67話 予感
「セリスか…、どうだった?」
戻ってきた私にまず声を掛けたのは腰まである赤髪を垂らし、少しキツイ目付きをした私の親友であるミディーヴァだ。
比較的平和な地方ではあるが魔物が出ない事は無い…、にも関わらずミディーヴァは下はショートパンツで上はさらしを巻いた上にシャツという何とも無防備な格好だ…。
しかし愛用の大剣は傍に置いてある
「人が居たから此処は危ないって忠告しておいたよ。でも彼らなら普通に魔王からでも逃げれそうだったけどね」
「そんな手練だったのか?」
「結構ね…私でも半分しかステータスが見れなかったからね…」
「なっ!?なんでそんな奴らが此処に…まさか魔王に挑むつもりか!?」
「違うよ…、なんか知り合いがこの森に居るんだって。あっ!ちゃんと魔王に会ったら逃げるって言ってたよ!」
「なら安心だな…」
「うぅ…寒っ…」
最近少し冷えてきたので私もミディーヴァの横に座って火を眺める。
「…ミディーヴァは寒くないの?」
「いや全く…。セリスは鍛錬が足りないのだ」
「むぅ…私もちゃんと日々の鍛錬はしてるよ…」
むっと頬を膨らませて抗議する…しかしミディーヴァは全く動じないばかりか私の頬を摘んで遊び出した…。
「ふふっ…」
「わ、笑うなぁ!」
「……あら?セリス戻ってきてたのですか?みんな心配してましたのよ?」
「そうだぞ。単独行動は危ないって昔っから言われてるだろ?」
森の方角から2人の男女が歩いてくる。
1人はさっき私に"声"を届けてきた水色の長髪とゆったりとした薄緑色のローブが特徴である幼なじみのリンネ…、もう1人の青年は聖教会が正式に認定した"勇者"である。
「ごめんなさいコルオさん…」
「でも無事だったならそれでいいよ…、まぁ君に傷を負わせれる魔物なんて殆ど居ないと思うけどね」
「ふふっ、確かにな」
コルオとリンネも焚き火の周りに座って防具を外し、それぞれの獲物である杖と剣を纏めて置いておく。
こころなしかリンネとコルオの距離が近い気がする…。
「…どうしたセリス?そんな変な顔して?」
「へ、変な顔じゃないもん!はぁ…ミディーヴァは鈍感過ぎるのよ…」
「?」
ミディーヴァは本気で分からないらしく少し首を傾げている。
考えてもやっぱり分からなかったのでミディーヴァはコルオに成果を尋ねた。
「それはそうとコルオ、偵察はどうだったんだ?」
「偵察?」
「あぁそう言えば…セリス居なかったからな…コルオとリンネで森へ偵察に行ってもらってたんだよ」
「ごごごごめんなさい!そ、それって本来私の仕事ですよね…?」
「別に気にしないでいいよセリス。俺達でも欲しい情報は見つけれたからね」
「ふふっ」
リンネが勝ち誇った様な顔をしてきたので自分でも意識してない所で少しムッとしてしまう。
「魔王は間違いなくこの森に居る…、多分かなり深い所に居るみたいだ。だから明日の朝に入っていって夜に野宿になると思う…」
「そろそろ温かいベッドで寝たいですわ…」
「私は野宿でも全然問題ないよ!どっかのお嬢様と違って逞しいからね!」
「私も野宿は好きだな。なんだかワクワクする」
「で、明日は結構歩くと思うから今日はもう寝ようか。リンネ、結界よろしくね」
「お任せください。すぅ〜……♪〜♪♪〜♪〜〜」
薄い水色の膜が形成されて安全な領域が確保された。
「むぅ…態度はムカつくけど相変わらず歌は上手いね…」
「セリス…一言余計です…」
リンネもセリスも口ではこうだが相手が本心から言っている訳では無い事を知っている。
いわばじゃれてる様なものなのだ。
「うぅ…最近少し寒いな…ミディーヴァはよくそんな格好で居られるな…」
「「はっ!?コルオさん!一緒に寝ましょ!!」」
見事にハモった2人は顔を見合わせている…2人の間に強烈な火花が散る。
「や、やっぱり私も少し肌寒くなってきた…私も一緒にいいか?」
…
……
………
「君達…俺の毛布じゃなくて自分の毛布はどうしたの?」
完全に毛布の幅が足りてなくて端にいるミディーヴァが凄く寒そうだ…。
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「ふぇっくしょい!!」
「ご主人様、風邪ですか?」
「いや、なんかこうハーレム的な夢を観た気がして鳥肌が…」
翌朝、あれ以降結局村に誰も来なかったので一行は森に入って目的のハンニバルの村へ向っている最中だ。
「僕思うんですけど女性8に対して男性3ってある意味天国ですよね?」
「そうなのか?小吉?」
「いやいやいや、その頭数の中にクルー3匹混じってるのはおかしくないか?それにネズミだしゴーストだしちびっ子だし」
(((クエっ!?)))
