47話 地下都市
補習怖い…
バシャッ!
「うっ……」
突如頭から被せられた冷水に体がびっくりして目が覚める。
「お目覚めかい?このクソネズミ君?」
ぼやけた視界が段々とハッキリしてきた…。
目の前には細身の体に若干着崩された燕尾服、如何にも神経質そうな目にはモノクルを掛けた人物が立っていた。
腕を動かそうとするも、有り得ない程に太い金属で作られた錠で壁に拘束されていた…足だけは動くが地面に足がついていない。
あぁ…そうだ…捕まったんだった…。
「無駄だよ。どんな力自慢の大男でもそれを見ればげんなりする品物だからね」
奥から更に声が聴こえてきて気が付く。
奥の暗がりの中に顔こそ見えないが、品質の良い落ち着いた色合いの服を着ている人物が座っているのが分かった。
「久しぶりにスパイが来たと思えば今までで一番楽に捕まえられていてびっくりしたよ!君達はそんなにこの国の技術が欲しいのかい?」
「何のことかさっぱーーぐっ!?」
神経質そうな男に思いっ切り頬を蹴られた…痛くは無いが話しを遮られた事にイライラする。
「じゃあどうやってここに来たのです?此処に真っ直ぐ来ることは不可能です。途中の範囲100kmに及ぶ領域では流砂、磁場の狂い、方向感覚の狂い等があります。それをどう越えてきた?」
「何って…普通に仲間に案内してもらっただけだ」
ズドンッ!
無防備な腹に1発もらってしまう…。
神経質そうな男も俺が痛がる様子を微塵もしないのに違和感を覚えた様だ。
「おかしいですね…貴方本当に人間ですか?」
「なに、ステータスプレートを確認すればいい話だ。探せ、持ってる筈だ。」
「はい」
「さて、もう一つ質問だ。他の仲間はどうやって逃げた?そして消えた"もう一人のお前"はどうした?」
少しの間思案する…恐らくイナリがイミテーションを消したか、上手く繋げられずに消えたのどちらかだろう…。
「残念だったな。そっちに捕まってたのは全部偽者だよ」
「ふん!あんな精巧で簡単に消せる偽者があってたまるか!?本当の事を言え」
ドス!勢いを付けた蹴りが腹に入るが別にどうってこともない。
「ユリウス様、今ステータスプレートを確認しましたが、壊れてる様で数値が軒並みおかしいです」
「…こんな弱そうな奴が"深層"に行けるとも思えん…捨てておけ」
「はい」
「弱そうで悪かったな。まぁ実際俺は仲間の中でも弱い方に入るからな」
「ほう…そんなにお前の仲間は強いのか?どうだ?俺の部下にならないか?」
何とも恩着せがましく行ってきたので段々とイライラが募っていく。
ぺっ!
「これが答えだ」
ジャキ…ズガン!ズガン!
ユリウスと呼ばれた男は綺麗な装飾の拳銃を取り出すと足に撃ち込んできた。
2発の弾丸が同じ位置に当たり骨が折れる音が響く…。
「ぐあぁぁ!!?」
「ん?おかしいな…足を吹き飛ばすつもりで撃ったのに…たかがランクSくらい余裕何だけどな…」
痛みで頭がおかしくなりそうだ…。
手が動かせないのがもどかしい。
バタバタバタッ!
バタン!
「ユリウス様!父上が呼んでおられます!」
突然思いっ切りドアを開けて入ってきたのは質の良い服を着た小さな少年だった…。
「騒々しいぞ!クラウス!…君の父親か…面倒な…。丁度戻ってきたな…ジェック!お前も付いて来い!」
「御意」
そう言うとユリウスと神経質そうな男は部屋を出て行った。
部屋には俺とクラウスが取り残された。
クラウスが何かに気がついて部屋に鍵を掛ける…。
そして近づいて来ると俺の足に魔術を掛け始めた。
「…回復か?ありがとう…」
「いえ…それよりも"ユリウス"の弾丸を2発も受けて足が吹き飛ばなかったんですか?」
「まぁな…というかそんなに凄いのか?あいつ?」
「えぇ…突然此処にやって来て技術と引き換えに地位を手に入れ影で国を支配してる人間です」
まさか答えてくれると思わなかった…。
「話してもいいのか?」
「別に大丈夫です。むしろ助けて欲しいです!!」
涙目でクラウスが訴える…。
「この国の…国宝を破壊してください…」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「はぁ〜ぁ…いい加減見回りは飽きたな…」
「そうボヤくなよ…あの糞王子にバレたらそれだけでクビだぞ」
「だな………ちょっと用足してくるわ」
「んぁ?早く戻ってこいよ…」
…
……
………
ザッ…ザッ…ザッ…
「はぁ〜極楽極楽…ん?ーーむぐ!?」
兵士の後ろから何者かが襲いかかり、気絶した兵士をズルズルと引き摺っていった。
…
……
………
「たくっ!アイツ遅いな…隊長!もう置いて行きましょうよ!」
「すまんすまーん!今終わったぞ!」
「ようやくか…行くぞ!」
バタバタバタ…。
「行ったな…」
「行きましたね…」
「後はあのイミテーションを消すだけだね」
「これで兵士の服は手に入ったな…しかし本当にこれ俺が着るのか?こいつのションベンがついてるんだが…」
「ファイトです!ラッツさん!男性は貴方しかいないんですから!」
あんまり乗り気じゃないラッツを励ますフラール…。
「そ、そうだけどよぉ…」
「うじうじしてないでさっさと着替えてください!何なら私が手伝いましょうか!」
と言いながらマニがラッツの上着を剥ぎ取っていく。
「だぁー!分かった分かった!自分でやる!」
渋々とラッツは気絶した男を引き摺って岩陰に隠れて着替え始めた。
…
……
………
「よぉ。お疲れさん…悪ぃ、仲間といつの間にかはぐれちまってな…通行証はあるから通ってもいいか?」
「いいが…そんなにぞろぞろ連れて…大手柄だな!今度奢れよ!」
「お姉ちゃーん…私達どうなっちゃうのー」
「あんな事やこんな事をされちゃうのよー」
「あ…あぁ。誰か助けてくれないかなー」
(ちょっとライアーさん!もっと感情を込めて!)
