76話 旧魔王-2
中々纏まらなかった上にキリがよくなかったです…。
頭を良くする機械とか欲しいね!
「旧魔王…」
「セリス!リンネ!奴を此処で仕留めるぞ!絶対に逃がすな!」
ミディーヴァが一瞬にして間合いを詰めて抜刀する…
「ふん!!」
ゴォゥ!
「ぐっ!?」
しかしグレンデルが放った黒い霧状のオーラに吹き飛ばされてしまう…。
そしてオーラがグレンデルの周りを包み込み繭の様な状態になった…。
ピシッ…ピキキ…パリーン!!!
「やはり自分の姿でいる方が落ち着くな…」
繭が割れ、中から身長2m程の筋骨隆々なゴブリンが現れた。
身につけている物は腰巻きと簡単な具足だけ、そして驚くべきはその腕だ…右腕が無いのだ…。
「片腕!?じゃあ小吉さん達の恩人の方って…」
「そうだ!小娘共!貴様達が殺そうと躍起になっていた奴は魔王等では無い!!ただの強いだけのゴブリンだ!!正義の勇者一行が濡れ衣を被せるとは傑作だな!!」
「ふざけるな!!貴様がそうなる様に仕向けただけだろう!!」
「そうか?妄信的に神なんかの戯言を信じてそれが正義だと他の事を一切考えなかったお前達も同罪ではないのか?わはははは!!」
「わ、わたくしたちはなんてことをしてしまったのでしょう…」
「聞くな!リンネ!奴の策に乗るなーー」
「ーー余所見をしていていいのか?」
「っ!?」
ドンッ!!!ズガーン!!
一瞬後ろを振り向いたミディーヴァをグレンデルが殴り飛ばし有り得ない様な勢いで壁に叩きつけられた…。
「ミディーヴァ!!!」
セリスの悲痛な叫びが響き震える手で弦を引く…。
「へビィスナイプ!!!」
焦って狙いが曖昧になってしまったがギリギリグレンデルに当たるルートに矢が放たれる。
「ふんぬぅ!!!!」
ゴォン!!!
なんとグレンデルはその強力な破壊力を持った矢を左手で受け止めてしまったのだ!
「…え?」
「ほう、中々の威力だ…流石に左腕がイカれた様だ…。お返しだ…」
ブォン!!
「うぐっ!!?」
グレンデルとセリスの距離は十分にあった筈なのにセリスが後方に大きく吹き飛び岩の壁を粉砕して通路に投げ出される。
「うぅ……ぐぅっ!?…」
グレンデルは最後に蹲ってしまっているリンネの頭を掴み上げる…。
「どうした?恐いのか?恥じる事は無いぞ、危機感というのは生き物の大事な機能なのだからな。それのおかげで絶対強者に対峙した時に生きて逃げる事が出来る様になる。しかしお前達はそうしなかった…愚かだな…、もっとも逃がしはしなかったがな…くくくく」
ミシッ…
「うぐぅ…んん!!」
リンネが必死に腕を振り解こうとするが足が浮いて上手く力が入らず、振りほどけない…、恐らく足がちゃんとついていても到底振りほどけるものではないが…。
「………つまらん」
リンネに興味が無くなったグレンデルは部屋の隅にリンネを放り投げようとした時…
「ストライク!!!」
ドゴンッ!!
「ぐふっ!?」
グレンデルの背中に大きな衝撃が走り前のめりに吹き飛ぶ。
リンネの拘束が解けるが宙に投げ出される。
「よっと!!」
しかしふわふわと浮遊する少女、フラールによって受け止められて床に落ちる事は無かったが気絶してしまっている。
グレンデルが少し笑いながら今自分に攻撃を仕掛けた人物を確認しようと振り向く。
「くくく…今のは効いたーー」
「雷光!!!」
振り向いた瞬間凄まじい光がグレンデルを襲い、一時的に目を潰す。
「トトーナ!」
「うん!」
その隙を逃す筈が無く、翼にブレードを生成したトトーナが仕掛ける。
シュシュシュシュシュン!!!!
音速による連続攻撃でグレンデルの体に浅いながらも無数の傷が出来上がる。
「小癪なぁ!」
グレンデルが大きく息を吸い込んで何かをしようとした瞬間…
「すぅー…………はっ!!!」
鞘に収まっている愛刀を構えて集中をしていたイナリが一瞬にして間合いを詰めすれ違いざまに必殺の居合いを放つ。
ザシュ!!!
「がぁ!?」
左脇腹を大きく切り裂くがすぐに傷口が塞がってゆき、少し血が流れただけにとどまってしまう。
しかし大きく仰け反った事で更に大きな隙になる。
「ノーム君!手伝って!」
「いきます!!」
「ライトニングウェポン!!」
小さなノーム人形のトンカチとマニのナックルにライアーとライオネルの補助が加わりスパークを起こす。
「やぁ!!」
「ふぉ!!」
そしてノームとマニはグレンデルの頭目掛けてそれこそクレーターを容易に作り出す強烈な一撃を放った。
ズゴゴゴゴーン!!!
