63話 フードの男
食事が終わったので医務室ではなく自分達が使用できる客室に行こうとした時…
「小吉さん。お話があります」
クラウスに呼び止められ俺は有無を言わさずに連れていかれて、恐らく彼の部屋であろう場所に入った。
中にはアリスも居た。
「ごめんアリス、少し部屋から出ていてくれないか?」
「分かりました」
少し寂しそうに出ていくアリスをクラウスが申し訳なさそうに見ていた…。
「…で?話しって?」
「これについてです」
クラウスがクローゼットの中から綺麗な装飾の付いた剣を持ち出してきた…。
「剣?それがどうしたんだ?」
「実はこれ…ラッツさんの剣だったんですけど僕が使った時に変な声が聞こえてきて剣自体がとても強力な物に変わったんです…」
「ラッツの?確かに面影があるな…」
「最初はラッツさんに返そうと思ったんですけど剣が手から離れないんです…」
「ん?でもさっきクローゼットから出したよな?」
「はい…僕が渡すのを諦めたら離れるようになりました…まるで意思を持ってるみたいに…」
「意思か…」
「はい。そして何故か小吉さんになら渡せる気がしたんです」
「俺に?なんで?」
「分からないです…とにかくこれは貴方達が持っているのが1番だと思うんです」
クラウスがすっと剣を俺に差し出してくる…装飾が光っていてまるで"大丈夫"と言ってる気がする。
思わず息を呑んで恐る恐る剣を握って…持ち上げた…。
"マキナ・カリバーン…使用者の適性を確認…持ち主の変更を終了しました"
「っ!?…なるほどな…」
「渡せた…」
「しっかしなんでこうなったんだ?」
心当たりが無いわけではないのだが一応聞いてみた。
「分かりません…」
「そうか。まぁ大体目星はついているんだねどな」
十中八九マヤのせいである。
こいつしかやれる奴が居ないからな。
"装備品の中に能力を譲渡出来る物を発見しました…譲渡しますか?"
え?譲渡ってどういう事?詳細は無いのか!?
"譲渡対象…魔装リング…譲渡能力…神々への反撃…譲渡後魔装リングの変形に剣タイプを追加"
あっ、ちゃんと念じたら詳細が出てきた…しかし神々への反撃って…とりあえず譲渡しとくか。
俺はYesと念じると剣が輝き光の粒になって分解したあと魔装具に取り込まれていった…。
「キレイですね…」
「それは女といる時に言う言葉だと思うぞ…」
どうやら終わった様なので何時もの様に鞭を出した…いつもの何倍も体が軽く感じる…。
そしてそこから剣を出す様に念じてみる。
シャン…
一回鞭が光の粒に変わってから再びくっついて先程の剣の形に変わった…。
「便利だなこれ!」
「凄いですね、こんな魔道具見たこと無いです…」
「最新技術って言ってたしそもそも一般には出さないって言ってたからな…」
それにマヤの性格や考え方を考えるともう一個作って終わりかもしれないしな。
「そうなんですか…。とにかくありがとうございました。アリス!小吉さんを案内してあげて!」
「分かりました」
…
……
………
「はぁ…」
話しを終えたのでアリスに客室まで案内をしてもらう途中、アリスがため息を付いた。
「アリス…お前苦労してるな…」
主にクラウス関係でだが…。
「はっ!?すみません…」
「いやいや、別に気にしないから安心しろ」
「ありがとうございます…」
「まだまだ時間はあるんだろ?ならゆっくりと仲を深めればいいさ、焦ってもしょうがないぞ?」
「ふふ…そうですね、必ずモノにしてみますよ!」
おぉ燃えとる燃えとる…てかこういう関係って大丈夫なのか?…あの首長と兄なら多分許してくれると思うが…。
「しっかしまぁなんで王子ってもんはあんなにも鈍感なんーーっ!?」
不意に刺すような視線を感じて通路の左の部屋を見る…。
(何も居ない?いや、絶対に居る筈だ…)
「どうかしました?」
「俺から離れないで…」
「えっ!?どういうーー」
ガバッ!!…カカカカカ!!
