがったんだ!?…落ち着け…これからどうするかを考えるんだ…クソッ!!」
ヌルもまさかそんな事をするとは思っていなかった様でかなり慌てている…。
「うぅ…ぐすっ…教授ー…なにやってるんですかー?…馬鹿なんですかー?」
「馬鹿は余計だよ…」
「「!?」」
なんと本の影からアルメラが出てきた…。
「いやぁ、中々にいい反応するねnull君?その様子だと本当に俺が要るみたいだ…」
「…………クソッ!…罠か…。もういい、俺は帰る」
「はいはい帰れ帰れ。こちとら研究に忙しいんでね」
「…………また来る」
「月火水木金土日は休みだから来んなよ」
「…あぁ知ってる」
そう告げたヌルは黒い煙に包まれその場から消え去った…心做しかフードでよく見えない顔の口元が綻んだ様な気がした。
「薄気味悪いな…」
「………教授ー?」
「なんだウルーー」
振り返ったアルメラは絶句し、頬がピクピクと引き攣った…。
後ろには目に涙の跡を残しつつも普段の表情を出し、般若の幻覚が見えるウルルが居た。
「あぁ…これは…そのー…あれだ!作戦って奴です!別にウルルがガチ泣きしてるのなんて見てないから!」
「////!?!?…教授のアホー!!!」
頬を赤くしたウルルがそう思いっ切り叫ぶと本棚から一斉に本が飛び出し、精密な動きでアルメラを袋叩きにする…しかも角を重点的に使って。
勿論壮絶な悲鳴が響いたのは言うまでもない。
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上下左右が星星に囲まれた自身の神の庭に戻ってきたヌルは溜息を付いた…勿論アルメラの自殺劇に対してだ。
「主様…大丈夫?」
それを心配したのか何処からともなく身長30cm程で真っ黒な刺々しい甲冑を着た羽のない妖精が出てきた。
「あぁ、別に対したことは無い、少し取り乱しすぎただけだ」
「でも良かったね。今までこんな事は無かったよ?」
「それはそうだが…」
「大丈夫!上手くいくって!ほら、抱きしめてやるからおいでよ♪」
どう考えても抱き締めたらトゲトゲが刺さるのに自信満々に両手を広げる妖精…。
ヌルはなんとも言えない視線をフードの下から妖精に送った。
「貧乳フェチの癖に」
「…………」
ヌルは反論しようとしたが妖精の顔を見た途端に一気にやる気が失せてやめた。
「で、しばらくは放っておくの?」
「あぁ、勿論だ。しばらく何も無いから好きにしてくれて構わない」
「やった!じゃあ主様とデートする!」
「…………却下」
「ぶーぶー!」
そのままヌルが何処かへ行ってしまったので妖精はブーイングを止めてぼーっとする。
妖精は何処か寂しそうな雰囲気に包まれていた。
メタルギアのオプスでnullってキャラクターが居たのを思い出して懐かしく感じました。
楽しかったなぁ…