凄まじい打撃を受けたグレンデルが吹き飛び部屋の奥側の岩壁を砕きつつめり込んでいく。
ゴゴゴゴゴ…
パラパラパラ…
「この洞窟崩れるんじゃないのか!?」
「よ、良く見たら天井にも通路にも穴がありますよ…」
「と、とりあえず脱出しようよ!!」
「フラールはリンネを!ライオネルはミディーヴァを!マニとイナリでハンニバルを頼む!」
「承知…」
「「はい!」」
ライアーがセリスを背負うと一目散に洞窟の外に向かって走り出す。
道中のゴブリンも異変を察知したらしく慌てて逃げている。
「はぁはぁ…」
そしてようやく洞窟の外に出た時地響きを立てながら洞窟が崩れていく。
外は簡素な建物が沢山あり、篝火が所々にあるので視界は確保出来ている。
「ナンダ!?ナニガオコッテル!?」
「トニカクニゲロ!!」
不幸中の幸いか、ゴブリン達はこの異常事態についていけてないようでライアー達の事は完全に見えていない様だ…。
「はぁはぁ…みんな無事の様だな…」
「は、はい…ご主人様達も無事だといいですけど…」
「小吉さんとコルオさんもきっと異常を察知して安全な場所に居ると思いますよ!」
「セリスお姉ちゃん達は大丈夫なの?」
トトーナの心配そうな声ではっとする一行…。
「うぅ…」
「セリス!?大丈夫か!?」
「…しくじってしまいました…うぐっ…」
………ヌル…
「はっ!?」
先程は気が付かなかったがセリスのお腹の部分には鋭利な物で斬られた様な大きな傷があり、そこから血が溢れている様だ…。
「マニ!傷薬を!私の魔術じゃ追いつかない!」
「へ?ーーは、はい!!」
ライアーは急いで地面にセリスを寝かせて壊れた装備と破れた衣服を退けて治療を施す…。
(さっきは瓦礫に埋もれかけていたな…まずは岩の破片を取り除かないと…)
「マニ!破片を取り除く!水を使うのは得意だろ?」
「やってみます…」
「セリス、少し痛いと思うが我慢してくれ…」
「いきますよ……すぅ〜、…っ!!」
マニの周りに水球が発生して、さらにそこから幾つかの水の触手が伸びてセリスの傷口に入り込む。
「ーーーーーっ!!?」
流石に耐え難い痛みの様でセリスが暴れようとするがすかさずライアーが押さえ付けていく。
「……………終わりました!」
不純物の混ざった赤黒く変色した水の触手が元の水球に戻っていって近くの地面に吸収されていく。
そしてすぐに傷口を閉じて薬を使い回復魔術を行使していく。
「はぁはぁ…」
「よく頑張ったなセリス、後は任せろ」
「ふふ、ごめんなさい…ありがとう…」
セリスは苦笑いをしながら体の力を抜いて横になる。
「ライアー!この地響きは何だ!?一体何が起こってる!?」
茂みの奥からラッツとリリーとナノ達が出てきた。
どうやら洞窟が崩落した音を聞きつけて来たらしい。
「ラッツ、ちょうど良かった。セリス達が今は戦えない…だから治療を頼む」
「分かった。そっちはどうする?」
「私達は小吉とコルオを探す」
「行きましょう!ライアーさん!」
「あぁ…」
ゴブリン達がパニックに陥っている中を走り出そうとした瞬間…
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
「え?」
ズドォーン!!!
突如山の一部が吹き飛び、大きな岩が数個木造のボロ小屋や篝火を壊してゆく…。
そして火が燃え移りより周囲が明るくなる。
「うぉぉぉぉぉぉ!!!!蛆虫共めが調子に乗るなぁァァ!!!!」
燃え上がる炎に薄ら照らされてグレンデルが山の上に立って怒りに満ちた声を上げた…。
「あいつはさっきの!?」
「凄く怒ってますけど…」
「お姉ちゃんのストレートが直撃したのに何で動けるの…」
「そこかぁぁ!!!」
「「ひやぁ!?こっち来た!!」」
全員が慌てて飛び退いた瞬間、グレンデルが地面に突き刺さる様に当たった場所が大きく巻き上がり大量の土砂が周囲に降り注ぐ。
「くくく…さっきのは痛かったぞぉ…久し振りに身の危険を感じた…」
グレンデルがライアーに向き直り獰猛な笑みを見せる。
(何だと!?傷が全て塞がっている!?)
「狐火!」
これをチャンスと見たイナリが後ろから狐火を放ち、狼と鷲と猿を模した炎が一斉に飛び掛る。
「甘い!今度は油断無しだ!」
グレンデルは振り向きざまに左腕を振り抜き狼の上半身をかき消す…、さらに上からの猿を後ろ飛びで避けると同時にドス黒いオーラを飛ばし猿をかき消す。
「ピュィーー!!!」
残ったオーラを風で吹き飛ばしその向こうから残った鷹がトップスピードで迫る、しかし先に動いていたのはグレンデルの方で、軽く2m程ジャンプした所から体を捻り思いっ切り脚を振るう。
シュンッ!!!
