70話 和解
「2人共!一体何をしているんです!?」
2人だけでは無い、魔王を相手に小吉さんの仲間が戦っているのに小吉さんとコルオさんが戦っている意味が分からない。
「こいつが襲ってたんだよ!」
「こいつが邪魔をしてきたんだ!」
「それでも今はそんな事をしてる場合では無いはずです!!」
「「だけどーー」」
「だけどじゃないです!!優先順位を考えて下さい!!」
そう言いつつセリスは背中の巨大な弓を構えて弦を引く…、すると太くて大きな金属の矢が現れ放たれた。
「グガァァー!!!」
ハンニバルはその場から飛び退き避けるが、その着地点にも矢が飛来する。
「ライオネル!フラール!ハンニバルの動きを止めるぞ!」
足の健を切る程度ならすぐに治せると踏んで畳み掛けるライアー達。
「すまん!ハンニバル!!」
まずライアーが電撃の槍を投げつけそれをライオネルが複数に増やす…、増えた槍はハンニバルを囲む様に左右を通過し、逃げ道を塞ぐ。
「アラ君!ノーム!今よ!」
呼び出され、命令を受けた2体の人形が全力で突撃し前から全ての攻撃を引き受ける…しかし攻撃はしていない。
(今だ、やれ!!)
「師匠!お覚悟を!」
後ろから忍び寄っていたマニがその馬鹿力を使い、首に手刀を落とす…。
「ガ…マ…ニ…ナン…グガァァガァァァァ!!!」
「!?」
一瞬ハンニバルの動きがよろけたがそれまでだった…再び何事も無かったかの様に動き出したハンニバルはその場で先程と同じ咆哮をするとマニを振り払い後ろに飛んだ。
(くっ!?動けない!?)
「任せて下さい!!」
動きを予測してあらかじめ咆哮に備えていたセリスがよろけながらも弦を引く…、今度は白く光る矢が現れ放たれた。
光る矢は途中でねずみ算式に増えていき、まるで光の壁が現れたかの様な光景がハンニバルに迫る。
「ゴァァァ!!」
しかしハンニバルは近くにあった大木を引き抜くとそれを構える…。
カンッ!ココココココココンッ!!
「グガァァァァ!!!!!」
そしてハリセンボンの様になった大木を…投げた。
「「え?」」
「へ?」
「わわっ!?」
まさかあんなにも大きな物が飛んでくるなんて思わずに思わずにその場に居た殆どの者が立ち止まってしまった…。
「「危ない!!」」
反射的に動けたのはイナリとミディーヴァだった…、イナリが咄嗟に予備の刀をミディーヴァに渡し、ミディーヴァが大木を大雑把に切り裂き、イナリとイミテーションが細かく切り裂き最後に狐火で燃やした。
「師匠!?」
「どうやら逃げたみたいだな…」
…
……
………
魔王ハンニバルが逃走した事により、俺と青年コルオだけが戦っていたが、セリスが無理矢理間に入ってきて話し合いの場を提案したため渋々乗る事になった…。
司会は平等にセリスとマニがする事になった。
「それでは何故こうなったのかを説明してもらいましょうか?」
「それはこいつが邪魔をーー」
「それはこいつが仲間をーー」
「ちょっとご主人様達…2人同時に話すの止めてくれませんかね?とりあえずコルオさんの話しを聞きましょう」
「マニ!なんでお前がこいつの肩をーー」
「ご主人様…いい加減にしてください…」
珍しくマニが怒っている様だ…。
普段怒らない奴ほど怒ると恐いって聞くから此処は大人しくしていよう…。
「ふっ…」
(こいつ…笑いやがった…覚えておけよ…)
「ことの発端はまず俺達が奴を始末する為に戦ってた。そうしたら止めを刺す時にこいつらが割り込んできた。つまりこいつらが悪い。以上」
「じゃあ次は小吉さんの言い分を聞きましょう」
「俺達が恩人に会いに行こうとしたら凄い勢いで何かが飛んでいって追いかけたらその恩人にこいつらが襲いかかってた。助けるのは当たり前だろ?つまりこいつらが悪い。以上」
「はぁ?魔王が恩人とか君頭大丈夫かなぁ?」
