71話 潜入
小吉達一行はナノ達を回収し勇者一行と森の奥を目指していた。
しばらくすると疑問が顔に浮かんだライアーが話しかけてきた。
「なぁ、小吉。さっきは頭を下げてあんなこと言っていたが何かハンニバルをどうにかする算段は付いているのか?」
「殆ど分かっていないが試してみたい事はある。あの廃墟の村につく前にゴブリン達が何か叫んで逃げていただろ?」
「…確かホウコクーとかニゲローってやつか?」
「あぁ、その中に"シサイ"って言っていた個体が1匹だけ居たんだ」
「シサイ?」
「そうだ。もしそれが宗教上の司祭だとすると…」
「…!?…洗脳?」
「あくまで予想だけどな」
この世界の司祭は基本的に魔術に特に長けた生物が付けるクラスなのだ。
ゴブリンにもクラスがあるとするなら有り得ない話では無いはずだ。
「それにマニのさっきの話しだ…、誰かの囁く様な音ってのはそれの可能性が高いと思う」
「ほぉ…本当は頭良いんだな、小吉」
「"本当は"は余計だ」
ポコンッ!
「あいたっ!?」
「まぁそれは置いておこう…」
そう言ってあきれ顔で後ろのメンバー達を見る…。
ドンドコ♪ぴゅーるるる♪
♪〜♪♪〜♪〜〜
(どうしてこうなった…)
「うふふ、トトーナちゃん歌が上手ね!」
「あははは!ありがとう!リンネお姉ちゃん!お姉ちゃんも歌上手だよ!」
「「「クエっ!クエっ!クエっ!」」」
「うふふ!お姉ちゃんには僕みたいに動物に似せた火なんて出せないでしょ?」
「ぐぬぬぬ…私だって水の想像魔術を使えばこれくらい朝飯前です!!」
「見てください!ラッツさん!綺麗ですよ!…アラ君も遊んできていいですよー」
「た、確かに綺麗だけどさぁ…森で火は危ないんじゃ…」
「あはは!!見ろセリス!水のカエルが居るぞ!私はこっちの火の鶏の方が好きだ。なんか強そうだからな」
「きゃぁあぁぁあぁ!?!?カエルいやぁぁあぁ!!!」
綺麗な音色と楽しげな音楽が鳴り響き、その周りを火と水の動物が飛び回っている…。
「小吉君!!君の仲間だろ!?何とかしてくれないか!?」
「どうやら大元にコルオの仲間が居るようだが?」
「綺麗だな……、そうか!この方法を使えばショーとしてゆく先々の街でお金が稼げるんじゃないか!?小吉!名案が浮かんだぞ!」
「いや!それどころじゃないから!ゴブリンの後を付ける作戦だったのに台無ーー」
「ナンダ!?オマツリ!?」
「オマツリ!オマツリ!」
「タベモノー!ハラヘッター!」
「サケ!モッテコーイ!」
どうやら予想以上に相手は馬鹿だったらしい…。
草影から出てきて変な踊りを踊っている。
「出たな!魔物め!これでもくらえ!フレアボーー」
「やめんか!!計画が台無しになる!!」
そして勇者も予想以上に馬鹿だった様だ…。
(事前にゴブリンの後を付けるって説明してたんだけどなぁ…)
とりあえずちょうどいいので契約の瞳を使いゴブリンを下僕に変えて案内させる事にした…。
ステータスに大幅な差があるからかもしれないがなんの障害もなくすんなり服従させる事が出来た。
「小吉君…君は魔物使いだったのか?」
「あ?言ってなかったっけか?」
「そんな事微塵も聞いてなかったぞ!」
「おうおう、それは失敬。でも俺もお前のクラスとか詳しく話しとか聞いてないぞ。お互い様だな」
「ぐぬぬ…流石にこれは不公平だから俺のクラスも教えてやるよ!俺のクラスはブレイブウォーリアだ!覚えておけ!」
「お前は一体何様だよ!?それに別に聞いてもねぇし!!」
「ゴシュジンサマ…ナカマ…ケンカ…ヨクナイ」
うんうん、と他のゴブリン達も頷く…。
ぐぬぬぬ…まさかこいつらに言われるとは思いも寄らなかった…。
それにゴシュジンサマって言われてなんとも言えない気分になった…まぁこいつらが悪い訳では無いのだが…、寧ろ正しいとは思う…。
でもコレジャナイ感が凄い。
(ご主人様?どうかしましたか?)