「!?」
放たれたのは高速の魔力の刃で、鷹をやすやすと切り裂いた後にその向こうに居たイナリを襲う。
キャンッ!!
「っ…!」
その魔力の刃を刃の方向に沿って断ち切ろうとしたが殺し切れなかった僅かな魔力がイナリの肌を切り裂き髪が数本切り落とされる。
「もう一度山にめり込ませてあげます!…ブリザードランス!」
マニの周りに1m程の氷の槍が6本形成され順番に射出されていく。
「甘い!甘い!!甘い!!!我を負かした勇者はこんなものでは無かったぞぉ!!」
1本、2本、3本と壊してゆき、最後の1本を破壊しようとした瞬間…
♪〜♪♪〜♪〜〜
トトーナの歌声が響き、僅かながらに狙いを外した左腕をすり抜け氷の槍がグレンデルの左肩に突き刺さる…そして、
「やぁぁ!!!」
小さなマニが氷の槍の後ろに隠れていて、振りかぶった右ストレートをグレンデルの鼻っつらに叩きつける。
「何が甘いんでしたっけ?」
何とか踏ん張り、よろよろと体勢を立て直したグレンデルは折れた鼻を元の位置にずらし呟いた。
「…ふふふ、これは気持ちがいいな」
「「「え…?」」」
予想外の反応で驚きのあまりに目が点になる。
「これほどまでに高揚する相手に出会えるとは運が良かった…。両腕が揃っている方がもっと楽しめただろうが…。ん?…そうか!ふはははは!!素晴らしい!神は私に味方していたのだな!!!」
ズドォーン!!!
「「どりゃぁぁぁ!!!!こんのクソワン公めがぁ!!!」」
突然地面が爆発しそこから得体のしれない薄ら黄色い半透明のスライムっぽい物体が飛んできて、更にその下からは小吉とコルオが土塗れになりながら剣を突き立て一緒に出てきた…。
ドチャ!!
「おぉ!小吉君!外だ!外に出たぞぉ!」
「うおっ!?本当だ!脱出成功ーー」
「「ご主人様!」」
「パパ!」
「のわっ!?…あれ?お前達?どうしたんだ?いきなり飛び付いてきて…」
「うわぁーん!!もう!皆本当に心配したんですよ!」
「小吉…無事だったんだな…。だけど今はそれどころじゃない…。マニも泣いてる場合じゃないぞ…」
若干目が潤んできているライアーは無理矢理気分を切り替えて敵を視界に納める。
「ふはははは!!わーはははは!!笑いが止まらん!魔王がこれ程笑うなんて歴史上初めてじゃないのか?あはははは!!」
「なんだ?あの筋肉ダルマは?」
「あれもしかして小吉君達の恩人じゃないのか?」
「違うわ!ハンニバルの顔の面影は確かにあるがあんなに狂ってはいない…」
「ふはははは!!アーティストを吸い尽くしてきたキメラスライムよ!我に仕えよ!!」
未だ狂った様に笑っているグレンデルが懐から何かを取り出しキメラスライムと呼ばれた薄黄色の不完全ライオンスライムに投げ付けた…。
「あぁ!!何でアイツがあのビー玉持ってんだよ!?」
「え…それってヤバイんじゃ…。ちょっとライアーさん状況説明をーー」
「ゴガァァァ!!!!」
キメラスライムに宝玉が触れるとそこから徐々に半透明から光沢を帯びた金属の様に変化してゆき、不完全だった形もライオンのそれに変わってゆく…。
「はははは!………キメラスライム、俺の右腕になれ…」
完全に金属の様に変化したキメラスライムがグレンデルに飛び掛り右上半身と顔の一部に
広がっていった…。
「ぐっ…そうだ、俺の体の一部と融合しろ…」
「せいっ!!!」
ゴォォォォン!!!
と、そこへ小吉が結構な出力で魔装具の鞭を振るい、台風を極小に圧縮したような暴力的な竜巻がグレンデルを襲う。
「「「「は?」」」」
「いやいやいや、は?じゃないだろ…どう考えても変身してパワーアップしそうだったろ!?逆になんで待ってんだよ…」
「くくく…余程貴様は死にたい様だな…安心しろ、ちゃんと地獄に送り付けてやる…」
巻き上げられた土煙を振り払い奥からグレンデルが出てくる…。
顔は右半分が鈍い銀色のライオンの様になっていて、足や体の右半身以外の部分にも僅かながらに鈍い銀色の部分がある…、そして1番目に付くのが本来なら右腕がある位置にある太い二の腕と肘から先に生えた3本の鋭く長い2m程の刃の様な爪だ…。
「さぁ、宴の始まりだ…」




