44話 武具と災難…
何か忘れてる様な気がする…。
翌朝。
再び城に泊まった小吉達はアルスさんや世話になった人々に礼を告げるとバイエルさんの店に戻る前にマヤの工房へ向かった。
そろそろ出来上がる頃だと思ったのだ。
「お邪魔しまーす!マヤさんはいますか!?」
「その声はマニちゃんだね!アタシは此処に居るよー!ちょっと待ってろ!直ぐに行く!」
奥からガチャガチャと音がして作業着姿のマヤが出てきた。
「ようやく来たか!本当は昨日出来上がってたんだが尋ねたらあんたら居ないもんだからさ伝言頼んどいたんだよ」
「伝言?私達は用事が終わってから直ぐにここに来たから知らないな…」
「ありゃ?そうか…まっ、別に問題無いでしょ!さぁ、こっちこっち!私の作品を是非とも見てくれたまえ!」
すっかり天狗になっているマヤに連れられて奥に向かう。
道中何に使うか分からない様な物が大量にあり、不安を掻き立てられた。
「ではまず小吉君の防具からいきましょうか!…はい!これでーす!」
「「「おぉ」」」
出てきたのは濃い青を主体に黒色のラインが入ったジャケットとズボンや、靴や手袋だった。
「…あれ?マヤさん、鎧とかじゃないの?」
「ちっちっち…甘いよ…イナリちゃん…これは私達の作り出した特殊な技術で鉱石を強度や特性をそのまま糸に変え作り出した布鎧さ!これだけで城壁並の頑丈さだよ!…さぁ、早速付けて見てくれたまえ!」
変なスイッチが入ったマヤを放って置いて早速着替えてみる。
「おぉ!動きやすいな…」
「「「「か、かっこいい!!」」」」
「よ、よく似合ってるぞ…」
マニ達とフラールが目をキラキラさせて凄く見詰めてくる…。
ライアーは顔を赤くして嬉しい言葉を呟いていた。
「流石アタシ!センス抜群だね!…それと小吉君は剣は好きかい?鞭じゃ接近されたら厳しいと思ってね」
「剣?確かに厳しかったな…」
衰えていた(自称)アルスさんの剣を捌くのが精一杯だったが確かにあの時鞭だけだったらもっと悲惨だったであろう…。
「そんな君にこれ!君の物を元に作っちゃった!」
そう言って出して来たのは"ボールペン"だ…。
数日前から無くしてしょげていたのだが…心底良かったと思った。
「あぁ!これ何処にあったんだよ!?」
「ん?何か面白い物を胸ポケットに入れてるなぁ、って思って借りちゃった!てへっ」
可愛い顔すれば許して貰えるとでも思っていたのか?
イラッ!っとする表情でこちらを見ていたが段々と冷や汗が垂れていくのが分かる。
しかし空気のせいで引くに引けない状態にまでなってしまっている…。
「一言言ってから持ってけやぁ!!!泥棒ですか!?コノヤロー!!」
「ぎゃぁあ!!?すいませんつい出来心で!」
「すみませんで済んだら衛兵は要らねぇんだよぉ!」
…
……
………
すっかり反省するまで時間が掛かった。
「まぁいい、ちゃんと出てきたんだ。次はきちんと許可を取れよ!」
「ぐすっ…はい…」
しくしく泣きながら正座をさせられているマヤを遠くで震えながらマニ達が見ていた…。
絶対にこの人だけは怒らせてはいけない…そう痛感していた。
「で?このペンがどうしたんだ?」
「ほう…"ぺん"と言うのか。機構は簡単な物だったがどうにも使い方がわからなくてな…"剣"に改造したものがこちらです」
すっ…とマヤがポケットからグリップの付いた長さ20cm程の太い棒を出して来た。
「これに魔力を流して振ると…」
バシュウ!!
「刀身がでます!」
(アウトォォ!!!)