リリーの声が良い清涼剤となって頭に響き渡る…まるで鈴の様な天使の声に聞こえてきた…。
「よし!リリー!お前は今日一日俺のポケットに居ろ!」
(?…まぁいつもの事ですしいいですけど…)
「俺と小吉君が仲間だって!?ふざけてんのか!?こいつらは!?やはり今ここで消すか…フレアボム!!」
止める間もなくコルオが火球をゴブリン達に向かって投げ付けた…このまま放っておけば確実に着弾コースだ…。
ゲシッ!!
「あでっ!!?」
何故かゴブリン達の方向にコルオが飛んでいった。
見るとライアーが"やり遂げた!"みたいな顔をしていた。ナイス!
「コール!!」
次に俺が着弾地点のゴブリンを足元に呼び出す。
するとあら不思議!着弾地点にはコルオ君1人だけになりました!
ドガーン!!
「ざまぁぁぁぁぁ!!!」
爆発の範囲は小さいが威力はありそうだ…あの感じだと黒焦げかな?
「ふふふ、私も少しスッキリしたぞ。さっき小吉の悪口ばかり言っていたからな…」
「「ふふふふ…」」
(ご主人様、ライアーさん…顔が…)
「なんの爆発ですの!?」
「あぁ!大丈夫だよリンネさん!ただの花火だから!わはははは!!」
もう笑いが止まらん。
自爆とかないわぁー超ないわぁー。
「げほっげほっ!何をするんだ!」
「作戦を理解しないアホに天罰が下ったのだ!わははーーはっ!!?…いってぇーー!?」
再び笑いが出てきたタイミングで、空から吹き飛んだ石が降ってきてそれが小吉の頭に直撃した…。
「お姉ちゃん…こういうのを因果応報っていうのかな?」
「私もそう思いますよ…」
「花火終わりー?」
(駄目だ!笑うなラッツ!ここで笑えば旦那の制裁が…)
(パパ、ママ、私は今日も楽しく生きています!)
本当にマイペースな人達だと思ったフラールであった…。
…
……
………
かなり歩き日も暮れてきた。
ゴブリン達の秘密の獣道を通ったお陰でかなり早く進む事が出来、無事にゴブリンの住処を発見する事が出来た。
そしてあまりにも大人数だった為に大体2人一組になるようにしてチームを組んだのだ…。
ライアー+セリス
フラール+リンネ
マニ+トトーナ
イナリ+ミディーヴァ
リリー+ラッツ+ナノ達(お留守番)
つまり…
「なんで俺と君なんだよ…」
「それはこっちのセリフだ…」
最悪のチームが一組出来てしまった…。
当初それぞれが組みたい人と組むことになっていたのだが、時間をくれた条件が監視を付ける事だった為に勇者一行1人小吉一行1人で組むことを決めた。そして最後に残ったのがこの2人だったのだ…。
周りからは憐れな目線が突き刺さり、慰める様に変わってあげようか?などと言われたが2人のプライドが許さずにこうなってしまったのだ…。
そして今…
「シンイリ!ハヤク!ソレハコベ!」
チビゴブリンの姿で料理を運んでいる真っ最中だった。
(しっかしコルオの所は金持ちだな…まさかこんな便利な変装の為の魔道具があるとは…)
勇者一行が変装の為の魔道具を持っていたのだ。
聞いた所によるとどうやら魔王の情報自体が少ないらしく、それを集める為だとか。
という訳でちょうどいい潜入調査をそれぞれのチームがやる事になった。
(どうだ!凄いだろ?)
(うん、凄い。でもお前は凄くない)
遠くでちらりとこの二人を見たセリスはかなりの不安を覚える事となった…。