突如部屋の中ではなく通路の方からアリスの足元に向かって何かが投げられた…俺は咄嗟にアリスを抱き寄せて後ろに隠す…。
投げられたのは…ダガーだ…。
「っ!?」
通路の奥から黒いフード付きのマントを羽織った人物が飛び出てきて剣を振りかざしてきた!
ガキンッ!
重い…今まで受けた剣撃の中でも何十倍も重い…精一杯強化をしてるにも関わらずジリジリと押されている…。
「……………そんな事では…」
どこか聞いたことのあるような悲しい響きをその男が放った…。
そして突然剣の重みが無くなって男が攻撃するのを辞めた…。
「此処に行け…じゃあな…」
そう告げると男はメモを投げてきた…呆気に取られる俺を無視して男が霧散してその場から居なくなった…。
「い…一体なんだったのでしょう?」
「分らない…ただこちらを殺す気は無いらしい」
俺は床に落ちたメモを拾い上げて目を通す。
どうやら簡易な地図の様だ。
「何が書いてあるんです?」
「多分地図みたいだな」
「罠…ですかね?」
「さぁな…。勘だがアイツは大丈夫だと思う…」
何故か分からないがそんな気がした…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
客室の中ではマニ達が寛いでいた。
「ご主人様遅いですね…」
「そうだな…変な事に巻き込まれてないといいんだが…」
(いやいや、それは無いと思いますよ?)
「すー…すー…すー…」
「あっ。トトーナ!お姉ちゃんを枕にしないでください!」
「こう女性が多いと落ち着かねぇな…」
ちなみに此処にフラールとクロトだけは外に出て行って居ない。
「?……誰?」
「どうかしました?ライアーさん?」
「いや…今誰かが覗いていた様な気がした」
「ここを覗くなんてよっぽどのロリコンなんでしょう!」
「いや、まだ覗きが確定した訳じゃないのだが…。少し見てくる…ついて来なくてもいいぞ」
「一応気を付けて下さいね!」
「…大丈夫だ」
ライアーは1人部屋から出て周りを見渡す…今誰かが右手奥の角を曲がった様な気がした。
「誰か居るのか?」
私はいつでも攻撃が出来る様に構えてそっちに走る…しかし、視界の端にチラチラ入るだけで一向に捕まえる事は出来ない。
「はぁはぁ…速いな…」
ようやく視界に黒いフードとマントの何者かを捉えたときそいつは背を向けて立っていた…。
「はぁはぁ…何者だ?何が目的だ?」
「………………」
「答えろ!!」
「無用心だな…」
「!?」
ライアーはこのとても悲しそうな声に聞き覚えはある様な気がした…しかし誰かは全く分らない。
「だ…誰なんだ!?」
「……………会えて良かった……すまん」
そのまま男は霧散して消え去った…。
「誰…なんだ?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
宇宙の様な星が煌めく空間に黒いフードの男が立っていた…。
「貴方は誰ですか?」
そこに恐らくアポトと思われる女性が話しかける。
「……その声はアポトか?」
「!!…なんで私の名を!?」
「……………不思議か?」
チラっと男の目がアポトを捉える…。
…ゾクッ!!
その目を見たアポトは激しく恐怖感を感じた…まるで暗く何も見えない猛獣の檻に入れられた様な…。
「大丈夫だ…俺はアンタ達とあいつらに危害を加える事はしない。むしろ手を貸そう…」
…ガクガク
アポトは手と足が動かずにそのまま腰が抜けてその場に崩れ落ちる。
「もう用は無いだろ?元いた場所に返してやろう…」
フードの男が指を鳴らすとその場からアポトの姿がきえる。
「……………次こそは必ず…」
その瞳には執念が異常な程に込められていた…。
2014/10/6
(表現の修正)