まるでラ〇トセイバーの様な刀身が現れたのを俺は何とも言えない表情で見詰めて、マニ達が再びキラキラした目で見つめた。
「…あのな?これはそもそも"文字を書く道具"だ…これはインクが切れてるだけだ…なのにこれをどう改造したらそうなるんだよ…」
「字を書く道具だったのか!?なるほど…納得だ…で?これは?」
「いりません。もっと普通のやつをお願いします!」
「ありゃ?お気に召さなかったか…なら普通にアタシが打った剣をあげよう。ちょっと待ってろ」
しばらくすると緑色の刀身を持った装飾が綺麗な"明らかに普通じゃない"長剣を持ってきた…。
「はい、普通の剣を持ってきたよ切れ味もそこそこあって頑丈だし魔力を上手く使えば"斬撃も飛ばせる"至って普通の剣だよ。…ん?どうした?」
「突っ込むのに飽きた…。とりあえずそれでいいからくれ」
「本当にこんなのでいいのかい?」
「十分だよ…。というかこんなレベルのが普通ならこれだけで一財産出来上がるぞ…やらないのか?」
何気なく呟いた言葉でマヤの動きが止まった…。
「…アタシだって昔は普通に作って売っていたさ…。自分で言うのもなんだが装具士としての力が強すぎたんだ…」
その後、淡々とマヤは自分の過去を語った…。
10年程前に自分の店を持ったマヤは存分に自分の腕を見せ付けて凄く品質が良い物を売っていた…しかし、1ヶ月くらいした所から突如装備を売った人々が悪事を働き出した…辻斬りや破壊、幾つかの平和な国が反乱により独裁体制を築いたり、不自然な程にその悉くがマヤの装備を使っていた…。
最終的に"呪われた装備"等と言われて指名手配されて逃亡したのだとか…。
その後、何者かによって呪いを掛けられていた事を知り、それを解く事が出来たが、手配されて居るため表立って商売が出来なくなり、信用の置ける人物から紹介された信用出来る人物にしか売らない事にしたらしい。
「…前に商売していた場所は場所が割れて暗殺者達に狙われていたんだ…だからこの場所に移ったんだ。本当はアタシだって平和の為に装備を売りたいさ…」
そこまで語ると座り込んで静かに泣き出してしまった…。
俺はどうしようかと後ろを向くが、全員が"あんたが泣かしたんだろ?"というような理不尽な視線で見てきたので一人で慰める事になった…。
「当事者じゃないから詳しくは分からないがそれでも此処まで良く頑張ったと思うぞ?そ、それに俺達の目的も最終的には平和の為だ!そこに貢献がしたいんだろ?」
「…うん…」
「絶対に悪事には使わないから安心しろ!なっ!」
「…うん!」
…かなり幼く見えるマヤだったがさっきの話しを聞く限り絶対にこの部屋の人の中ではフラールを除いて1番年上だろう…。
歳が気になったが此処で聞いたら絶対に殺されるだろう…。
…
……
………
その後他のメンバーの装備も試着した。
マニは全身が武器でもあり防具でもある様なものなのでちっちゃいグローブみたいな物だけを貰った…。
ちょっと持たせて貰ったが有り得ないくらいに重いのにマニはそれを軽々とジャブに等に使っていた。
ちなみにグローブはイナリのよく分からない四次元ポケットみたいにしまっていた…。
お前も出来るのかよ!?
イナリは愛刀の夢幻の太刀を返して貰って刀身を見てうっとりしている…。
本当に将来が心配である。
「前よりも綺麗です…。ありがとうございます!僕、一生大切にします!」
「ついつい気合が入っちゃって今までで最高の物が出来てしまったよ!あはははは!それに、大事に使われていたのは分かったからこれからも今まで通りに使ってあげてくれ!」
「はい!」
「そう言えば防具は無いのか?」
「あぁ!そうだった!」
マヤはイナリの巫女服を触りながら話す。
「イナリちゃんのこの服?の質を見る限り必要は無いと思うよ…ただし、意識が無かったりすると意味は無いから気をつけてね」
「わ、分かりました…」
ライアーには軽い青緑の鎧と短剣が与えられた。
「これは魔装具の様に自在に形とか変えられないけど簡単に出せたりしまえたりするからね!最初に魔力を込めておいて必要な時に出せるようになってるから。本当は小吉君とお揃いで布鎧を作ろうと思ったんだけど全然材料が足りなくてな…ごめん…その代わり性能はお墨付きだから安心だ!」
「お、お揃いが良かった…」
「何か言ったか?」
「いや!?何も!わぁー嬉しいなぁ!」
そしてトトーナには同じく出てくる物が固定された魔装具が渡された。
「これは更に加速できる様にする効果を付けておいた!それと…トトーナちゃん、ちょっと魔力を込めてみて?」
「…こう?」
シュン!