(えっ!?)
「なっ!?」
「むっ!?」
(あっ。旦那死んだかな?)
「とゆうわけでこれはハーレムではございませーん!以上!証明終了!…………ん?どうした?そんな怖い顔しーーぎゃぁあ!!?」
マニに空中に打ち上げられ、リリーの尻尾からの真空刃が追い打ちを掛け、フラールが上空から地面に叩きつけ、最後にナノ達クルーが囲んで袋叩きにしている…。
「やりましたよ!トトーナ!ライアーさん!僕達は合格みたいです!」
「やったー!やったー!」
「…ほっ」
「た、助け…て…」
「いや、今のは旦那が悪いと思うぞ…」
…
……
………
「あぁ…なんで朝からこんなにも疲れないといけないんだ…?」
軽くボロボロになってる小吉を先頭にかなり奥まで入ってきた一行…と、その前に見覚えのある魔物が現れた。
「ご主人様、ゴブリンですよ!」
マニが示す先を見ると見覚えのある様な無いようなツルンとした頭に尖った耳と鼻が見えた。
「……あれは違うな。ハンニバル達の氏族じゃない…確かハンニバル達の氏族は耳に黒色のイヤリングを付けている筈だ…」
それにステータスが段違いに弱い。
ハンニバル達はもっともっと格が上だった筈だ。
「あっ!こっちに気がつきましたよ!」
「ニンゲン!ニンゲン!ホウコク!ホウコク!」
「ニゲロ!シサイ!ホウコク!」
「小吉…大丈夫か?あれ…」
「さ、さぁ?」
ゴブリン達は変なボロボロの旗を振ったあと急いでその場から逃げていった…。
「小吉さん…なんだったんですかあれ?」
「お前達…俺がなんでもかんでも知ってると思うなよ?」
「パパー?追う?」
「いや、放っておけばいいさ…何匹来ようが問題ないしな」
…
……
………
その後も何度かゴブリンを目撃するが皆同様に旗を振った後に急いでその場から逃げている。
そしてようやく目的の場所であるハンニバル達の村に到着したのだが…
「此処…だよな?」
「地図では此処だな…」
「ボロボロですね…」
「というか廃墟ですね」
着いたのはいいのだが村全体がボロボロで廃墟と化していた…。
「パパ…ここ煙臭い…」
「確かにな…ほら、ハンカチ。これを口と鼻に当てとけばいいだろ」
「おいおい旦那!これは一体どういう事だよ?」
「考えられるのは他の氏族のゴブリンが見せしめに壊したって位かな?前にハンニバルが他の氏族から目の敵にされてるって言ってたし」
「じゃあ師匠達は一体何処へ…」
しばらく思考に耽っていると森の奥の方角から木々を薙ぎ倒し、何かが高速で迫ってきたのを感じた。
「みんな隠れろ!!」
咄嗟にそれぞれが建物の影や壺の中に隠れて様子を伺った。
「ん?ラッツは?」
他の仲間が隠れた事を確認したがラッツだけは見ていない…。
「あっ!あそこです!」
「なっ!?あいつ馬鹿か!?」
完全に出遅れたであろうラッツは道端のど真ん中でうつ伏せに倒れていた。
(お前何やってんの!?)
(俺は死体、俺は死体、俺は死体…)
冷や汗をダラダラ垂らしながら必死に死体のモノマネをしている…。
そうこうしてるうちに1番手前の木々を粉砕して何かが出てきた……と思ったらそのままの勢いで俺達がさっき来た方向へ飛んでいってしまった…。
「た、助かった…」
「ご主人様、今のは何だったんでしょうか?」
「分からないな…」
と、何故かイナリが傍で硬直しているのを発見した。
「どうした?イナリ?なにかあーーおい!何処に行くんだ!」
「さっきのを追います!!」
何か引っかかるものがあったのかさっきのを追いかけて行ってしまう…勿論一人で行かせる訳にはいかないので俺達もそれに追従した。