(ならフラールがやってみてくれよ!私はこういうの苦手なんだ!)
(いいですとも!)
「あぁ!私の王子様は何処へ…早く来てくれないとあんな事やこんな事をされてしまいますのに!」
やたらと大袈裟に演技をするフラールに若干引き気味のマニ達…。
「ねぇねぇ?あんな事やこんな事ってなーに?」
「「トトーナは見ちゃいけません!!」」
マニがトトーナの耳を、イナリが目を塞いで誤魔化す。
「な…何と言うか個性的な捕虜だな…通ってもいいが後でやらせろよ?」
「あ、あぁ…」
(どうしてこういう奴らは直ぐにそういう発想になるのか…)
無事に門を通過出来たラッツ達はイナリとフラールの案内で先へと進む。
「昨日偵察してて分かったのですが、地上部分には殆ど人は居ませんでした。つまり恐らく地下で暮らしているのではとの考えに至ったのです!そして観察をしていると、ある場所だけ人の出入りが多かったです!そこに行きましょう!」
イナリが先導して見つからない様に先に進む。
道中、クルー達が沢山居る場所があり、そこでナノ達を紛れ込ませて此処で待って貰うことにした。
「クエっ!?」
(新入りか?)
「グエッ!ククエッ!グアッ!ググアッ!」
(はい!新しく配属されました!私達は3人で1セットです!)
「ググェアッ!グアグアッ!」
(そうか!なら君達の場所はあっちにしよう!よろしくな!)
ナノが翼で〇を作る…どうやら上手くいった様だ…。
そして一行は例の人の出入りが多い建物についた。
しかし今は人が殆ど居ない。
そして中に入るとマニとイナリが驚く…。
「お姉ちゃん…あれって…」
「そうね…エレベーターですね…」
記憶の中にあるが、自分で体験した事は無い物体があった。
しかも記憶の中の知識と使い方が丸で同じで更に驚いた。
「マニ、ちょっといいか?"えれべーたー"って何だ?それと何処でそれを知ったんだ?」
「えーと…ご主人様の記憶の中にあったのですが、"人を乗せて上下に移動する箱"?って所ですかね?」
ちーん!
"B10商業区域デス"
エレベーターのドアが開く。
ここでは何故かこの商業区域のフロアと住居区域のフロアと娯楽区域のフロアしか選べなかった…しかしボタンはあるので使えない事も無いのだろう。
先程ボタンの横にカードリーダーがあったのを見つけた事、奪った許可証に磁気テープの様な物があった事から使ってみたが、訓練区域のボタンが明るくなっただけだった。
エレベーターの外に出て、一行は更に驚いた…。
「な、何だ…此処は」
「凄いな…こんなのは初めてだ…」
「元私のお家よりも豪華です…」
「わー!広い広い!」
「チュウチュウ!!」
「「…………」」
全体が明るくて、活気づいているのが赤ん坊でも分かるだろう…。
1フロアの高さも約30m位あり、
至る所に店が立ち並び商売に勤しんでいる。
更にはフロアの温度も快適で居心地が良い。
そして一番は恐らく殆どのフロアを貫通していると思われる真ん中の巨大な吹き抜けに数本の滝が流れている。
「これは各国が欲しがる訳ですね…」
「まるで僕達おのぼりさんみたいだね…」
「そうだな…普段通りに行くぞ…目的は小吉の奪還だ!」
「大丈夫です!ご主人様を忘れて何ていません!」
そして一行は小吉を探しに掛かった…。
皆さん宿題はちゃんとやってますか!?
私はやっていません!
きっと小人がやってくれると信じてます!