翼の上側に魔力で構成された鋭利な白色の刃が現れた…。
「凄い凄ーい!ねぇ!パパ!ちょっと飛んできてもいい!?」
まるで自転車を買ってもらった子供の様に目を輝かせて来たので駄目とも言えずに許可を出した…。
此処で止めて置けば良かったのにと後で後悔する事になる。
「自慢してくる!!」
…………まぁいっか…。
で、全て配り終えた所でマヤが気が付く…。
「で、今気が付いたんだけどあんた誰?」
「ふぇ!?今気が付いたんですか!?」
フワフワと漂う幽霊少女に話しかけた。
フラールはかなり驚いたのと軽くショックを受けたようだ。
「わ、私の名前はフラールです!今回小吉さんに助けて頂いた幽霊です!生前は人形姫ってあだ名がついていました!」
「小吉君…君はこれ以上可愛い女の子増やしてどうするつもりだい?」
「知らん。気がついたらこうなっていた…一応男もいるぞ」
「ふーん…まぁいいや!それよりも人形姫って言えばかなり有名だね!……そうだ!ちょっと待っててくれ!」
そう言って走って何処か行ってから何かを持って戻ってきた。
「はい!"武器"!」
「「「「は?」」」」
持ってきたのはデフォルメされたアライグマみたいな可愛いぬいぐるみだった…。
「わー!可愛いですねぇ!」
フラールは思わずぬいぐるみを抱き上げて抱きしめていた…。
「頂きますね!…ドールコピー!」
一瞬ぬいぐるみが消えたと思ったら再び腕の中に戻っていた…。
「お前、そんな事も出来たのか…」
ステータスを確認しようにも確認する術が無かったしプレートも何故か作れなかったのだ…。
「はい!好きな人形をコピー出来るんです!これはお返ししますね」
「あれ?いいのかい?」
「ちゃんと持ってますよ!…サモンドール!アラ君!」
ポンッ!
「きゅー!」
腕の中に何時も持っているクマのぬいと一緒に収まっている。
「………それはそうとその人形はなんの"武器"何だ?」
「これかい?これはアタシが暇で暇で作った汎用型戦闘ぬいぐるみ、AADだ!自分で考えて戦闘を行ってくれる便利なぬいぐるみだ!料理以外の家事もやってくれる!そしてこのモフモフ感はアタシの自信作だぞ!」
「わーすごーい(棒)」
「ちょ、ちょっと触らせて…」
よろよろとAADに歩み寄るライアー…。
受け取るとギューっと抱きしめてうっとりしている…。
「これは…すごい…一日中抱っこしてても飽きないと思う…」
段々と目がとろーんとしてきた…。
「おい…あれ何かヤバイ物でも仕込んであるんじゃないか?」
「おぉ!良く分かったね!アレには亜人に対しては効き目が凄い匂い型の媚薬が仕込んであるのさ!」
「アホかぁ!!何て事しやがるんだ!?」
「いやぁ…だってどっちも奥手そうだったからついつい老婆心がーー」
「出さんでいい!!……ほら、そのぬいぐるみをこっちに渡しなさい」
「やだぁ!代わりにギューっとしてくれるならいいけど!」
心なしか口調も変になって来ている…。
しかしここで言う通りにさせてやると俺のメンタルが持たない…。
(マニ…ちょっと眠らせてくれないか?)
(分かりました!…スリープ!)
これで簡単にぬいぐるみが回収できーー
「ふぁ〜あ…」
「僕、眠いから寝るね…」
「なるほど…ね…ナイス…マニ…ちゃ…Zzz」
バタバタバタッ!
「そ…れでは…ごゆっ…くり…Zzz」
バタッ!
(ふぁ!?アホかぁ!!そっちじゃねぇよ!!真ん中のデカイ子供を寝かせろよ!)
「小吉?ここ…」
ライアーが床を叩く…。
…みんな起きるまでには正気に戻るだろ。
うん…そうだ!きっとそうだ!
「抱きつくだけな…」
「うん」
後ろからギューっと抱きついて来てそのまましばらくずっと座っていた…。
…
……
………
一方その頃…
「早く早く!面白い物が一杯あるよ!」
「待って、トトーナちゃん!そんなに走らなくても!」
「そうだぞ!俺らは飛べないんだから!」
「ちょっと待て…息が…何で俺が子守を…」
トトーナがアカネとガナッシュとラッツをぞろぞろと連れてマヤの工房へ戻ってきてしまっていた…。
辺りに絶叫が響き渡ったとさ…めでたしめでたし。
※2014/10/21
表現の修正