「お前はあいつの事を知らないからそんな事が言えーー…魔王?」
「あぁそうだ!魔王だ!人々の害悪となる魔物の王だ!そもそもあんな言葉の通じない奴とどうコミュニケーションをとってたんだよ!!」
「有り得ない!!ハンニバル達の氏族は人間と友好的な関係を築こうと他の氏族の反対や裏切りを乗り越えて頑張っていたんだぞ!!そんな奴が魔王になんてなるはずがない!!」
「魔物が人間と友好的な関係を築こうとしてるだって?笑わせるな!!お前は魔物がどれだけ恐ろしい生き物か知らないだけだ!!」
「やっぱり話し合いなんて無理みたいだな…」
「俺もその方が早いと思うぞ…」
「「いい加減にしてください!!!」」
ゴチンッ!!!×2
どんどんヒートアップしていく2人にイラつき始めたセリスとマニが弓とナックルでそれぞれの脳天に強烈な一撃を見舞う…。
丸で頭から煙が出ている様なイメージでコルオと小吉は地に伏した…。
「一応聞きますけど小吉さんの言っていた事は本当の事ですか?」
セリスの言葉にハンニバルの事を知っている3人が大きく頷く…。
「あの…ハンニバル…師匠が魔王ってのも本当の事なんですか?」
「そうよ!本当の事よ!アレは正式に魔王と認められた魔物よ」
セリスの代わりに拘束を解かれたリンネがキレ気味に答える…。
それにおずおずとイナリが手を上げる。
「僕…やっぱり師匠が魔王になるなんて思えません…」
「君がそんなに言うなんて相当な常識人だったのか?」
「はい…ミディーヴァさんが先程みた師匠は殆ど別人の様でした…、僕とお姉ちゃんとご主人様とライアーさんは1ヶ月近く師匠達の氏族と極限状態の中で暮らして居ました…、その中では一度もあんな事にはなっていませんでした…」
「イナリの言う通りだ。私達は彼等と過ごしていた。彼等の氏族は人との関係を築こうとする第一歩として"言葉"を他のゴブリン以上に話すことが出来ていた」
「つまりあの魔王は貴方達の知っている人物だけど変わってしまったと…」
その考えで合っているとライアーとイナリとマニが頷いた…。
「いててて…ちなみにその"魔王"って言うのはどういう風に産まれるんだ?」
ようやく痛みが引いてきて起き上がった小吉が尋ねる。
もしかしたら何かしらの陰謀があるのではと思ったのだ。
「魔王ですか?魔王は聖教会の聖輝石と呼ばれるクリスタルによって告げられますわ。ちなみに勇者は聖輝石では無く教会の最高司祭によって命ぜられます。今回だとコルオさんですわね」
「…は?こいつ勇者なの!?」
「こいつって言うな!!」
「お前なんか"こいつ"で十分だわ!!」
「ご主人様…」
「コルオさん…」
「「ゴ、ゴメンナサイ…」」
「兎に角、私達は魔王を倒したい。小吉さん達は守りたい…、これではどつしようもありませんね…」
はぁ…、とセリスが溜息を付いた時、マニが手を上げた。
「あの…少し気になった事があるのですが…、私が師匠を気絶させようとした時なんですけど、一瞬正気に戻った様な気がしました…」
「本当か!?」
「分かりません…、しかしその直後に耳鳴りの様な強い感覚がしました。丸で慌てて何かを囁いている感じでした」
「そうか、ありがとうマニ。」
そう言って小吉が立ち上がりコルオ達に向き直る。
「頼む!!少しだけ時間をくれ!!」
「「「!?」」」
先程までと変わって真剣な態度で頭を下げる小吉に勇者メンバーは驚きを隠せなかった。
てっきりもっと適当な性格だと思っていたのだ…。
「…はぁ…仕方がないな。分かった。但し、俺達が監視に付く。それが最低条件だ」
「それでいい。恩に着る」
コルオは小吉の仲間思いな部分から評価を少し上方修正した。
「でもなんかやっぱりお前は気に食わんな」
そして下方修正を加えるのであった…。




