68話 三つ巴
「みんな!凄い力がこっちに向かってくるよ!」
「おいおい、まさか魔王様自らが出てくるとはな…」
「相手は1人か?余裕だな…」
セリスは何かもの凄い力を感じ取り、危険が迫っている事を皆に伝えた…、そしてセリスの絶対的な探知を信頼している仲間達はそれぞれの武器を構えた。
バキバキバキッ!!
木々を薙ぎ倒し、飛び掛ってきたのは片腕に大剣を持った大きな武装したゴブリンだった…、魔王は一気に距離を詰めると大剣で大きく薙ぎ払いをかける。
「ぐっ!?」
コルオが左腕の盾を使いその攻撃を受け止めるがその勢いだけで10m程吹き飛んだ。
「せやぁー!!!」
あの一瞬の間にどうやって回り込んだのか魔王の後ろからミディーヴァが神速の剣撃を見舞う…狙いは鎧の隙間の膝裏だ…しかし、
「なっ!?」
魔王は巨体から想像もつかない程の軽やかな動きで上に飛び上がり、そのまま振り向きざまに空中から回し蹴りを放った…、顔を目掛けて放たれた蹴りを体を逸らす事で回避する…風を斬る音がして更に体を逸らす。
ズドーン!!
後方の木々が薙ぎ倒された…恐らく真空刃の様な物を飛ばしたのだろう…。
(なんて奴だ…)
仰け反った体制を立て直そうとした時、魔王が回し蹴りから続けざまに大剣の柄でミデーヴァを殴り飛ばす…。
「ぐぁっ!!?」
「♪〜♪♪〜」
リンネの歌声と楽器の音が響きコルオとミディーヴァの傷を癒し、更に魔王の動きを阻害する。
「セリス!」
返事は無いが彼女は絶対にこのチャンスを逃さないと確信していた。
確信した通りあらゆる方向から氷の矢が飛来して関節部を凍らせ、そして…
ゴォォ!!!
特別大きな風切り音を轟かせて1本の大きな矢が飛来して魔王に風穴を空けようと迫る…。
魔王は大きく息を吸い込み…
「ガァァァァ!!!!」
鼓膜が破れそうな程の大音量で咆哮を轟かせる。
「ーーーっ!!?」
その結果リンネの拘束とセリスの魔力の氷を粉砕し、持っていた大剣で矢を正面から斬りつけた。
ガギャァン!!!
真っ二つに裂けた大きな矢は後方で大きな土煙を上げて止まった…。
「はぁぁ!!!」
頭上から神剣を構えたコルオが奇襲を掛け攻め崩そうとする。
同時に地上からもミデーヴァがそれに加勢に来た。
ガギン!!ギャン!!カキン!!
一発一発が即死級の威力を持った剣撃の応酬が始まり、気を抜いたら死ぬのは確実だ。
前と後ろから魔王を挟み、絶え間なく剣撃を見舞うが当たらない…当たっても鎧で角度を付けられたりずらされたりして傷を付ける事が出来ないでいた…、しかし魔王はこの防御で手一杯の様だった。
「リンネ!セリス!大丈夫か!?」
コルオが叫ぶ…しかしセリスの声もしない上にリンネは蹲ってしまっている。
「うぅ…」
「リンネ!今お前がするべき事を思い出すんだ!」
「わ、分かってるわよ…」
恐怖に震える体を無理矢理動かし立ち上がる…震える唇では上手く歌えない為自身のスキルで楽器を空中に生み出し魔力で演奏する。
「ッ!?」
何とか成り立った演奏で魔王の動きを阻害する事に成功する。
釣り合っていた攻撃と防御の均衡が崩れ徐々にコルオ達が優位に立っていった。
「ミディーヴァ!一気に畳み掛けるぞ!」
「あぁ!……ヴァルキリーソウル!」
「神剣解放!…ブレイバーソウル!」
ミディーヴァが赤と白が折混ざった光を、コルオが緑と青の折混ざった光を放ちながら複雑ながら絶妙なコンビネーションで連撃を放つ。
完全に魔王の防御が崩れ、鎧にヒビと凹みが生じ、血が飛び散る…。
「「でりゃぁ!!」」
ズゴーン!!
最後に全力での一撃を見舞うと魔王は大きく吹き飛んだ…。
「サウンドボム!!」
更にそこへようやくまともに立てる様になったリンネが
色とりどりの音部を飛ばして追い打ちをかける。
ドガガガガガン!!
爆風で木々が放射状に薙ぎ倒され、地面が大きく振動する。
「はぁ…疲れた…」
「それはそうとセリスは無事か!?」
「…ウッ…ガ…」
「!?」
「おいおい…タフにも程があるだろ…」
しかし魔王の鎧と兜は殆ど壊れ、唯一残った大剣を支えに再び立ち上がった。
「相手は虫の息だ!鎧も無い!仕留めるぞ!」
「あぁ!」
「分かりましたわ!」
ミディーヴァとコルオは再び全身に身体強化
を施すと一気に間合いを詰めトドメを刺そうと迫った…。
((もらったぁ!!))
カンッ!!ギィン!!
「イナリ、よくやった!」
「ご主人様もついて来てくれてありがとうございます!」
ミディーヴァの剣をイナリが、コルオの剣を小吉が間に割って受け止めた…。
「何故民間人が此処に!!?」
「君達…今何をしてるか分かってるのか?」
「勿論。仲間を助ける為に決まってるだろ?」
「師匠を殺させはしません!」
「仲間?師匠?お前達が何を言っているか分からんな…、邪魔をするなら排除するぞ?」
「やれるもんならやってみろ、このタコ助」
ガキンッ!!
そしてコルオと小吉が戦闘を始めた…。
(私の剣を受け止めるなんて…この子だ…)
「君、私は手加減が下手でな…子供でも手加減出来ないぞ」
「大人気ない人ですね…そんな油断してるから足元がお留守になるんですよ?…狐火!!」
「なにっ!?」
ミディーヴァの足元からリスやイタチを模した炎が現れ、それらがミディーヴァを焼こうとする。
慌てて後ろに飛び退くも髪が少し燃えてしまい嫌な臭いが辺りに立ち込める。
「なるほど、確かに舐めていた…ではきちんと君を脅威と認めよう」
「子供に負けても泣かないでくださいね!」
こちらも戦いの火蓋が切られ、両者が目にも止まらない程の斬撃を繰り出した…。
「ミディーヴァ!コルオ!今すぐ援護しますわ!」
「させません!」
リンネはとても大きな身の危険を感じてその場を飛び退く…直後、
ズドーン!
直前まで立っていた場所の土が巻き上げられ小さなクレーターが出来上がった。
「小吉達の邪魔はさせんぞ!」
「私も頑張ります!あっ、ラッツさんは退いていてくださいね!」
「あ、貴女達!3対1は卑怯ではありません!?」
ライアーとフラールとマニが立ち塞がるがどう考えても弱いものイジメだ…。
「そ、それもそうか…」
「グガァァァ!!!」
弱まっていたかに見えた魔王…ハンニバルは突如狂ったように暴れ始めた…。
「ひゃあ!?」
「あっちもこっちも厄介ですわね…」
「ライアーさん!フラールさん!この変なお姉さんは任せましたよ!トトーナ!手伝って!」
「うん!分かった!ハンニバルさんを止めるんだね!」
マニとトトーナがハンニバルの元へ向かっていく…。
「お、俺は?」
「隠れててください!」
「はい…」
こうして魔王ハンニバルと勇者と小吉達の三つ巴の戦いが始まった…。




