49話 記憶と野望
今回は小吉達はあまり動きません。
小吉に至っては椅子から動きません。
…
……
………
キンッ!キンッ!カンッ!…ガキンッ!
「ふぅ…これで俺の1585勝0敗3引き分けだな!」
近くの岩に彫られた丸の数が尋常じゃない…。
「若様達またやってんすか?クラウス様も懲りないですねぇ」
たまたま近くを通った兵士達がクラウスともう一人の青年を見て笑う。
「何ならお前達の稽古もつけてやろうか?クラウスでもお前達には勝てると思うぞ?」
「いやいや!止めときます!クリント様には絶っっっ対に勝てないですから!」
「いや、俺じゃなくてクラウスがだぞ」
「クラウス様でも無理です!そんだけ練習されたらもう勝てませんって!」
「むぅ…」
もう勝つことは半分諦めている…兄が天才過ぎたのだ…。
今は兄の剣術を盗む事を目標にしている。
「ったく…あいつら弛んでるな…喝を入れてやろうか…。お前も何か言ってやれよ」
「…兄上はどうしてそんなに強いんですか?」
「は?」
「どうしてそんなに強いんです?」
クリントは少しの間思案すると両手を上げてふざけ気味に言った。
「天才だからだ!」
「もう!僕は真剣なんですよ!」
「ははは!ごめんごめん…。強さの秘訣か…」
(俺よりもお前の方が凄いんだがな…)
クリントは影でクラウスが特訓をしているのを知っている。
そこからメキメキと上達していくクラウスを見て自分も特訓してる何て言えない。
内心このままでは追い抜かれると思っている。
「………楽しくやる事じゃね?」
「楽しく…ですか?」
「あぁそうだ!人に言われてやるよりも自分が好きでやった方が上手くなるぞ!」
「なるほど!早速実践してみます!」
目を輝かせたクラウスは何処かに走り去って行った…。
(やべ…適当でいいかなと思ったけどこのままじゃまずいと思うな…)
…
……
………
「ハァハァ…よし!やるぞ!」
僕は城を抜け出し、近くの森の中に一目で素人が作ったと分かる小屋に着いた。
此処が僕の秘密の特訓場所だ!
「楽しく…楽しく…楽しく…」
木で作った剣を適当に作った案山子196号にぶつける…。
しかし兄上の言っていた事は未だに分からない…。
40分位打った所で休憩する事にした。
近くの切り株に腰掛け持ってきた水を飲む…しかし…
「あれ?空だなぁ?まさか中身入れ忘れた水筒を持ってくるとは…はぁー…」
ガサガサ!
俺は瞬時に木剣では無く刃のしっかりついた剣を握る…。
音的に小動物ではなく、もっと大きな生き物だ。
「待ってください!私です!」
「…アリスか?…ていうか此処は僕だけの秘密の特訓場所だぞ!…て、今更言っても仕方ないか…。いいか!誰にも言うなよ!特にお兄ちゃんには言うなよ!」
「ぷふっ!お兄ちゃん!」
クラウスは顔を赤くして開き直った…。
「わわわ笑うなよ!みんなの前ではきちんとしないといけないんだ!こっちが普通だ!」
「あははは!そうでしたね!そっちが普通でしたね!甘えん坊でおっちょこちょいで背伸びしたがるのがクラウス様でしたね!あははは!」
清々しい程に笑われたので、すっかり怒る気が失せたクラウスは再び切り株に座る。
「…で、何でついて来たんだ?」
「うふふふ!」
「いい加減笑うのを止めたらどうだ?」
「ご、ごめんなさい…あまりにクラウス様が可愛いかったので…」
「お前…男に可愛いとか言うなよ…」
「いえ、クラウス様は可愛いですよ!あっ!そうでした!紅茶とサンドイッチをお持ち致しました!」
「あ、ありがとう…お前もいるか?」
「いえ、私は召使いですのでーー」
きゅるるるるー…
クラウスはニヤりと笑うと顔を赤くしたアリスからバスケットをとって言った。
「そうか!そうか!丁度お腹が空いてたから全部食べてもいいのだな!?」
「私にも下さいお願いしますぅーー!!」
結局2人で座って食べる事にした。
俺が好物のレタスサンドを食べていると横から声が掛かる。
「どうしてクラウス様はそんなにクリント様に勝ちたいんですか?」
「ん?…最近では負けっぱなしは嫌だなって思ってるけど…前まではいつもお兄ちゃんの方が上だったから、何か1つは勝ちたいと思ってたからだよ」
と思って、気がついたら半年間負け続けてる…流石にショックである。
「そうですか…ちなみにクリント様は「何か負けたら恥ずかしいじゃん?」って仰ってましたよ」
「…ふふ、いかにもお兄ちゃんが言いそうな言葉だな…。それと、八百長は絶対にやるなよ!俺の力で勝ちたいんだ!」
「本当にやる気だけはありますね…じゃあ少しだけおまじないを掛けてあげましょう!目を瞑って下さい…」
俺は何の疑問も無く目を瞑る…
チュッ…
頬に初めての感触が伝わり何事かと目を開ける…。
「え?」
「え?」
「わわわ!?目を瞑って下さいって言ったではないですか!?」
「わわわ分かる訳ないだろ!?何かと思ったわ!」
顔を赤くした2人が互いにそっぽを向く。
ガサガサ!
「誰だ!?」
(やべ!?)
「あ!?待ってください!1人にしないで下さい!」
草むらに隠れていたクリントが走り出す。
そしてそれを追いかけてクラウスも走る。
更にアリスも2人を追いかける。
「ハァハァ…何で追いつけないんだ!!」
気が付いた世界には何もなく僕の前にお兄ちゃんが走ってるのと後ろにアリスが居るだけだ…。
そして、僕とお兄ちゃんの距離はどんどん離れていき最後には見えなくなった。
「………………!」
「ク………さ…!」
「クラ…スさ…!」
「クラウスさん!」
…
……
………
「…!」
「わひゃ!?」
僕が目を開けると目の前には青色の半透明な小さな少女が座っていた…。
僕が急に目を開けた事で少女も驚く。
「ご、ごめん…」
「いえいえ…何だかうなされていたので大丈夫かと思いまして…」
「そうか…」
僕はあの日の事を思い出す…。
あの時お兄ちゃんはあの場所には居なかった。
それに今となってはどうでもいいが結局勝てないまま終わってしまっている。
「それはそうとクラウスさん!みんなが待ってますよ!行きましょう!」
「えっ!?ちょっと待って!」
まだ名前も聞いてないのに少女はすごい力で引っ張ってくる。
…
……
………
「お?ようやく起きてきたか…」
マニ達が作ったお昼を並べてある食卓には既に俺の仲間が座っている。
「…小吉さんの仲間って多いですね…」
クラウスが意外だと呟いた。
「まぁ多いな…だがみんな強いぞ」
クラウスは俺の仲間を見渡して冷や汗をかいている…。
「な…何かちっちゃくて可愛い子達ばっかですね…」
「そういうクラウス様も小さいですけどね」
「うるさいぞ…アリス…。それと小吉さん…それ動きにくくないですか?」
極力気にしないようにしていた俺の周りを見る…。
「うぅ…グスッ!…無事で良かったぁ…」
「パパぁ!…寂しかったよー!」
「ご主人様ー!撫でてくださいー!」
感極まったライアーとトトーナとイナリがくっついて来て放してくれないのだ…。
「全く…旦那はいいお父さんになると思うぞ?」
「ですねぇ…あそこまで懐かれるのってある意味才能ですよね…」
「チュウチュウ!」
(私も大きければ抱きついてました!)
呆れた様子で立ち尽くすクラウスとアリスを座らせて互いに何があったか、これからどうするかを話し合う事にした。
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「ユリウス様!大変です!例のスパイが逃げましたぁ!!」
「…あぁ!?どうやって!?」
あの頑丈な鎖をあんなヒョロヒョロの奴が外せる訳が無い。
「それが…恐らく錠を破壊して腹いせに部屋を滅茶苦茶に壊して逃げました…」
「なっ!?…ちっ!俺は今忙しい!貴様達で探せ!」
「はっ!」
兵士は慌てて走り去って行った…。
(ったく…使えん奴らだ…あのクソ国王もそうだがこの国の連中は殆ど使えんな…唯一使えるのはジェックだけだな…)
俺は目の前にある容器の中の兵器を見詰める…。
「ふっ…ようやく完成か…俺のスキルを使っても此処まで掛かるとは…素晴らしい出来なのを期待してるぞ!」
"おい…貯めてある力を少しだけなら使ってもいいと言ったが、それは使いすぎだろ?"
ちっ!面倒な奴が来たか…。
「あ?これはお前の頼みを実行するための手間賃と考えて貰おうか?」
"…まぁいい…いいか?くれぐれもしくじるなよ?これ以上破壊されてはーーはーって来ない…"
「ふん!力を与えてくれた事には感謝するがそれは俺には関係ないね!この魔神め…」
"魔神か…そうかもな…とりあえずしっかりやれよ?この"クソ野ーーぐぁぁぁ!!?…あが…が…クソ!傷がぁ!"
そこから相手からのコンタクトは無かった…。
(ぶっちゃけクリスタルなんてどうでもいいけどな!俺はこれで世界を征服してやる!)
ユリウスは容器から白を基調とした全長3mのシンプルな形ながら、所々複雑な機構を持った"銃"を手に取る…重量を感じさせない動きでユリウスはそれを振り回す。
「中々に取り回しが効くな…試射したいが此処だとうるさいからなぁ…。まぁいい!これで世界は俺の物だ!あーはっはっはっ!!」
薄暗い部屋にユリウスの高笑いが木霊する…。
クラウスの夢とあの後のユリウスでした!
※漢字を分かり易い様に修正。
(2014/9/1)




